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全日本ロードレース最終戦にスポット参戦!海外選手権のトップライダーたちは鈴鹿で光る走りを見せるか?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
ヨシムラから参戦するブラッドリー・レイ【写真:MOBILITYLAND】

11月3日(土)、4日(日)に鈴鹿サーキットで開催される全日本ロードレース最終戦「MFJグランプリ」に国内のレギュラー陣に加え、鈴鹿8耐にも参戦したブラッドリー・レイ(イギリス)とスーパーバイク世界選手権で表彰台を獲得したトプラク・ラズガットリオーグル(トルコ)が参戦することになった。

海外からの刺客がレースを動かすか?

2018年の全日本ロードレース選手権JSB1000クラスはホンダワークス「Team HRC」の参戦や国内ライダーのチーム移籍などが多く、近年で最も新鮮な印象を受けるシーズンだった。

しかしながら、今季はスランプからすっかり復調した中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM/ヤマハ)が10レース中8勝を飾る横綱相撲となっている。最終戦でチャンピオン争うライバルは高橋巧(Team HRC/ホンダ)だが、中須賀の221ポイントに対して高橋は178ポイントと、二人には43ポイントもの差が開いているため、高橋巧の逆転はそう簡単なことではない。

2レース制で開催される最終戦での最大獲得ポイントは56ポイントで、高橋巧はレース1で優勝したとしても中須賀が7位以下の順位でないとレース1で中須賀のチャンピオンが決定することになる。ヤマハ、ホンダのワークスライダー2人は常にトップを争ってきただけに、最終戦・鈴鹿でも優勝争いで一歩も引かないレースを展開することになるだろう。

ランキング首位の中須賀克行。最終戦は鈴鹿8耐でも使用した赤白のYZF-R1・20周年記念カラーで走る。
ランキング首位の中須賀克行。最終戦は鈴鹿8耐でも使用した赤白のYZF-R1・20周年記念カラーで走る。

そんな中、今回はチャンピオン争いに加えてもう一つの楽しみがある。先述した2人のトップライダーの参戦だ。最終戦「MFJグランプリ」は全日本ロードレース選手権JSB1000クラスで年間ポイントを獲得した選手が参戦できるが、特別な1戦にするべく海外の選手権を戦うライダーも承認されれば参戦が可能。近年ではカワサキで英国スーパーバイク選手権を戦っていたレオン・ハスラムが2016年にスポット参戦し、いきなり2位表彰台を獲得した例がある。

今回参戦するブラッドリー・レイトプラク・ラズガットリオーグルは速さは折り紙つきのライダーだけに、そのパフォーマンスに期待したい。彼らがレースのトップ争いに加わる可能性は十分にあるだろう。

カーリーヘアも人気のブラッドリー・レイ

スズキのトップチーム「ヨシムラスズキMOTUL」からスポット参戦するブラッドリー・レイは今大会、優勝も期待されている実力の持ち主だ。彼はイギリスの英国スーパーバイク選手権に参戦するライダーで、今季は2年目にして覚醒した走りを披露。開幕2連勝をはじめ、合計5回の表彰台でランキング6位を獲得した。

その速さが注目されたレイは今年の鈴鹿8耐にヨシムラから参戦。鈴鹿サーキットのレースが初めてであるにも関わらず、チームメイトの津田拓也、シルヴァン・ギュントーリらと遜色のない好タイムを予選でマーク。ルーキーながら高い順応性を見せつけた。

ブラッドリー・レイ【写真:MOBILITYLAND】
ブラッドリー・レイ【写真:MOBILITYLAND】

レイは眼鏡にカーリーヘアというレーシングライダーには珍しい、独特のルックスでも人気を集める。長身で親しみやすい雰囲気は今後も鈴鹿8耐に欠かせないライダーになっていきそうな要素があり、スプリントレース仕様のスズキGSX-R1000でどんな速さを見せるかに注目が集まっている。ちなみに今回のヨシムラは津田拓也、渡辺一樹、ブラッドリー・レイの3台体制での参戦。ワークスチームならまだしもプライベーターで3台体制を敷くことは珍しく、チームの彼に対する大きな期待がうかがえる。

