普通の独身男性が見当たらない――。こんなボヤキを30代40代の独身女性から聞くことが多い。前向きに働いていて、イケメンではなくても身だしなみに気を遣っていて、思いやりのあるコミュニケーションができる同世代の男性が少ない、いたとしても既婚者だというのだ。

 筆者は2019年の秋から「独身限定!スナック大宮」というイベントを隔月ペースで開催している。いわゆる婚活パーティーではなく、筆者の読者のうちで独身の人に声をかけ、結婚相談所などの「プロ」も招き、みんなで忌憚のないおしゃべりと交流をする会だ。マッチングを目的としていないからなのか、「普通の独身男性」で結婚願望もある人が参加してくれることも多い。彼らのリアルな状況と心境を聞き取り、筆者の意見も書きたいと思う。

 1人目は、メディア関係の会社で正社員として働く40代後半の男性。年相応の落ち着いた風貌だが、好奇心で輝く目と人懐こい笑顔が魅力的だ。年収は600万円ほどで、運用している資産もあるらしい。ボランティア活動や勉強会にも熱心で、休日にもなると2、3件の会合を掛け持ちで参加している。ある早朝に東京・門前仲町の喫茶店で話を聞くことにした。

***長谷川卓也さん(仮名、47歳)の話***

楽しかった17年間の結婚生活。でも、根本的な価値観の相違に気づかなかった

 27歳のときに2歳年上の彼女と結婚しました。当時、私たちはボランティア活動に精を出していて、私は責任の重い役割を担うことが決まっていました。デートする時間が少なくなるのは目に見えていたので、だったら結婚しちゃおうと思ったのです。彼女をつかまえておく手段としての結婚ですね。

 彼女は真っ直ぐな人で、自分よりも周囲を優先することができる人です。そんなところが私は好きになったのだと思います。17年間の結婚生活は楽しかったです。でも、ケンカしそうになるとどちらかが引いてしまったところはあります。そのせいで根本的な価値観の相違に気づかず、修正しなかったのです。

 今振り返ると、大きく3つの相違があったように思います。まずは子どもが要るかどうかです。僕は一人っ子でもあり、親も孫の顔を見たがっているので、ぜひ欲しいと思っていました。彼女も「要らない」というわけではなかったのですが、積極的に欲しいとは思っていなかったようです。

 もう1つは、住む場所。彼女は田舎育ちなので、私の実家がある東京都心の住環境には馴染めませんでした。だから郊外で2人暮らしをしていたのですが、3年前に私の父が亡くなり、いずれは実家の母の近くに住んであげたいと思いました。相続のこともあります。でも、彼女のほうは将来的により田舎に移り住むことを望んでいました。

東京・門前仲町の喫茶店「東亜サプライ」にて。モーニングセットを一緒に食べながら話を聞きました(筆者撮影)
東京・門前仲町の喫茶店「東亜サプライ」にて。モーニングセットを一緒に食べながら話を聞きました(筆者撮影)

 離婚のきっかけになってしまった相違点は、仕事と会社です。私たちはそれぞれの勤め先がありました。新婚の頃は私のほうが仕事が忙しかったと思います。私は実家暮らしからそのまま結婚生活に入ったので家事能力はなく、家のことは彼女がやってくれるのが当たり前になっていました。それで何の問題もなかったのです。

 しかし、40代になってから彼女が管理職になり、時間的にも精神的にも余裕がなくなっていきました。次第に家のことができなくなり、だけど「ちゃんとやらなくちゃ」という気持ちがあるので追い詰められていたのだと思います。

 ある日、「ご相談があります」と言われました。私は、彼女が会社を辞めると言うのだろうと思っていました。賛成するつもりでした。そのために私は転職もせずに安定志向で働き続けていたからです。ところが、彼女が辞めたかったのは私との関係でした。

 私だったら、「会社か家族か」と言われたら迷わずに家族をとります。新卒で入った会社にも隷属しているつもりはありません。でも、彼女は新卒でずっと働いてきた会社をとったのです。まさに寝耳に水でしたが、一度決めたらてこでも動かない人なのであきらめました。別居を経て離婚したのは2018年冬のことです。

