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鈴鹿JSBに67台が出場!なぜ鈴鹿だけこんなに多いのか?注目のスポット参戦ライダーたち

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
全日本ロードレース・開幕戦の様子【写真:MOBILITYLAND】

2輪と4輪の国内最高峰レースが両方楽しめる「鈴鹿2&4レース」が2021年4月24日(土)、25日(日)の2日間、三重県の鈴鹿サーキットで開催される。昨年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止になったため、同レースが開催されるのは2年ぶりだ。

4輪の最高峰として開催されるのは「全日本スーパーフォーミュラ選手権」、そして2輪の最高峰は「全日本ロードレース選手権 JSB1000クラス」が設定されているが、ふだん4輪レースしか見ない人がいつも驚くのがJSB1000の出場台数の異常な多さだ。今回はなんと67台がエントリーしている。F1やスーパーフォーミュラは20台程度なのが当たり前になっているから無理もない。

2020年、全日本JSB1000の決勝レース【写真:MOBILITYLAND】
2020年、全日本JSB1000の決勝レース【写真:MOBILITYLAND】

開幕戦の約4倍のエントリー、その理由は?

全日本JSB1000は3月にツインリンクもてぎ(栃木県)でシリーズが開幕したが、開幕戦のエントリー台数は僅か18台。カワサキのトップチームやホンダワークスの撤退などJSB1000に年間エントリーする台数は年々減少。そして改造範囲が狭く低コストな全日本ST1000クラスが誕生したことで、エントリーが分散している傾向にある。

2021年・開幕戦 JSB1000のスタートシーン【写真:MOBILITYLAND】
2021年・開幕戦 JSB1000のスタートシーン【写真:MOBILITYLAND】

しかし、開幕戦が出場18台と少なかったのに、なぜ第2戦・鈴鹿は4倍近いエントリーを集めるのか?

その理由は多くのチームが「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐/11月に延期)への出場を目指しているからだ。近年は「鈴鹿8耐」だけに出場したいというチームも多いが、同レースは「FIM世界耐久選手権」という世界選手権レースであるため、出場に関する条件が年々厳しくなっている。

そのエントリー枠を確保するための争いが「8耐トライアウト」で、実は67台のうちの40台以上がトライアウトにエントリーしている。4月24日(土)の全日本JSB1000第2戦・レース1の成績に応じて17チームに出場権が与えられるのだ。

鈴鹿8耐(2018年)【写真:MOBILITYLAND】
鈴鹿8耐(2018年)【写真:MOBILITYLAND】

5月15日(土)の鈴鹿サンデーロードレースでも「8耐トライアウト」は開催されはするものの、スポンサー獲得や準備などに使える時間は限られているのでチームとしては1日も早く「鈴鹿8耐・出場」を確定したいところだ。そのため、1チームあたり2台から3台をエントリーさせるチームも多く、エントリー台数が膨れ上がる結果になった。

しかし、鈴鹿サーキットのフルグリッドは44台と決まっており、23台が予選落ちを喫してしまう厳しい戦いだ。

スポット参戦エントリーが豪華

出場台数が多い分、鈴鹿のライダーラインナップはかなり豪華である。

まず、開幕戦・ツインリンクもてぎにスポット参戦した渡辺一樹(ヨシムラSERT MOTUL/スズキ)が鈴鹿にも急遽エントリーした。今季はフランスの名門耐久チーム「SERT」とタッグを組み、「FIM世界耐久選手権」を主戦場にしているヨシムラだが、開幕戦のル・マン24時間レースが6月に延期されることが決まったため、引き続き国内の実戦でスズキGSX-R1000を鍛えることになった。

ヨシムラSERT MOTULの渡辺一樹【写真:MOBILITYLAND】
ヨシムラSERT MOTULの渡辺一樹【写真:MOBILITYLAND】

渡辺一樹は今季スポット参戦ながらも開幕戦・ツインリンクもてぎの公式予選でいきなりレース1、レース2ともにポールポジションを獲得。ヨシムラが作るGSX-R1000は昨年からポテンシャルアップが著しく、鈴鹿8耐に向けた前哨戦という意味でも渡辺の走りは要注目だ。ちなみにヨシムラは2015年の鈴鹿2&4レースでポールトゥウインを飾っている。

また、秋吉耕佑が率いる「MURAYAMA TJC RT」は今季全日本ロードレースにもフル参戦しているが、今回は鈴鹿8耐、FIM世界耐久選手権に欠かせないライダーである出口修もエントリー。近年はカワサキに乗っていた出口だが、久しぶりにホンダで参戦する。

そしてチャンピオン経験者では2002年のJSB1000チャンピオン、山口辰也が「TOHO Racing」からエントリー。今回はレギュラーの國川浩道が開幕前のテスト走行で負傷したため、代役での参戦。4年ぶりに同チームのライダーとして走ることになった。若手の国峰啄磨と2台体制で8耐トライアウトにもエントリーしている。

さらに気になるエントリーとしては鈴鹿8耐の優勝経験もある「Honda Dream RT桜井ホンダ」から日浦大治朗がエントリー。ホンダの社内チームからの参戦ながら鈴鹿8耐でも光り輝く走りを見せていた日浦だけに、レギュラーの濱原颯道と組むことを想定しているのならば今回の桜井ホンダは興味深い。

また、鈴鹿8耐で表彰台経験がある安田毅史もスポット参戦でエントリー。チームは「TEAM AGRAS with NOJIMA」でマシンはホンダCBR1000RR-R。同チームは鈴鹿サンデーロードレースではおなじみのプライベートチームだが、8耐トライアウトにはエントリーしておらず、鈴鹿8耐への出場はおそらく想定していない。ただ、鈴鹿の主(ぬし)的な存在の安田はプライベーターながら上位に食い込んでくるかもしれない。

中須賀の連勝か?清成がキーマンに

さて、出場台数が多く、強力なライダーが多数参戦する第2戦・鈴鹿だが、台数が増えた分、不確定要素も多くなる。24日(土)朝の公式予選は2グループに分けられ、各グループ30分間の走行でアタックを決めなければいけないが、クリアラップを取るのは難しく、赤旗でアタックのタイミングを失う可能性も出てくる。

ただ、これは毎年恒例のことであり、そんな厳しい局面を巧みに乗り越えてきたのが中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシングチーム)だ。唯一のワークスマシンに乗る中須賀は今季、JSB1000クラスで通算10度目の王座を目指しているが、開幕戦・ツインリンクもてぎでは決勝レースでの強さと巧みさを見せて2連勝。見事開幕ダッシュに成功した。

ディフェンディングチャンピオンの中須賀克行【写真:MOBILITYLAND】
ディフェンディングチャンピオンの中須賀克行【写真:MOBILITYLAND】

全日本ロードレースのシリーズ戦で中須賀を止めなくてはいけない立場にいるのが清成龍一(Astemo Honda Dream SI Racing/ホンダ)だ。今季も伊藤真一が率いるSI Racingからの参戦だが、メインスポンサーのブランド変更によって赤いカラーリングになった。ただ、ホンダCBR1000RR-Rは昨年に比べてマシンの熟成が進みポテンシャル上昇は明らか。最大の武器であるトップスピードの速さを活かして清成が鈴鹿で今季初優勝を飾れるか、注目が集まる。

開幕戦と同様に中須賀、清成の戦いにスポット参戦の渡辺一樹が絡むトップ争いになるのか、あるいは意外な伏兵がトップ争いに加わることになるのか?いつもの全日本ロードレースとは違うテイストのレースになることは間違いなさそうだ。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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