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連係合わず2連敗。底上げ課題 今季30戦目も「前頼み」/レノファ山口

上田真之介ライター/エディター
肩を落として引き上げるレノファの選手たち=筆者撮影、この記事の他の写真・図も

 J2レノファ山口FCは9月1日、維新みらいふスタジアム(山口市)でファジアーノ岡山と対戦し1-2で敗れた。早い時間帯での失点が重くのしかかり、工藤壮人が追撃点を挙げたものの、勝ち点を得るような試合にはできなかった。順位は15位のまま。

明治安田生命J2リーグ第30節◇山口1-2岡山【得点者】山口=工藤壮人(後半17分)、岡山=仲間隼斗(前半8分、後半9分)【入場者数】4476人【会場】維新みらいふスタジアム

 前節を0-4で落とし、8月を2勝2敗で終えたレノファ。「良いときと悪いときの差が激しく、80点のプレーをするときもあるし、20点のプレーをしてしまうときもある」(霜田正浩監督)と好不調の波が激しく、一朝一夕に成し遂げるのは難しいものの、「80点のプレーができるのに20点のプレーをしてしまう選手たちに、アベレージ(平均)で60点のプレーを毎回させられるか」を挑戦すべきメニューの一つに掲げて秋の戦いに入った。

高(後列左から2人目)が先発に戻った
高(後列左から2人目)が先発に戻った

不安定なビルドアップ。早い時間に失点

 9月初戦に迎えたのがファジアーノ岡山だ。前回対戦を1-1で引き分けるなど、過去のほとんどのゲームで1点を争う内容となってきた。小雨がぱらつく中で行われた今節もこれまでと同様の展開が予想されたが、意外にも早い時間からスコアが動く試合となった。

レノファの先発布陣。前は右サイドバックで出場
レノファの先発布陣。前は右サイドバックで出場

 レノファは2試合ぶりに高宇洋を先発させてアンカーに置き、三幸秀稔と佐々木匠をインサイドハーフに配置。最前線からは工藤壮人がゴールを狙う4-3-3のフォーメーションとする。

 しかし、前半から中盤に難しいボールを入れる場面が目立ち、最終ラインからの一つ目や二つ目のパスでボールを失ってしまう。岡山・有馬賢二監督が「闘争心を持って球際(で戦うこと)を含めてゲームに入ってくれた。足先で行っていると違った結果となることは多々ある。ベースの部分をしっかり出してくれた」と話すプレスにはまったとも言えるが、レノファは前節同様に後方からの供給が落ち着かなかった。

 先制したのは岡山。前半8分、ボールを少ないタッチ数でリレーしていった岡山は増谷幸祐がペナルティーエリアの中からクロス。これに飛びついた仲間隼斗が鮮やかなバイシクルシュートを右隅にしずめた。

 その後もチャンスが続いたのは岡山で、レノファのミスを突いて攻め込んでいく。状況を打開したいレノファは、右サイドバックで出場した前貴之が左サイドまで動いて意図的にスペースを作ったり、石田崚真が高い位置に入って前線に枚数を割いたりとサイドバックが積極性を出し、前半35分以降はボールを保持。同39分には石田の高い位置からのスローインを山下敬大が繋ぎ、最後は三幸がシュートを放った。レノファでもプレーした一森純のファインセーブでゴールとはならなかったが、一時的にはゲームの流れを呼び込んだ。

システムと人を変え、流れは戻すが…

 後半の立ち上がりもレノファが相手陣内でボールを動かしていたが、前半とほぼ同じ時間帯にスコアを動かしたのは岡山だった。後半9分、縦のシンプルな組み立てからイ・ヨンジェがドリブルでレノファ陣内に攻め込み、そのままシュート。これはレノファの守備陣が体を張ってブロックするが、こぼれ球を前半同様に仲間が回収。ゴール方向にはオレンジの壁があったものの、狭いコースを突いて右足を振り抜き、2点目を奪った。

 鋭いシュートでゴールネットを揺らし、岡山が勝利に一歩近づいた。有馬監督は「最後のフィニッシュの質は彼(仲間)の良さ。得点という数字としても出ているが、見えないところでも良さを出してくれている。最高の出来だった」と手を叩いた。

石田はタフに上下動を繰り返した
石田はタフに上下動を繰り返した

 2点差に開いてからはゲームの内容が一変。強度の高かった岡山のプレッシャーが弱くなり、自陣でブロックを築くようになる。逆にレノファは前半終盤に見られたようなサイドバックの攻撃参加が増加。同15分過ぎからはレノファがボールをキープして、前向きにゲームを進めていく。

 スコアが再び動くまではそれほど時間は掛からなかった。同17分、リズムを掴みつつあったレノファがゴール奪取に成功する。

 左サイドに流れていたボールを敵陣中央で三幸が回収すると、この動きを見て前がペナルティーエリアの中までスプリント。三幸も前の入る場所にピンポイントでパスを送り、前は「最初は速いボールでクロスを上げようかと思ったが、目の前の選手に当ててしまう可能性があった。中にかなりの人数がいたので、触れば1点というところに放り込んだ」と、すぐさまスピードを落とした緩いセンタリングを放った。

