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レノファ山口:不足した戦術浸透と運動量。3連敗、「夜明け」遠く

上田真之介ライター/エディター

 J2レノファ山口FCは8月5日、維新百年記念公園陸上競技場(山口市)でロアッソ熊本と対戦した。前節からはメンバーだけでなくフォーメーションも変更。4バックを採用したが攻守に噛み合わず、1-2で敗れた。

明治安田生命J2リーグ第26節◇山口1-2熊本【得点者】山口=レオナルド・ラモス(後半6分) 熊本=植田龍仁朗(前半24分)、八久保颯(後半30分)【入場者数】4999人【会場】維新百年記念公園陸上競技場

小塚と三幸、それにDFパク・チャニョンも不在
小塚と三幸、それにDFパク・チャニョンも不在

 MF小塚和季が出場停止、MF三幸秀稔がコンディションが整わずに出場を見送った。「三幸は攻撃のスイッチを入れることができ、ボールをさばける選手。小塚はスピードがあり、スルーパスからのアシストができる」(カルロス・マジョール監督)というキーマン。彼らを欠いたことがゲームメークに影響を与えたのは言うまでもないが、必ずしもそればかりが黒星の理由ではない。熊本を迎え撃つための戦術は適切だったか。選手は起用に応えて走ったか-。戦うためのベーシックな部分が欠けてきてはいないだろうか。レノファはいま、「夜明け前」の苦しい時間帯に引き戻されている。現実を受け入れ、地に足を付けて再出発しなけれなばらない。

機能しなかった新システム

 レノファは今節、最終ラインの枚数を3枚から4枚に変更、FWは岸田和人とレオナルド・ラモスの2トップとした。マジョール監督は就任時に「4-4-2」を目指す考えを表明しており、熊本対策というだけでなく、志向するサッカーを示した形だった。ただ前節までは守備陣の基本形として3バックを採用。試合途中から4バックにスイッチすることもあったが、スタートから4バックで臨むという練習は不足していた。

岸田和人への供給は少なかった
岸田和人への供給は少なかった

 起きた現象は分かりやすく、守備で脆さが出た。熊本の3-4-3とはシステム上のギャップがあり、マークの受け渡しやスライドがうまくいかなければ、相手にフリーになる選手が発生する。実際にDF廣木雄磨は「守備にも攻撃にもチームにいい方向にできなかった。(サイドハーフとの距離が)ずれてくると誰がどこに付くのか絞りにくかった」と話す。現象を避けるには何より主導権を持ってボールを保持することが重要だが、慣れないフォーメーションの採用と三幸らの不在が響いて、落ち着いてボールを動かすことができなかった。

 前半10分過ぎからは熊本がボールを大きく動かしてレノファ守備陣を揺さぶり、ゲームのモメンタムを掴む。同21分には空隙を突いて八久保颯がミドルシュート。これはGK山田元気がセーブするものの、3分後のコーナーキックを植田龍仁朗が押し込んで熊本が先制する。レノファは4試合連続で先制点を奪われることになった。

競り合うFWレオナルド・ラモス
競り合うFWレオナルド・ラモス

 レノファは3バックに戻し、ハーフタイムにはマジョール監督が「もっと頭を働かせてしっかりマークに付こう」と指示を送る。

 攻撃では長いボールを使ってFWレオナルド・ラモスに当てる回数が増加。後半6分、そのラモスのドリブル突破がペナルティエリア内でのファールを誘い、PKを獲得する。これをラモス自身が落ち着いて決め、レノファは後半の早い段階で同点とした。「PKが決まって、これからだといういいリズムが生まれたと思う」(ラモス)。言葉の通りにレノファの攻撃が改善し、クロスから和田昌士がヘディングシュートを放ったり、ゴール前に人数を割いた中からシュートを狙ったりと活性化する。

 後半21分にはMF鳥養祐矢が4月22日以来のピッチへ。「5月にケガをして苦しい時期を過ごしたが、その間も、ファン、サポーター、選手、スタッフのみんなが帰りを待ってくれていた。(ベンチ際で)ユニフォーム姿になったときの歓声は本当に一生忘れられない」。キャプテンを任されている鳥養は声援に応えるように躍動。ファーストタッチがMF加藤大樹を俊足を生かそうとするフィードだったのも、ゲームの動きをつぶさに把握して動ける鳥養らしかった。

鳥養祐矢が復帰。結果にこだわってプレーした
鳥養祐矢が復帰。結果にこだわってプレーした

 しかし、チーム全体として前掛かりになっていた分だけスペースができ、ロングボールからピンチを招く場面が増えてしまう。これが流れを手放すことに繋がった。

 後半30分、熊本はGK畑実からのキックを巻誠一郎が収めてヘディングで流すと、すかさず八久保颯がGKの頭上を越すミドルシュート。鮮やかな弾道のゴールとなり、八久保の一撃が決勝点となった。レノファは最終盤はセットプレーからチャンスを作るもゴールは遠く、3連敗となった。

戦術の最適化と運動量アップを

マジョール監督は「後半の戦いを前半からしないといけない」と話した
マジョール監督は「後半の戦いを前半からしないといけない」と話した

 敗因として、マジョール監督は「うまくプレーできなかったことと、マークを外して自由にしたこと」の2点を挙げた。すなわち攻撃では主導権を掌握したポゼッションができず、守備ではマークがルーズになったということだ。端的にフォーメーションの落とし込みが不十分で、戦術に無理があったと結論づけてもいいだろう。とはいえ失点した場面だけを切り取れば、もう少しの厳しさと集中力で防げた可能性はある。

 戦術は正しかったか。選手の動きは要求を満たせるものだったか-。今節、その答えは限りなく「ノー」に近かった。

 次節までの修正期間は短く、もしかしたら台風の接近でさらに削られる可能性もある。それにお盆期間の連戦にも突入する。指揮官が挙げた2つのポイントを修正するには、難しい状況にありながらも攻守にわたって戦術を最適化し、それに合わせて選手の動きを活発化させるしかない。

 ベテランの経験値も頼りにしたい。MF佐藤健太郎は「攻守両面でコンビネーションを作ることができなかった。中で受けてゲームを作る動きが少なかった」と悔しさをにじませたが、「良かったときのプレーを思い出さないといけないし、落ち込んでいても仕方がない」と顔を上げる。MF鳥養祐矢も「不甲斐ない順位にいるが、もっともっと高い順位にいるべきだし、高い順位にサポーターを連れて行きたい」と気持ちを込めた。

 時間は多くは残っていない。晴天のまぶしい日差しを浴びるため、この暗がりの道で必死の努力を続けていきたい。次戦は8月11日に敵地でジェフユナイテッド千葉と対戦。次のホームゲームは16日午後7時から。維新公園にザスパクサツ群馬を迎える。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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