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スズキの開発車両も走る!MotoGPのバイクが鈴鹿でデモンストレーションランへ!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
スズキが2015年からのMotoGP復帰に向けて開発中のマシン

3月1日(土)、2日(日)に鈴鹿サーキットで開催される「モータースポーツファン感謝デー」で、オートバイレースの最高峰「MotoGP」のマシンがデモンストレーション走行をすることになった。走行は3月2日(日)のみの予定となっているが、現在も「MotoGP」クラスに参戦するホンダ、ヤマハのマシンに加え、2015年から復帰予定の「スズキ」のMotoGP開発車両も観客の前でデモンストレーション走行を行う。

めったに見れない、鈴鹿でのMotoGPマシン走行

現在「MotoGP」の日本グランプリは「ツインリンクもてぎ」(栃木県)で開催されている。かつては「鈴鹿サーキット」と「ツインリンクもてぎ」で年に2度開催されていたが、2004年以降は「ツインリンクもてぎ」のみでの開催になった。時折、イベントでホンダのMotoGPマシンがデモンストレーション走行を行ったり、テスト走行を行ったりすることはあるものの、複数のメーカーが参加して鈴鹿サーキットを走行することは非常に珍しい。

2013年の王者、マルク・マルケスの走り 【写真:MOBILITYLAND】
2013年の王者、マルク・マルケスの走り 【写真:MOBILITYLAND】

「MotoGP」マシンは排気量1000ccで、鈴鹿8耐や全日本ロードレースで鈴鹿を走るマシンと同じ排気量だが、レース専用に開発された「MotoGP」のバイクは市販車ベースのビックバイクとは全くのベツモノ。エンジンから車体の細かなパーツに至るまで、「レースに勝つこと」だけを目的にワンオフで作られている「MotoGP」バイクはスピードもコーナリング性能も(もちろん製作費用も)、まさに「モンスターマシン」という言葉がピッタリな領域にある。最も迫力を感じられるのは、やはりエキゾーストサウンド(排気音)。けたたましい、という言葉で表現される唸るようなサウンドは観るものの心さえも震わせてくれる迫力だ。

スズキの開発車両のデモ走行は初めて!

今回のデモンストレーションの注目どころは、やはり来年から「MotoGP」クラスに復帰予定の「スズキ」の開発車両が観客の前で走ること。「スズキ」は2011年をもって、MotoGP活動を一旦休止していたが、2015年からの復帰を発表。青木宣篤(あおき・のぶあつ)津田拓也(つだ・たくや)らの日本人ライダーを中心にテストコース等での開発が進められている。昨年の「東京モーターショー」スズキブースで展示され、来場者の注目をひときわ集めていた「MotoGP開発車両」が初めて観客の前で走行する、ということでバイクレースファンは是非とも注目したいところだ。

スズキMotoGP開発車両 【写真:MOBILITYLAND】
スズキMotoGP開発車両 【写真:MOBILITYLAND】

スズキはMotoGPクラス発足の2002年から2011年まで同クラスに参戦していたが、優勝は排気量800cc規定時代にクリス・バーミューレンが1度優勝を飾ったのみ(2007年)。その後は規模を徐々に縮小し、2011年に撤退した。それだけに、2015年からの復帰は2ストローク500ccの「GP500」時代の栄光を取り戻すためのリベンジの戦いとなる。復帰に向け、様々な動きがあり、昨年はMotoGPライダーのランディ・ド・プニエがテスト走行でこのマシンを走らせている。また、スーパーバイク世界選手権においては、昨年シリーズランキング2位を獲得したユージン・ラバティを獲得。さらにチームメイトに英国スーパーバイク選手権のチャンピオン、アレックス・ロウズを据えるなど、次の時代のスズキを担う勢いのあるライダー獲得にも余念が無い。モーターショーでの展示や今回のデモンストレーション走行の実施も、メーカーとしてのやる気の表れと言えるだろう。

やっぱり日本のメーカーに頑張ってもらわなきゃ

デモ走行する予定のヤマハYZR-M1 【写真:MOBILITYLAND】
デモ走行する予定のヤマハYZR-M1 【写真:MOBILITYLAND】

「MotoGP」クラスには現在、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティの3メーカーがファクトリーマシン(ワークスマシン)で参戦している。この3メーカーだけでは台数が寂しいものになるので、2012年からは量産エンジンをオリジナルフレームに搭載した「CRT(クレイミング・ルール・チーム)」という枠を設けて、メーカー以外のレース用バイク開発社(フレームビルダー)に門戸を開き、出場台数を確保してきた。

今年、2014年からはファクトリーマシンでの参戦チーム(ファクトリーオプションと呼ぶ)と、プライベートチーム(オープンカテゴリーと呼ぶ)との差を埋めるため、ファクトリーオプションのチームには厳しい制限が設けられることになる。少々説明がややこしいが、「MotoGP」クラスは新時代に向けた過渡期にあり、メーカー間の思惑も様々な思いが交錯している。

とはいえ、やはり「MotoGP」は世界の最高峰。とくに国内の景気は回復傾向にあるため、オートバイメーカーの今後の積極果敢な挑戦も期待できる。ホンダ、ヤマハに加えて、スズキも参戦。国内のオートバイメーカーは世界的にも確固たる地位を獲得しており、外国メーカーがそう簡単には太刀打ちできない実力を持っているだけに「日本が元気な証」として頑張って活動してもらいたいところだ。

展示は3月1日(土)、2日(日)の両日。そして、デモンストレーション走行は3月2日(日)に開催される。

【デモ走行車両】

ホンダ RC213V(2013年マルク・マルケス)=ライダー:青山博一

ヤマハYZR-M1(2013年ホルヘ・ロレンゾ)=ライダー:中須賀克行

スズキ開発車両=ライダー:青木宣篤

昨年のファン感謝デーの様子 【写真:MOBILITYLAND】
昨年のファン感謝デーの様子 【写真:MOBILITYLAND】

【鈴鹿サーキット モータースポーツファン感謝デー】

毎年恒例の鈴鹿サーキットのキックオフイベント。2輪、4輪問わず、様々なレーシングマシンがデモンストレーション走行を行う。鈴鹿サーキットのホームページや雑誌などの招待券を印刷して持参すれば、実質無料で入場できるため非常に人気が高い。公共交通機関を利用しての来場がベター。鈴鹿サーキット公式サイト

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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