レノファ山口:4カ月半ぶり、みらスタで凱歌。オナイウが決勝点

ゴールを決めて喜ぶオナイウ阿道=28日、山口市(筆者撮影。この記事の他の写真も)

 明治安田J2リーグ第39節の11試合が10月28日、各地で行われた。レノファ山口FCは維新みらいふスタジアム(山口市)で栃木SCと対戦。1-0で快勝し、勝ち点をJ2昇格以降最多の55に伸ばした。他会場の結果を受けて、J1昇格プレーオフへの進出可能性は消滅した。

明治安田生命J2リーグ第39節◇山口1-0栃木【得点者】山口=オナイウ阿道(前半42分)【入場者数】6333人【会場】維新みらいふスタジアム

ルヴァン杯から得た勇気と勝利への執念

 レノファは前節、主軸の前貴之と高木大輔が出場停止で出られなかった。ロングボールを蹴り合う展開となり、時間を使ってじっくりと攻めたり、同サイドの攻防から逆サイドに運ぶような場面は減少。重心が下がったことで無失点には抑えたものの、得点も生まれず、「まだまだ総合力が足りない」(霜田正浩監督)という現実を突きつけられた試合だった。

ワシントン(後列右端)が先発した
ワシントン(後列右端)が先発した

 前と高木が戻った今節、霜田監督はコンパクトさを堅持しつつ、ワシントンを中盤の底に置いて相手のストロングになっている空中戦に対応。ボールを奪うと距離感良くつないだり、速攻と遅攻を組み合わせたりしてゴールを目指した。

 ただ、指揮官が選手に託したのは勝つためのタクティクス(戦術)だけではなかった。「(Jリーグ・ルヴァン杯で)優勝した湘南ベルマーレが僕らにいろいろな勇気をくれた。あのような戦い方を僕らもやろうと。背が高くなくてもしっかり競る、こぼれ球に反応する、体を投げ出す、しっかり走る。そういうところができれば、僕らもあのゲームができる」。そう試合前のミーティングで選手に言い聞かせた。足先のフットボールではなく、気持ちを入れて戦おうという指示は、このゲームの結果にも響いていく。

シュートを放つ三幸秀稔。高い位置でボールに触れ続けた
シュートを放つ三幸秀稔。高い位置でボールに触れ続けた

 動きが際立ったのは主力が戻ってきた右サイドだ。今季前半戦で前と三幸秀稔、それに小野瀬康介(G大阪に移籍)で築いた距離感の良いトライアングルが、人とポジションを変えて復活。前と三幸、それにウイングバックの高木でゲームを作り、ゴールに迫った。

 従来ならば右サイドで敵陣に入ったあと左サイドへの大きな展開も入るが、3選手同士のパスコンビネーションが良く、同サイドの攻撃だけでも十分にペナルティーエリア内までボールを進めた。

「右で崩せてしまえばそれでもいいと思う。右でたくさんチャンスを作っていて、前半、前がシュートを何本も打つというような攻撃のバリエーションやコンビネーションが非常に出ていた」(霜田監督)。逆サイドへの展開を警戒する相手のさらに逆を突くように、同サイド攻撃でフィニッシュに持ち込み、前半だけで前は2本、高木は1本のシュートを放つ。

 決して上背があるわけではなく、戦術や体の使い方、あるいはハードワークで対抗する選手たちが前半から躍動。レノファが主導権を握ってゲームを進めると、前半35分過ぎからはセットプレーのチャンスも増える。

オナイウが今季21点目

 コーナーキックやフリーキックが続く押し込んだ流れの中、左からのクロスに合わせようとしたワシントンがホールディングを受け、レノファがPKを獲得。キッカーを任されたのはJ2リーグ得点ランキング2位のオナイウ阿道だった。

オナイウ阿道のPKは逆を突いた
オナイウ阿道のPKは逆を突いた

 「笛が鳴ってからも自分のタイミングでしっかり蹴られるように集中していた」。そう話すオナイウは冷静に右足を振り、GKとは反対の右隅にグラウンダーのシュートをしずめた。「しっかり逆を蹴るようにというのと、コースに強いボールを」と意識したゴールは今季21点目。ランキング1位の大前元紀(大宮)も今節は得点を決めているが、オナイウもこのゴールで2点差をキープ。オナイウは残り3試合での逆転を狙って、大前の背中を追う。

 前半を1-0で折り返し、後半は栃木が端山豪とアレックスを早い段階で投入したほか、「うまくいった部分とそうではなかった部分はあるが、下でしっかりつないでクロスという形は何回かあった。(回数は)少ないけれども良かった」(栃木・横山雄次監督)と修正。川田拳登のサイドからの仕掛けや福岡将太のロングスローなどを生かしてボールをレノファ陣内に運ぶ。

 しかし、レノファは「相手を分析し、空中戦の強さに対抗するために集中する。そこで負けないように意識してほしいという指示があった」と話すワシントンが空中戦を制し、ピンチの拡大を阻止。ワシントンは後半25分に退くが、レノファが引き続いて集中したディフェンスを続ける。

