Yahoo!ニュース

アロンソがF1復帰するチーム「アルピーヌ」ってどんなブランド?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
アルピーヌF1チームが発表した暫定カラー【写真:Alpine F1 Team】

2021年、ビッグネームがF1に帰ってくる。2005年、2006年のワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソだ。

トヨタでのル・マン24時間レース優勝を経て、3年ぶりにF1に帰ってくるアロンソを受け入れるのは、2度のワールドチャンピオンを獲得した「ルノー」。アロンソはF1キャリアの中で2期に渡って在籍した古巣へ戻ってきた形だが、チームは「アルピーヌ」という名称に変わり、新規チームとして新たなスタートを切ることになったのだ。

インディ500に挑戦したフェルナンド・アロンソ
インディ500に挑戦したフェルナンド・アロンソ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

フランス随一のスポーツブランド

「アルピーヌ」という固有名詞を聞いて、水色のスポーツカーを思い浮かべる人はきっとクルマ好きの男性がほとんどであろう。アルピーヌはモータースポーツやフランス車を語る上で欠かせない有名ブランドではあるが、一般的にはあまり知られていないのではないだろうか?

アルピーヌA110
アルピーヌA110写真:ロイター/アフロ

アルピーヌは1955年にフランス北部で生まれた自動車メーカーだ。創業者はレーシングドライバーでありエンジニアのジャン・レデレで、ルノーのディーラーを営んでいた彼がルノー車をチューニングしてラリーやレースに挑戦したのが始まりである。

1960年代にはルノーのエンジンを搭載したリアエンジン&後輪駆動のオリジナルスポーツカー「アルピーヌA110」をリリース。中でも1966年に発売された「アルピーヌA110・ベルリネッタ」はフレンチスポーツカーの傑作と言われ、美しさと速さを兼ね備えていた。特にラリーの世界で活躍し、1973年にはWRC(世界ラリー選手権)の初代チャンピオンに輝いている。

その1973年にアルピーヌはルノー傘下の子会社になった。

アルピーヌA110【写真:DRAFTING】
アルピーヌA110【写真:DRAFTING】

1978年ル・マンを制し、F1へ

ルノーに吸収されたことで、アルピーヌはルノーのモータースポーツ活動の中核を担っていくことになる。フランスを代表する自動車メーカーが目指した次なる目標は「ル・マン24時間レース」での優勝だった。

1976年にFIAのレーシングスポーツカー規定「グループ6」に基づいてアルピーヌが設計したプロトタイプカー「アルピーヌA442」がデビュー。ル・マン24時間レースへの挑戦を始めた。1976年には自社レーシングチーム「ルノースポール」が結成され、ルノーとしてのモータースポーツ活動が活発化していく。

アルピーヌA442【写真:DRAFTING】
アルピーヌA442【写真:DRAFTING】

76年、77年とポルシェ936に敗れるも、1978年にはディディエ・ピローニ/ジャン・ピエール・ジャッソー組のルノー・スポールが走らせた「アルピーヌA442B」がポルシェに5周の差をつけて優勝した。

挑戦わずか3年という早さでル・マン24時間レースを制したルノー。耐久レースで培ったターボエンジンの技術を用い、F1にも挑戦した。1978年にル・マンで優勝すると、あっさりと耐久レースを去り、1979年のフランスGPでF1史上初のターボエンジンによる優勝を成し遂げるのだ。

ルノーのF1マシン、ルノーRS01【写真:DRAFTING】
ルノーのF1マシン、ルノーRS01【写真:DRAFTING】

その後のルノーはF1をモータースポーツ活動の中心に置き、1990年代にはエンジンサプライヤーとして活躍した。2000年代にはベネトンを買収してフルコンストラクターとして復帰し、それ以降、F1には携わり続けている。アルピーヌの名前はルノー・スポールに吸収された形だが、アルピーヌの存在はルノーのモータースポーツ活動の大切なルーツと言える。

自動車メーカーとしてのアルピーヌは一度ルノーから離れたものの、また再びルノー傘下に戻り、2017年には名車A110をモチーフにした新型のA110がリリースされた。初代モデルと同じくエレガントなデザインで、フランス車のファンの心を掴んでいるスポーツカーだ。

アルピーヌA110
アルピーヌA110写真:ロイター/アフロ

孤軍奮闘となるアルピーヌ

アルピーヌの現行車のラインナップは「A110」のみで、日本でもディーラーがあり販売されているが、街中で見かけるチャンスは少ない。

しかしながら、ルノーは最大のモータースポーツ活動であるF1のチーム名を「アルピーヌF1チーム」と改称し、アルピーヌブランドを全面的に推していくことになった。自動車メーカーとしては今後、EVシフトを進めていく必要があるので、その路線とモータースポーツのイメージを切り分けていこうという事なのだろう。

FIA WEC/ル・マン24時間レースに参戦してきたアルピーヌ。今季は最高峰クラスで総合優勝を狙うかっこ写真:DRAFTING】
FIA WEC/ル・マン24時間レースに参戦してきたアルピーヌ。今季は最高峰クラスで総合優勝を狙うかっこ写真:DRAFTING】

さて、2度のワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソを迎えてアルピーヌとして挑む2021年シーズンだが、マクラーレンがメルセデスのパワーユニットにスイッチしたことにより、ルノーのパワーユニットを使用するのはワークスチームであるアルピーヌだけになってしまった。レッドブルとアルファタウリが先日、2022年以降ホンダのパワーユニットを引き継ぐことを発表したので、しばらくはパワーユニット供給チームは現れない見込みだ。

2020年、スズキMotoGPチームをチャンピオンに導いた敏腕マネージャー、ダビデ・ブリオ(左)がレーシングディレクターとしてアルピーヌF1に加わることも話題に。
2020年、スズキMotoGPチームをチャンピオンに導いた敏腕マネージャー、ダビデ・ブリオ(左)がレーシングディレクターとしてアルピーヌF1に加わることも話題に。写真:ロイター/アフロ

いわば孤軍奮闘状態となるアルピーヌ。昨年はダニエル・リカルドが2度の3位表彰台、エステバン・オコンが2位表彰台を獲得したものの、年間ランキングではマクラーレン・ルノーの後塵を拝する5位となった。データ収集という意味では同じパワーユニットを使うチームがないのはデメリット。しかし、特に来季に向けては自分たち専用のパワーユニット、専用の新型シャシーを作り込めるというメリットもある。

アルピーヌF1の暫定カラー【写真:Alpine F1 Team】
アルピーヌF1の暫定カラー【写真:Alpine F1 Team】

そんな今後の浮上か低迷かの分かれ道となる2021年、頼みの綱であるフェルナンド・アロンソが2月12日に自転車トレーニング中に交通事故に遭遇。上顎を骨折し、入院するというハプニングが起きた。すでに退院してトレーニングを再開したというが、小さな怪我ですんだのは不幸中の幸いだった。

「アルピーヌF1」は2020年3月2日に今季のマシン「アルピーヌA521」を発表する。先行ティザーカラーとして発表された黒がベースのリバリーは1976年にルノー・スポール結成前に「アルピーヌA500」として作られたプロトタイプF1カーのオマージュとされる。発表される今季のリバリーは鮮やかなフレンチブルーとなるのか、その辺も注目したい。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

辻野ヒロシの最近の記事