 計算されたクロスに対して、相手ディフェンスの後ろから飛び込んで頭を振ったのが3試合ぶりに先発した工藤だった。「クロスに対してその場に立って合わせるのでは相手のセンターバックの2枚に分がある。うまく動きを作りながら、相手の死角から入っていくことは意識した」。工藤も計算した動きでタイミング良く合わせ、ゴールイン。レノファが1点差に詰め寄った。

 だが、リードを守ろうとする岡山のディフェンスは堅牢。レノファは「サイドから攻めたいが、僕らがサイドアタッカーに展開するのを(岡山の)サイドバックが予測、研究していて、そこに飛ばさせないようにしてくる」(霜田監督)という状況を嫌って、後半は4-3-3から4-4-2にシステムを変えたり、相手を背負いながらボールを受けられる池上丈二を投入したりして矢継ぎ早に打開策を講じる。

ホームで連敗し、霜田監督は「申し訳ない思いで一杯だ」と話した
ホームで連敗し、霜田監督は「申し訳ない思いで一杯だ」と話した

 前節の長崎戦とは異なり、ブロックの外からのミドルシュートや、ブロックの中で駆け引きするFW陣へのクロスで積極的にチャンスを広げようとしたレノファイレブン。しかし、「意図を汲んでいい攻撃はできていたと思うが、クロスが合わなかったり、質が悪かった」(霜田監督)。2点目には到達できず、レノファは2連敗を喫することになった。

必然的な「前頼み」。底上げは必須

 岡山がレノファ対策として、高い位置からのプレスを仕掛けてきた。これがレノファのビルドアップを難しくした直接的な原因だ。前節に比べればGKまで戻す場面は少なかったものの、無理に中盤に付けようとした結果、三幸や佐々木が相手に囲まれた状態でボールを受けざるを得なかった。

前のボールの受け方やクロスが際立った
前のボールの受け方やクロスが際立った

 レノファ唯一の得点シーンでは、三幸を介して左から右へと横断し、再び右から中央へと振って工藤がシュートをたたき込んだ。このような少ないタッチ数での横幅を使った展開が今季の強みながら、今節は終盤に入ってもピッチを横断するような大きな動きは少なく、同サイドでの攻撃で終わったり、逆サイドへと振るのに時間が掛かったりして、相手への脅威とはならなかった。

 ゴールまで至りそうなレノファのチャンスシーン(決定機)は少なくとも5回。大半に絡んだのが前で、ゴールシーンを含め複数本のクロスを入れたり、ミドルシュートを放ったりしてチャンスを広げている。サイドバックながら意図的に中盤まで顔を出してボールを受け、他の選手がずるずると下がるのも阻止。前がボールを運ぶことでパスミスが減った時間帯もあり、ビルドアップ段階でも、フィニッシュ直前の仕事でも、チーム全体が「前頼み」になった感は否めない。

 前は試合後、「クオリティーがまだ足りなかったというところと、追いかける展開を作ってしまったという力のなさをもっと感じていかなければならない」と険しい顔で振り返り、さらに攻撃での連係にも目を向けた。「(攻撃の)形ができているのはいいことだと思う。自分たちは引いた相手に対してパワー任せというチームではない。いいところは続けて連係を高め、最後の質のところは本当に求めていかないと点も入らない」。

 レノファはセンターバック陣が若く、霜田監督が話す「経験値」という点では未熟さは残る。それでも跳ね返すプレーでは存分に力を発揮できており、これにビルドアップの部分で落ち着きが加われば前や三幸の負担は減ってくるだろう。しかしながら、現時点ですぐにミスを減らすには、常に及第点の結果を出し続けるクレバーな選手が必要だ。すなわち今後も「前頼み」の状態は続き、直近3試合でセンターバック、ボランチ、サイドバックと変幻自在にプレーした前への負担は重くなるばかりだ。

 もっとも、攻撃陣の最後の質や、数値化しにくいあいまいな言葉ではあるが「決定力」にも敗因の一部は転がっている。ホームで連敗を喫した2試合は、各ポジションのプレーヤーが力不足を認識しなければならない180分間だった。

 季節はシーズンが終盤に近づいていることを知らせている。片足を突っ込んでいる残留争いからは少なくとも抜け出し、次のシーズンを見据えたチーム力の底上げも図らなければならない。「残りの試合ではちゃんと先制点を取る。あるいは先制されてもしっかり追いつく。ひっくり返す。そういう地力を付けたチームにしていきたい」(霜田監督)。常に一定レベルのゲームができるチームになるか。内省と挑戦が入り交じる終盤の戦いとなっていきそうだ。

 次戦はアウェー戦で、9月8日に味の素フィールド西が丘(東京都北区)で東京ヴェルディと対戦する。次の維新みらいふスタジアムでのホーム戦は同14日午後7時キックオフ。順位が近い愛媛FCとの「プライド・オブ・中四国」のダービーマッチとなる。また、今日2日は正午から北九州市門司区の新門司球技場でJ3ギラヴァンツ北九州とトレーニングマッチを行う。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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