 ただ相手の圧力を受けた分だけレノファの攻撃の開始地点は低下。それでも前節のような間延びはなく、佐藤健太郎がバランスを見て動いたり、オナイウや高橋壱晟が前線からプレッシャーを掛けたりと全体で攻守に連動し、1-0のスコアを堅持する。鬼門のアディショナルタイムも耐え抜いたレノファ。残り1枚の交代カードを使うことなく、1点差で勝利を飾った。

 みらスタでの白星は4カ月半ぶり。試合後の記者会見で「久しぶりにここで勝ててほっとしています」と切り出した霜田監督は、「もう少しきれいに崩して1、2点取れればもっと楽な展開になったと思うが、それでも気持ちを込めてしっかり戦い、ゼロに抑えたところは評価できるゲームだった」と話し、選手をたたえた。

小野瀬のいないレノファが見つけた「答え」

 小野瀬の移籍や新たに10番を背負うことになった池上丈二のケガなどで、ボールの落ち着く場所が限られていたレノファ。シーズン後半戦は前貴之にずしりと負担がのしかかり、3バックになってからも前がボールを回収することでなんとかレノファが時間を作っていた。その前さえも欠いた前節は行ったり来たりの展開で、勝ち点1は拾ったものの収穫の乏しいゲームになった。

先制点の直後に会話する霜田正浩監督と前貴之
先制点の直後に会話する霜田正浩監督と前貴之

 今節はワシントンを中央にどんと置いて守備に専念させた。期待に応えたワシントンの献身的なプレーで、周りの選手たちは守備へのエネルギーを攻撃に転換。三幸は高い位置でボールをさばき、前も比較的高めでボールを収めた。高木も推進力を発揮。これらがかみ合って、右サイドでのリズムの良い攻撃が戻ってきた。

 ここに逆サイドへの展開が加わればいっそう厚みは増すだろうが、シーズン終盤戦になってようやくポスト小野瀬の戦い方が見えてきた。ボールを配れる選手、収められる選手を最も良い場所に置かなければならないが、どう組み合わせれば彼らがストレスなくプレーできるのか。最適解とは言えなくとも、今節の戦い方からチームはポジティブなアンサーを得たはずだ。残りのゲームが限られているとはいえ、今日の手応えをさらに確かなものにしていきたい。

みらスタでのラインダンスも6月以来
みらスタでのラインダンスも6月以来

 次戦は敵地でファジアーノ岡山と対戦する。さらに翌週の11月11日は今季の維新みらいふスタジアムでの最終戦となる。迎えるのはヴァンフォーレ甲府だ。甲府はレノファをJ3とJ2へ二度も昇格に導いた上野展裕監督が指揮を執り、ゲームの中心を小塚和季が担う。

 レノファが全員が攻守に関わるトータルフットボールを核にしているのも、上野監督時代に築いた礎石があるから。J2らしくないサッカーを支えにレノファは急速に進化し、近年はバジェットが増え、練習場もそれほど転々としなくても良くなった。昨シーズンは急成長のひずみが出たが、霜田監督を迎えた今年も全員守備全員攻撃に磨きを掛け、今節の勝利でJ2昇格以降の最多勝ち点に到達した。

 壁に当たっても、ときに足踏みをしても、レノファは未だに後ろを向くことなく前進している。甲府戦は、1年半前よりもさらに成長したのだと胸を張れる試合にしなければなるまい。

 もっとも、アプローチは違えども、両指揮官はJ2リーグのクラシカルな戦いとは異なるサッカーを志向する。指揮した期間の違いはあるが、両チームが今シーズンの集大成として良さを出し合うなら、11月11日はJ2屈指の好カードになる。

 ポスト小野瀬の戦い方を見いだした霜田レノファ。プレーオフ進出こそ叶わなかったが、残り3試合を全勝で駆け抜けて、そこに迫る勝ち点を手にしたい。オナイウの得点王も懸かる。「あと三つ、僕らにとって消化試合はない」(霜田監督)。成長できる限り、まっすぐ進んでいく。

断水続く周防大島町。ブースに励ましの声

周防大島町のブース。レノファはホームタウン活動にも力を入れる
周防大島町のブース。レノファはホームタウン活動にも力を入れる

 山口県内の全市町がホームタウンのJ2レノファ山口FC。毎試合、一つの市町をピックアップして「サンクスデー」とし、多彩なイベントを開催している。10月28日は周防大島町のサンクスデーで、同町産のみかんや加工品を販売するブースを設け、多くのサポーターが名物を買い求めた。

 周防大島町は22日に柳井市と島を結ぶ唯一の橋「大島大橋」に貨物船が衝突。28日時点で橋の通行制限や大規模な断水が続いている。

 こうした状況を受け、試合前には同町の西川敏之教育長が「大変厳しい状況だが、多くの方の支援をいただきながらなんとか頑張っています。今日もブースで多くの励ましの声をいただいた。全ての選手、関係者を心を込めて応援し、元気をもらって明日からの大島の生活に生かしたい」とあいさつ。6千人超が集まったスタンドから、周防大島町へ向けての温かな拍手が沸き起こった。

 

※高橋の「高」は異体字(はしご高)が登録名