新年おめでとうございます。

図 2019年1月1日に初詣に行った成田山新勝寺 出典:筆者撮影
図 2019年1月1日に初詣に行った成田山新勝寺 出典:筆者撮影

この2年間の半導体産業は、DRAMとNANDフラッシュメーカーだけが35~75%もの驚異的な二けた成長を果たし、IoTに欠かせないマイコンはわずか3~4%しか成長しなかった、といういびつなメモリバブルだった。それもメモリは生産量をほとんど増やさず、増やせず、単価だけが2.5倍も値上がりしていた。増産しなくても売り上げが勝手に増えていった、というDRAMメーカーは営業利益率が60%、70%というとんでもない数字を享受してきた。

NANDフラッシュは昨年はじめから値下がりし、生産量を上げられるようになってきた(すなわち歩留まりが上がってきた)ため、売り上げも増加した。DRAMは昨年後半からようやく値上がりが止まり、値下がり始めた。これによって半導体産業は、従来通り、5~6%成長という、普通の成長にようやく戻りつつある。一部のメディアやアナリストはこれを不況が来るような表現をしているが、決してそうではない。ただし、好不況の波は常にアンダーシュートとオーバーシュートが現れるが、メモリバブルが超オーバーシュートだったため、2019年は若干のアンダーシュートになるかもしれない。と言ってもマイナス成長ではない。半導体産業の通常が5~6%成長だからこそ、3~4%に低下するという程度である。

こうして市場調査会社の予想を見ると、平均4.4%程度の成長になる。Mentor GraphicsのCEOであるWalley Rhines氏はそのように述べている(参考資料1)。今年はメモリがバブルから通常に戻るとして、IoTやAIがようやく立ち上がろうとしている状態であり、ゆっくりとした成長率は順当かもしれない。これまでは、メモリ単価の値上げ → パソコン・スマホも値上げ → デバイスの売り上げ伸びず、という負のサイクルに入り、パソコンやスマホのメモリ容量を増やすこともできなかった。

今年は、これらのデバイス単価が値下がりし、メモリ容量を増やしたかったデバイスがたくさんのメモリを使うようになるため、メモリビジネスがマイナス成長になることはありえない。コンピュータの最近のトレンドはCPUのクロック周波数を上げられなくなったため、マルチコアで速度を上げることだけではなく、メモリとの距離を短くしてCPUとのやり取りを素早くすることがコンピュータシステムを高速化する手段になってきている。このことからコンピュータの高速化とメモリの大容量化はつながる傾向にある。だからメモリ単価が安くなることで、不況が来るのではなく、コンピュータメーカーはメモリを増やせる喜びを享受できることになる。

加えて半導体産業は、これから社会やインフラがデジタル化、デジタルトランスフォーメーションへと進むにつれ、IoTやAIデバイスが大量に使われることになるから、長期的に成長することは間違いない。IoTもAIも始まったばかりの段階に過ぎないからだ。ITの4大メガトレンドであるIoTとAI、5G、セキュリティはこれから成長が始まる。

第5世代のワイヤレス通信である5Gも始まったばかりで、2020年をきっかけに普及すると同時に進化もしていく。5Gに対する3GPPの規格はこれから2020年代を通してどんどん進化していく。夢の通信ともいえるミリ波通信が本格的に始まるのは2020年代後半であり、そのためのテクノロジー(ビームフォーミングやビームトラッキングの制御IC、ミリ波送信パワーIC、ミリ波受信機など)は、これから量産を意識した開発がやっと始まる。ミリ波は28GHzから始まり、38GHz、60GHz、70GHz、90GHzへと進化するだろうが、直進性も高まるため、ビームフォーミングなどで直進性を解消しようとしても完全ではない。やはり小さな基地局ともいうべきスモールセルを大量に構築しなければならない。つまり量産しなければならないほどの大量のスモールセル向けの半導体が必要になってくることを意味する。

そして、セキュリティを守るハードウエア(半導体IC)の開発も進むことになる。これまでシステム全体にIDとパスワードによる認証というカギをかけてきたが、システムの中のサブシステム(コンテナ)にもカギをかけ、ICの中のセキュアにしたい回路ブロックにもカギをかける。さらに大事なデータを仮に盗まれたとしても、データを簡単に読めないように暗号をかけておき、その暗号解読キーを認証が必要な回路ブロック(メモリ)に隠しておく。もちろん、セキュアな部屋(コンテナ)とセキュアではない部屋を完全に分け、セキュアな壁を設けておくことも半導体IC技術で可能になる。

こういったセキュリティシステムを構築するカギもやはり半導体が担う。半導体チップは1枚のウェーハから作られるとはいえ、IC1個ずつ特性が違うといったバラツキがある。もちろんウェーハごとのバラツキもある。だから半導体チップの特性は統計的な処理が必要なのだ。この特性を逆手にとって、半導体IC1個ずつにID番号を割り付けるといったセキュリティのカギの作り方さえある。

以上述べてきたIoT、AI、5G、セキュリティの全てを制御するハードウエアこそが半導体である。しかもコンピュータと同様、ソフトウエアを半導体の中に作り込むことができる。だからこそ、半導体を持っていなければ「丸腰」となるため、中国が必至で開発しようとしているのである。にもかかわらず、能天気に見ているだけの日本は、いったい何なんだろうか。将来の成長エンジンを欲しいと思うなら半導体を持っていなきゃ無理だろう。日本が半導体の重要性に目覚めるのはいつになろうか。「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」(2010年4月、日刊工業新聞社刊:参考資料2)と叫んでもう9年過ぎたが、海外勢が半導体の重要性を熟知していることを考慮するとやはり焦りを感じる。

参考資料

1. AI and ML Create Exciting but Challenging 2019 Outlook(2019/01/03)

2. 津田建二著「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、2010年4月発行、日刊工業新聞社刊