 彼女を幸せにするというミッションをコンプリートすることができなかった――。こんな風に悩んだ時期もありますが、最後には彼女から「今まで楽しかったし、最後まで私のわがままを聞いてくれてありがとう」と言ってもらいました。そのことで救われた気持ちになり、1つ目のミッションを終えたのだと思えるようになりましたね。まだやり直しがきく年齢で私をリリースしてくれた彼女に今では感謝しています。

自由でモテモテの独身一人暮らしを満喫中。子どもを作る努力をできる人が再婚の条件です

 会社の上司からは、「子どもはいいものだぞ。でも、子どもがいると妻との関係は冷めるし2人で旅行を楽しむなんてありえない」と言われていました。夫婦2人の生活と、子どもがいる生活は別もので、両方を得るのは無理だということですね。私は前妻と国内外の旅行を楽しんでいて、今後は再婚して子どもを持ちたいと思っています。もしかすると、上司が無理だと言った両方を(時間差で)味わえる人生を歩めるかもしれないのです。

 初めての独身一人暮らしは、正直言ってめっちゃ楽しいです。離婚して都心に戻ることもできました。今までは会社と家の往復の毎日だったのですが、時間的にも経済的にも開放されたんです。毎日、いろんなお誘いをいただけるので、下手をすると週8で飲んでいます。飲み会をかけもちすることもあるからです。だから、寂しさはあまり感じません。自分の年齢を考えると、そろそろちゃんと婚活をしないといけないとは思っています。

 私は会社外での人のつながりが多いので、いろんな女性を紹介してもらっているところです。子どもが欲しいので、30代半ばまでの女性との出会いを想定しています。1年ほど付き合ってから結婚して子作りすると考えるからです。少なくとも子どもを作る努力を一緒にできることが条件ですね。一人暮らしも3年におよんだので、ゴミの出し方も知らなかった以前とは違います。再婚相手が仕事を続けたいのであれば、家事も少しは手伝うつもりです。

***筆者より長谷川さんへ***

前の結婚がなぜ終わったのか。自分が変えられる部分は何なのか。しっかり考えましょう

 独身男性の中には、離別や死別をした配偶者との思い出をいつまでも引きずって口にしたり、ずっと独身でいることを恥ずかしく思ってやはり口に出したりする人が少なくありません。彼らと対面する女性の声を代弁するならば「そんなことを慰めるのは嫌だし面倒臭い」に尽きます。他の女性に関する後悔や密かなコンプレックスなどは自分で制御し、少なくとも恋愛対象となりうる女性にはあまり明かさないのが大人のマナーです。

 その点、離婚の悲しみに溺れずに前向き過ぎるほど前向きに生活している長谷川さんは素敵ですね。いろんな人から飲み会に誘われたり、女性を紹介されたりするのは当然だと思います。

 ただし、このままでは結婚相手探しは難航するかもしれません。長谷川さんは「30代半ばまでの女性」との出会いと結婚を想定しているようですが、相手の視点に立って考えてみてください。当然、社会に出て10年以上は働いている女性です。今から子どもを作って育てることを考えると、キャリアと収入にブランクが生じます。自分よりも10歳も年上の男性と結婚するならば、そのブランクを補って余りがあると感じることができなければ結婚したいとは思えないでしょう。

 前の奥さんが仕事で追い詰められたとき、なぜ長谷川さんとの離婚と一人暮らしを選んだのでしょうか。バツイチの筆者にもほぼ同じように前妻から別れを告げられた経験があるので、その理由は断言できます。夫の存在が「支え」ではなく「負担。負い目」に感じたからです。彼女がどうしても仕事を続けたいのであれば、会社勤めにはこだわらない長谷川さんがしばらく専業主夫になる選択肢はなかったのでしょうか。

 失敗は次の行動に生かすためにあります。前の結婚生活がなぜ終わってしまったのか、自分が変えられる部分は何なのか。しっかりと考え、なおかつ前向きに過ごすことができれば、長谷川さんが幸せな再婚をする日が近づくと思います。

独身限定!スナック@東京・渋谷の様子。長谷川さんのような男性も参加しています(写真提供:こんかつ山)
独身限定!スナック@東京・渋谷の様子。長谷川さんのような男性も参加しています(写真提供:こんかつ山)