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F1ベルギーGPは今年も波乱のレースに?高速サーキットのスパでホンダの進化に期待!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
レッドブル・ホンダ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

2週間ぶりに「F1世界選手権」が再開する。第7戦の舞台はベルギーのスパ・フランコルシャン。今季は新型コロナウィルスの感染拡大でスケジュールが大幅変更になったが、8月30日(日)に決勝という当初の予定通りの日程で開催される、ちょっと珍しいケースのグランプリだ。

ここまでメルセデス5勝、レッドブル・ホンダが1勝という形で、メルセデス優勢なのは変わらないが、ここからは3週連続で高速サーキットのレースが続くことになっており、レッドブルにパワーユニットを供給するホンダとしてはある意味、正念場とも言えるレースになる。

ドライバーズサーキット、スパ

ベルギーGPの舞台、スパ・フランコルシャン(1周:7.004km)はF1カレンダーの中でも最も人気があるクラシックコース。ドライバーはもちろん、ファンにとっても様々なドラマが起こるコースとしても知られ、「スパ・ウェザー」と呼ばれる変わりやすい天候がスタート直後の多重クラッシュやドラマを生み出してきた。

また、レーシングドライバー間の差が出やすく、好成績が高い評価に繋がりやすい「ドライバーズサーキット」としても知られ、アイルトン・セナがキャリア5勝を飾り、91年にはミハエル・シューマッハが代役デビューでセンセーショナルな走りを披露したりしている。

スパ・フランコルシャン【写真:本田技研工業】
スパ・フランコルシャン【写真:本田技研工業】

スパの最多勝はミハエル・シューマッハの6勝。次いでアイルトン・セナが5勝、ジム・クラークとキミ・ライコネンが4勝している。4勝目に並ぼうかというのが過去3勝をしているルイス・ハミルトン(メルセデス)とセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)である。

昨年はフェラーリが予選で最前列を独占し、シャルル・ルクレールがポールトゥウインを飾ったが、燃料流入制限の違反が疑われた昨シーズンの速さは姿を消し、今季のフェラーリは見るも無残な成績。来季の放出が決定し、チームから冷遇状態のセバスチャン・ベッテルが4勝目を狙うのは厳しいと見られる。

毎年、ドラマが起こるスパ

ジム・クラーク、キミ・ライコネンと並ぶ4勝目に最も近いと言えるのが、やはりルイス・ハミルトン(メルセデス)だ。今季は前戦・スペインGPを含む4度のポールトゥウインを飾るなどしてランキング首位。2位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に対して43点もの大量リードを築き、シリーズを圧倒的にリードしている。

しかし、そんなメルセデス&ハミルトンでもなかなか勝てないのがスパの難しさだ。2014年のパワーユニット規定になって以来、メルセデスは6年連続でF1を席巻してきたが、実はスパではその半分の3勝しかできていない。2014年以来の戦績だけでいえば、ここまでライバルに優勝を許しているサーキットはない。

とはいえ、昨年のルクレールのポールポジションを除いては、過去6年中5回のポールを取っているサーキットであり、メルセデスの速さがスパで劣っているわけではないが、ライバルたちにとっては一矢報いる、いわばワンチャンありのサーキットでもある。

メルセデスに仕掛けるチャンスがあるのはレッドブル・ホンダとレーシングポイント・メルセデスの2チーム。特にここからは高速サーキットが続くためにパワーユニットの重要性が高くなる。それだけにスパのリザルトは中盤戦を占う上で非常に重要なものだ。

レッドブル・ホンダ【写真:Red Bull】
レッドブル・ホンダ【写真:Red Bull】

オールージュを駆け抜ける刺激的な速さ

天候が変わりやすいスパだけに、その天候を味方につけて逆転するというのもドラマとしては充分だが、やはりメルセデス独走状態の現状を打破する要素が出てこないとシリーズとしての面白みが薄れてしまう。それだけにホンダのパワーユニットのスパでの完成度に注目が集まる。

スパは1周7.004kmというF1サーキットの中でも最長コースで、第1コーナーとなるヘアピンカーブを抜けると、そこからは急激な上り坂のオールージュが待っており、その先は約1kmのケメルストレートをアクセル全開で駆け抜けていく。急激な登りからコースの後半は下り坂となり、速度域の高いコーナーが続くスパ。最後にブランシモンという高速コーナーがあり、アクセル全開率は75%を超えるレイアウト。いわばF1屈指の超高速コースであり、パワーユニットが担う役割が大きいサーキットだ。

F1・70周年GPで優勝したマックス・フェルスタッペン【写真:Red Bull】
F1・70周年GPで優勝したマックス・フェルスタッペン【写真:Red Bull】

今回、スパにピレリが持ち込むタイヤは昨年よりもソフトコンパウンドなタイヤ(ハード:C2、ミディアム:C3、ソフト:C4)で、フェルスタッペンが優勝したF1・70周年GPと同じコンパウンドである。昨年に比べてさらなるペースアップが予想される。ちなみに昨年のルクレールのポールポジションタイムは1分42秒519だが、2018年にはベッテルが1分41秒501を予選Q2で記録しており、さらなるタイムアップとハイペースの決勝レースを楽しめるだろう。

レッドブル・ホンダの進化やいかに?ちなみにマックス・フェルスタッペンは昨年1周目でライコネンと接触してリタイアとなってしまったが、レッドブル・ホンダに移籍して初レースとなったアレクサンダー・アルボンが猛烈な追い上げで5位フィニッシュを果たしたサーキット。ホンダとしても4台中3台が入賞しているだけに相性は悪くはない。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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