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ヤマハがやる気モード全開!新型YZF-R1投入で国内レースもファクトリーチームとして参戦!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
3年連続で全日本ロードレース王者に輝いた中須賀克行(2014年)

2月5日、ヤマハ発動機はMotoGPをはじめとする国内外のモータースポーツ活動の主要チーム体制を発表した。昨年後半から登り調子のMotoGPは今年も変わらず、ホルヘ・ロレンソとバレンティーノ・ロッシのコンビを継続し、打倒ホンダを狙う。

MotoGPでの活躍も期待したいが、何よりファンを驚かせたのは、国内レースに関する発表だ。

全日本ロードレースもファクトリー体制だ!

中須賀克行は最高の体制を得て4連覇を狙う
中須賀克行は最高の体制を得て4連覇を狙う

この時期にヤマハが行う国内ロードレース体制の発表は例年、全日本ロードレース選手権の最高峰JSB1000に参戦する主力チームのライダーを発表するのみだ。

今年も最主力チームには3年連続JSB1000クラス王者に輝いている中須賀克行が起用されるため、例年通りといった感じも否めないが、今年はそのチーム名に大きな変化があった。

中須賀のチームは「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」。名前のまんまではあるが、ヤマハのファクトリーチームとしての参戦である。ファクトリーチームとは2輪で主に使われる表現で、ワークスチームを意味する。

これまでヤマハは国内モータースポーツに関しては明確なワークスチームとしての活動を行ってきてはいなかったが、今年は、トライアル、モトクロス、ロードレース全てに「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」という名前をつけて参戦する。プレスリリースでも、ファクトリーチームとしての参戦を明記しており、ヤマハの国内モータースポーツに対するやる気が伝わってくる。

詳細な体制は明らかになっていないが、全日本ロードレースにワークス体制のチームが戻ってくるのは2007年のホンダワークス(Team HRC)以来、5年ぶり。ヤマハとしてもSB(スーパーバイク)規定だった2001年以来、14年ぶり。「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」から参戦する中須賀克行は前人未到の全日本ロードレース最高峰クラス4連覇、自身6度目の最高峰制覇を目指す。

若手育成チームも誕生

さらに今年は全日本ロードレースに新たなニュースがヤマハからもたらされた。中須賀のファクトリーチーム体制での参戦に加え、野佐根航太(のざね・こうた/19歳)藤田拓哉(ふじた・たくや/20歳)の2人が若手育成を担うチーム「YAMALUBE RACING TEAM」から全日本ロードレースJSB1000クラスに参戦する。

野佐根と藤田は昨年まで、ヤマハのバイクを使用する完全なプライベート体制のチームから参戦していたが、今年はヤマハがそのレース環境を用意し、偉大なる先輩、中須賀克行の背中を追いかけることになる。メーカーの大きなバックアップでレースに集中して挑める体制を得たことは、これからのロードレース界を担う若手選手にとって大きな環境の変化だ。

ヤマハを使用するプライベートチームで15歳からJSBを戦った藤田拓哉
ヤマハを使用するプライベートチームで15歳からJSBを戦った藤田拓哉

新型ヤマハYZF-R1はJSB1000を席巻か?

新型YZF-R1(市販車) 【写真:ヤマハ発動機】
新型YZF-R1(市販車) 【写真:ヤマハ発動機】

ヤマハが今年、これだけ全日本ロードレースに力を入れる最大の理由は、フラッグシップモデルとなる1000ccスポーツバイク「YZF-R1」の新型の投入にある。全日本ロードレースJSB1000クラスはヤマハ、ホンダ、スズキ、カワサキのフラッグシップモデルが激闘を繰り広げるクラスであるが、近年はモデルチェンジも少ない。また、全日本では完全なワークス体制を敷いて日進月歩で開発が行われているわけではないので、各メーカーともにその開発競争はごく小規模なものにとどまっている。

そんな中で新型「YZF-R1」を投入するヤマハが必勝を期すべく、ワークス体制で勝負に撃って出てきたのはごく自然な流れといえる。MotoGPマシン「YZR-M1」で培われた技術が組み込まれた市販スポーツバイク「YZF-R1」の新型が市販車状態から高いポテンシャルを備えているのは当然で、これが、急速に開発を進めることができるワークス体制ともなれば、今年の全日本JSB1000クラスを席巻することも大いに考えられる。

鈴鹿8耐もファクトリー体制か?

そして、何と言っても楽しみにしたいのが、全日本JSB1000の車両規定に近いレギュレーションで戦う「鈴鹿8時間耐久ロードレース」での新型YZF-R1の活躍だ。国内チームは全日本JSB1000の延長上に「鈴鹿8耐」があるため、当然、ヤマハも強力な体制を敷いてくるに違いない。

鈴鹿8耐での体制やいかに!?
鈴鹿8耐での体制やいかに!?

2012年、2013年とヤマハは中須賀克行が「鈴鹿8耐」のポールポジションを獲得する活躍を見せたが、先代モデルのYZF-R1は燃費が他社のマシンに比べてネックとなり、1度余分に給油しなくてはならず、自力優勝は難しいとされてきた。近年、鈴鹿8耐では世界耐久選手権のレギュラーエントリーチームとジョイントする形で、中須賀や海外の有力ライダーを乗せて上位進出を狙ってきたが、今年は新型になり、優勝の可能性もかなり増しそう。

そうなれば、新型YZF-R1の初年度である今年、全日本ロードレースJSB1000はファクトリーチームをエントリーさせるだけに、昨年から噂にあがっていた鈴鹿8耐へのファクトリーチーム参戦も期待できるし、海外からの有力ライダーの参戦も期待したい。使用するタイヤのブランドなど、まだ詳細が明らかになっていない中では何とも予想しようがないが、ファンにとってはワクワクが止まらない1年になりそうだ。

ヤマハファン、ロードレースファン、今年はぜひサーキットへ!

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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