レイは鈴鹿8耐への参戦を通じて日本のブリヂストンタイヤの特性も経験済み。1台のバイクを三人でシェアすることからセッティングやポジションにお互いの妥協が必要な鈴鹿8耐と違い、自分だけのバイクに仕上げることができるスプリントレースでの走りは見逃せない。

世界選手権で表彰台獲得のラズガットリオーグル

もう一人のスポット参戦ライダー、トプラク・ラズガットリオーグルはまだ日本のファンに耳馴染みのない名前かもしれない。ラズガットリオーグルはカワサキのトップチーム「Kawasaki Team Green」からカワサキZX-10RRで参戦する。

Kawasaki Team Greenのピット。写真の#11は渡辺一馬のマシン。
Kawasaki Team Greenのピット。写真の#11は渡辺一馬のマシン。

ラズガットリオーグルはロードレース界ではまだまだ珍しいトルコ出身の選手で、まだ22歳の若手だ。トルコ出身のライダーといえば、600ccのスーパースポーツ世界選手権の王者で今年引退したケナン・ソフォーグルが長くカワサキのライダーとして活躍したが、ラズガットリオーグルはまさにソフォーグルの活躍に刺激されたフォロワー的な後輩ライダー。今年、スーパーストック欧州選手権からスーパーバイク世界選手権にステップアップすると、いきなり上位争いに加わった逸材だ。

ラズガットリオーグルは今季のイギリス・ドニントンパークのレース2で2位表彰台を獲得。ルーキーながら参戦6ラウンド目にして表彰台に上がったのだ。ちなみに今季、スーパーバイク世界選手権のルーキーで表彰台に上がったのはラズガットリオーグルだけ。1000ccのスーパーバイク世界選手権は上位争いに加わるには経験値も重要ファクターになってくるため、ルーキーが表彰台に登ること自体が非常に珍しい。猛烈な速さと卓越したタイヤマネージメント能力、勝負勘でカワサキ、ドゥカティ、ヤマハなどのワークスチーム対決の中に割って入ってきた。彼はプライベートチームからの参戦であるにも関わらず、ルーキーイヤーに2度も表彰台を獲得。今後が要注目のライダーといえよう。

好成績を残したルーキーシーズンだったものの、スーパーバイク世界選手権のカワサキワークスはジョナサン・レイとレオン・ハスラムで来季のラインナップを発表済み。来季もプライベーター体制で挑むことになるが、ラズガットリオーグルは経験豊富なベテランの後釜候補として有力視されている。

今回のスポット参戦で注目すべきところは彼自身が日本でのレース経験が無い点だ。スーパーバイク世界選手権ではピレリのワンメイクタイヤを全員が使用するが、全日本JSB1000はブリヂストン、ダンロップ、ピレリなどのマルチメイクのタイヤ競争があるレース。タイヤに関する経験値がゼロの中、どの段階でラズガットリオーグルがマシン、タイヤ、そして鈴鹿のコースに順応してくるかを注目したい。今季のスーパーバイク世界選手権を見ても石橋を叩いてレースをするタイプでないことは明白で、全員が未経験の新コースでの開催となったアルゼンチン戦で表彰台を獲得したことから、初めてのコース・鈴鹿でも驚くべ速さを見せつけるかもしれない。非常に楽しみな存在だ。

ヨシムラから参戦のブラッドリー・レイ、カワサキから参戦のトプラク・ラズガットリオーグルは若くして1000ccのスーパーバイクでトップ争いができる逸材。彼らは2013年、2014年とMotoGP併催のレッドブル・ルーキーズカップで合間見えており、その時からのライバル関係。2014年はレイがランキング4位、ラズガットリオーグルが6位とどちらも高い実力を過去にも見せつけている(この年の王者はホルヘ・マルティン=今季Moto3のランキング首位)。全日本JSB1000にレギュラー参戦する日本のライダーたちが強力なライバル出場に刺激され、いつも以上にエキサイティングなレースになることは間違いなさそうだ。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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