婚活が終わったら結婚相談所を開きたい。儲かりますか?~結婚相談所の現実(4)~

誰でも簡単に始められそうな結婚相談所。その台所事情は? イラスト:つぼいひろき

 婚活アプリが全盛の時代だ。一方で、昔ながらの「お見合いおばさん(おじさん)」が経営する結婚相談所もしぶとく生き残っている。会員一人ひとりの性格や事情を把握して、お見合いを組み、相談に乗り、結婚というゴールを一緒に目指していく。地道な仕事だ。彼らは具体的に何をしてくれるのか。料金は妥当なのか。そのやり方で本当に結婚できるのか。いろんな疑問がわいてくる。

 筆者は全国の結婚相談所を訪ね歩く連載を始めている。顔を合わせて話してみると、意外な現実を知ることが多い。こちらが率直な質問をすると、期待以上に赤裸々な回答が返ってきたりする。本連載ではその一部を読者と共有したいと思う。

 第4回は結婚相談所の台所事情を知りたい。婚活をしている人の中には、婚活ビジネスに疑問を持ったり逆に興味を覚えたりして、「無事に結婚できたら結婚相談所や婚活塾を自分でやってみたい」と考え始める人が少なくないからだ。

 回答してくれるのは、埼玉県川口市を拠点に「結婚相談所ひまわり」を経営している城畑久弘さん。脱サラをして通った婚活関連ビジネスのセミナーで「近隣の結婚相談所を訪問して提携依頼をする」という無茶な宿題を課された城畑さん。本気で実行し、ある結婚相談所のおばあさんから「提携なんかよりうちを引き継いでほしい」と頼まれて快諾。今に至る。会ったばかりの人の事業を引き継ぐなんて尋常な判断ではない。いい意味での変人だ。何でも腹を割って話してくれるおおらかな人物でもある。東京・赤羽の飲み屋街で一杯やりながら、結婚相談所のお金面での現実の一端を聞くことにした。

最大の費用は「連盟」への入会金。高いところでは150万円以上かかる

――前任者が1995年に開業した「ひまわり」を引き継いだのが2017年。支出面から教えてください。

 結婚相談所を開業する場合、最も費用がかかるのが各種の連盟(多くの結婚相談所が会員を共有するデータベースを指す業界用語。全国に約10の連盟が存在する)に加入することです。うちは4つの連盟に加入していますが、平均して50万円程度の入会費用は前任者が払ってくれていたので私は負担せずに済みました。高いところでは150万円以上の入会費用がかかります。

――月会費はいくらぐらいですか。

 うちが入っている連盟は高いところで3万円。他は同じ埼玉県内の結婚相談所でまとめて加入していたりするのでもっと安いです。いつどのような形で加入するかによって、同じ連盟でも入会金や月会費は変わります。20年以上前からやっている結婚相談所を引き継ぐことができた私はラッキーだったと思います。

――他にはどんな費用がかかりますか。

 事務所を借りるためのお金ぐらいですね。事務所を持たずに喫茶店などで会員さんの面談をしている結婚相談所もありますが、信用してもらうためには事務所の住所と固定電話の番号は必要だと私は思います。婚活アプリなどで成婚ができずに結婚相談所を検討してくれる方は、「今度こそは」と安心・安全を求めているからです。親御さんが入会を勧めてくれる場合も多く、ちゃんと事務所があることは信用の基盤となります。

 うちの場合は、シェアオフィスを使用しているため、事務所の家賃は月5千円です。面談をするとき以外は事務所にはいないので、固定電話にかかってきた電話は携帯に転送されます。その費用が月6700円です。

月会費15000円、会員は最大30人で計算すると、月の売上は45万円で限界

――シェアオフィスなどを利用すれば、費用は抑えつつ「ちゃんと事務所がある結婚相談所」になれるのですね。収入のほうを聞かせてください。

 うちの会員は現在20人ほどなので、月会費での売り上げは25万~30万円です。入会金や成婚料が入ることもありますが、毎月売り上げられるとは限りません。

 他に学童保育のアルバイトもしていますが、サラリーマン時代の収入には及びません。もう少し会員を増やしたいです。でも、一人ひとりを丁寧に対応するには最大でも30人までだと私は考えています。お金儲けをしたいのであれば、他の分野で独立開業をしたほうがいいと思いますよ。

 私の場合、会社員の妻との間に子どもが2人いて、同居している両親の介護もあります。主夫をしながら、趣味で少年野球のコーチもできるのは、時間に融通が利く仕事をしているおかげでしょう。

――月会費を15000円として最大30人で計算すると、月の売上は45万円で限界ですね。確かに大儲けができるビジネスモデルではありません。一方で、働き方の自由度は高くてやりがいは大きそうな仕事ですね。

 はい。他人の幸せを祈って応援できる仕事です。そのためには自分自身が成長しなければなりません。人間性を高めないと、会員さんから信頼はしてもらえませんから。

 私は学童保育アルバイトや少年野球のコーチでも同じことを感じています。言い方を少し変えてみるとか、ゴミが落ちていたら拾うとか、小さなことでもいいので行動を変えて成長すると、子どもが自然と近くに寄って来てくれるのです。信頼できる大人を本能的に見分けるのでしょう。

結婚相談所をゼロから始める場合、2年間は無収入でやる覚悟が必要

――小さな結婚相談所は、人と人が真剣に向き合う場なので、経営者の人間力のようなものが試されやすいですよね。最後に、今から結婚相談所を開設したい人向けにアドバイスをお願いします。

 うちは前任者から数えると20年以上の実績があります。それは大きな資産で、例えばネットで「川口 結婚相談所」と検索するとうちが一番上に表示されます。ネット検索で結婚相談所を探す人が多い時代なので、これは非常にありがたい。

 それでも引き継いだ当初は苦労をしました。前任者からの会員さんから信用してもらえず、全員宛に手書きのハガキを送ったこともあります。結婚相談所をゼロから始める場合は、まずは友人知人のカウンセリングから始めるなど、2年間は無収入でやる覚悟が必要だと思います。

 そのカウンセリングも簡単ではありません。初心者は、自分の成功体験を押し付けたり、正論で追い詰めてしまいがち。でも、会員さんは今までの婚活でうまくいかなかったから結婚相談所に来ています。否定をしたら逃げ場がなくなってしまいます。会員さんのモチベーションを保ち、結婚まで伴走してあげられなければ結婚相談所の存在意味がないのです。

 以上が城畑さんへのインタビュー内容だ。連盟に入れば自社の会員にお見合いを組むことは可能だが、肝心の会員募集は自力でやり続けなければならない。最初は友人知人の紹介に頼りながらも、自社の特徴を上手にアピールするなどの広報活動は必須だ。城畑さんの結婚相談所の場合は、「埼玉県川口市では最も長く経営していて実績を重ねている」という得難いアピールポイントがあった。

 お金儲けをしたいのであれば他の分野で独立開業をしたほうがいい、と城畑さんは断言する。結婚相談所は会員一人ひとりと向き合うのに手間暇がかかり、濡れ手で粟をつかむようにはいかないのだろう。

 一方で、主夫(主婦)業との両立や「他人の幸せを応援する」ことのやりがいを考慮するならば、結婚相談所は十分に魅力的な仕事なのだと感じた。

「人間性を高めたいと思う人にはお勧めです」

 城畑さんの力強い言葉が耳に残っている。