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44歳。自分みたいに協調性のない人間が結婚できるわけがない、と思ってしまう~スナック大宮問答集52~

大宮冬洋フリーライター
読者交流宴会「スナック大宮」を池袋で開催。参加者と語り合いました。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流食事会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催140回を超えた。のべ2800人ほどと飲み交わしてきたことになる。

 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代までの「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。

 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めて対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***シンジロウさん(仮名。独身男性、44歳)との対話***

日当たりの悪い家賃4万5千円のアパート暮らしを卒業することが当面の目標です

――スナック大宮in東京・池袋に参加してみようと思ったきっかけから教えてください。

 先日、杉並区にある自宅で荷物の整理をしていたら、大学時代に手に入れたフリーペーパー『PLUS』が出てきました。そのクレジットに大宮さんの名前があり、以前からライターさんとして存じ上げていたので、縁を感じてメールマガジンに登録したのがきっかけです。楽しく拝読しています。

――それは僕が大学時代に仲間と一緒に作っていたフリーペーパーです! 懐かしい……。シンジロウさんも一橋大学に通っていたのですね。何年入学ですか? 僕は1996年入学で2000年卒業です。

 1998年入学です。2年ほど長居して2004年になんとか卒業しました。一橋大学で『PLUS』に出会えたのは良かったです。作っている大宮さんたちとはもちろん面識がなく、中身が面白いから今までずっと保管してあったのだと思います。学生時代は学問よりも小説を読むことが好きで、中島らも『ガダラの豚』などにハマっていました。

 でも、他には苦い思い出しかありません。若気の至りで自分のほうから閉じていて、サークルなどにも入りませんでした。誰とも仲良くなれず、就職活動もうまくいかなかったことが原因で20代は実家に引きこもって暮らしていました。

――それは苦しい期間でしたね。現在はいかがですか?

 様々な業種でアルバイトをしていましたが、今は事務職の契約社員として働いています。30歳を過ぎてからようやく一人暮らしを始めました。実家まで自転車で10分ぐらいの場所ですが、両親との関係は以前より良くなったと思っています。やはり適度な距離は大事ですね。

 今の目標は引っ越しです。家賃4万5千円のアパート暮らしですが、とにかく日当たりが悪い(笑)。12年も住んで飽きてきたこともあり、日の当たる場所に引っ越したいなと思っています。今検討しているのは隣の駅周辺で、やっぱり(東京都)杉並区内です。

 大学時代の友だちはまったくいませんが、高校時代のクラスメイトや部活の仲間からときどき連絡をもらっています。本当にありがたいことです。20代の引きこもり時代は返事すらできなかったのですが、今は飲み会などに顔を出したりもしています。

会場と料理、お酒を提供してくれたのは洋風居酒屋「Goo」。スナック大宮の常連客Wさんが通っているお店でもあります。本当にグーな空間と味でした。(参加者提供)
会場と料理、お酒を提供してくれたのは洋風居酒屋「Goo」。スナック大宮の常連客Wさんが通っているお店でもあります。本当にグーな空間と味でした。(参加者提供)

見知らぬ人と飲み交わすと、自分一人では思いもよらない発想や意見と出会える

――シンジロウさんは西高校(杉並区にある都立の進学校)の卒業生とのことですね。そのつながりがあるので地元での生活が心地良いのでしょう。スナック大宮も「本店」はやはり杉並区の西荻にあるアジア食堂なので、12月に開催するときはまた遊びに来てください。

 はい、ぜひ。私はお酒を飲むことも大好きで、基本的にお金はないのですが、週に1回は西荻の飲み屋に通っています。お店の人や常連さんとも仲良くさせてもらっていて、かつては僕のモテ期もあったみたいです(笑)。でも、下手な対応をしているうちに終わっていました。

――結婚願望などありますか?

 この年齢まで独身でいると、女性に興味がないかと思われたりします。実際は女性が大好きです(笑)。でも、同棲をしたことすらありませんし、自分みたいに協調性のない人間が結婚できるわけがないと思ってしまいます。

――そうなんですね。暇なときは何をしているんですか?

 ラジオを聴いたりしています。特に好きなのはTBSラジオ。最近は面白い番組が減ってしまいましたが……。

 見ず知らずの人と飲み交わすのも面白いなとスナック大宮に参加して感じました。好き嫌いは別として、自分一人では思いもよらない発想や意見と生で接することができるからです。

 スナック大宮は大宮さんという共通の土台があるので話題にも困りません。私はどちらかというと話すより聞くほうが好きなので、無理に盛り上げたりしないで済むのが気楽でした。また参加したいと思っています。

前菜だけでこのボリューム。美味しいものをよく食べよく飲む人たちとは打ち解けやすいので、スナック大宮は会場のお店選びを重視しています。(参加者提供)
前菜だけでこのボリューム。美味しいものをよく食べよく飲む人たちとは打ち解けやすいので、スナック大宮は会場のお店選びを重視しています。(参加者提供)

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学校縁や地縁は「親しくなるきっかけ」。コミュニティを共有することの強さについて

 以上がシンジロウさんとの会話だ。学校縁や地縁のしがらみや視野の狭さがどうにも嫌いだという人もいる。確かに下手をすると差別的・排他的になってしまうが、親しくなるきっかけとして使う分にはとても便利だと思う。

 僕の場合は埼玉県所沢市で生まれて、けやき幼稚園と北秋津小学校に通った。小学校の途中で隣の東京都東村山市に引っ越して、萩山小学校と第三中学校に通い、都立武蔵高校に進学。東進ハイスクール吉祥寺校で大学浪人時代を過ごした。すべての学校で良い思い出があるわけではない。むしろ10代はかなり暗いものだったと思う。

 しかし、この年齢になってから同窓会などに参加すると気の合う人と出会えることも少なくない。当時は親しくなかったり面識がなかった人とも大人になってから友だちになれたりするのだ。シンジロウさんのように、僕に縁を感じてメルマガやスナック大宮に参加してくれる人もいて嬉しい。同じ学校に通った、同じ地域に住んでいた、という共通点は安心感と連帯感を醸成するのだと思う。

 マッチングアプリが全盛の時代だが、信頼関係を築く場としては弱すぎると言わざるを得ない。「同じマッチングアプリを使っているコミュニティ」とはとても言えないからだ。

 学校縁や地縁ならば、同じ「群れ」の一員である(あった)という感覚を共有できる。錯覚に近い感覚なのだけど、社会的動物であるヒトには重要なのだと思う。それを基盤にすれば、友情や愛情を自然と育めるかもしれない。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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