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45歳。1人でも私は生きられるけれど、溢れる愛情の行き先に困ります~40歳からの婚活入門(21)~

大宮冬洋フリーライター
東京・丸の内の蕎麦店にて。市川さんはサービス精神とトーク力抜群の美人(筆者撮影)

 アラフォーの独身女性は生きづらいと思う。出産のリミットを感じながらの婚活は苦しいし、既婚者とはその辛さや孤独感を共有できない。話が合う友人知人がだんだん少なくなる。シングルマザーの場合はより深刻だ。幼い子どもがいると仕事・恋愛・趣味のいずれにも時間を取れず、母子で孤立しやすい。

 筆者は昨年末に電子書籍『40歳は不惑ですか、惑ですか』を自費出版した。既婚未婚それぞれの40歳男女に偏りなくインタビューして撮影をさせてもらう予定だったが、独身女性からは取材を断られることが多かった。「今の自分を書いてほしくないし、人からも見られたくない」といった理由がほとんどである。

 だからこそ、彼女たちの話を聞きたい。匿名でいいから、その状況と胸の内を教えてほしい。同じ40代として腹を割って語り合う気持ちで本シリーズを続けている。

***会社員、市川綾子さん(仮名、45歳)の話**

遠距離恋愛になって、1人でまったく寂しくないことに気づいた

 大学を出て働き始めた頃は就職氷河期が始まっていました。当時は「ブラック企業」「パワハラ」という言葉もなく、笑っちゃうほど酷い労働環境で働いていたと思います。私は1社目では社長秘書をしていたのですが、業務と言えば社長の背中をかいたり、社長が床に落とした名刺を拾わされたり……。

 3社目のIT企業でようやく仕事が楽しいと感じられるようになりました。営業サポート部隊として、「営業担当者が次に何を必要としているか」を先読みして動くことにやりがいを覚えたんです。

 その会社で働き始めてすぐに5歳年上の同僚と付き合いました。九州の支社から本社に出向みたいな形で東京に来ていた男性です。どんなところが好きだったのかは覚えていません。

 彼はすごく神経質な人で、凝り性な一面は仕事ではいい方向に発揮されていたと思います。でも、プライベートでは気難しくて、彼女である私に八つ当たりする「たちの悪い甘え方」をする人でした。少し時間をかけて「たちの良い甘え方」ができるように変えていった頃、彼が九州に帰ることになりました。

 遠距離恋愛になって、私は1人でもまったく寂しくないことに気づいたんです。もともとゲームオタクだし、仕事も夢中でやっていました。

 彼とはメールや電話はしていましたが、お互いに行き来してデートした記憶はありません。再会したのは、彼が出張で上京した1年半後のことで、そのときにプロポーズされました。結婚して九州に来てくれ、と。私は即座に「嫌。結婚する気はない」と答えましたね。私が東京での仕事に打ち込んでいることを彼はまったくわかっていないことに怒りを覚えました。

市川さんとの会話が楽しくなり、筆者もビールを飲みながらインタビューしました(筆者撮影)
市川さんとの会話が楽しくなり、筆者もビールを飲みながらインタビューしました(筆者撮影)

男らしい女の私。私よりも男らしい男を私だけに甘えさせたい

 10年間働いたIT企業をリストラされたのは37歳のときでした。彼にはそのことを相談しなかったので、別れたい気持ちを察してくれたのだと思います。それから1年間ぐらいは仕事もせず、ひたすらゲームをして遊んでいました。「一生のうちでゲームに集中できるのは今しかない!」と思ったからです……。

 それから4年ぐらいは流浪の派遣生活をして、派遣社員からの転換で正社員になったのは42歳のときです。彼と別れてから恋人はいませんでしたが、40歳で婚活を始めました。

 今さら妊娠出産に焦る年齢ではないし、1人でいることはすごく好きだけど、溢れる愛情の行き先に困っていたんです。何かを大事にしたい、世話を焼きたい、だから彼氏はほしいと思いました。

 今年の春からお付き合いしている人がいます。私より1歳年上のバツイチの男性です。今後のことなどはお話しできる段階ではありませんが、「いいお付き合いができたらいいな」と思っています。

 出会いはネット婚活です。私の前後5歳ぐらいで、ちゃんと仕事をしている人で、プロフィールの文章をきちんと書けている人と会うようにしていました。私はオタクなので、面食いではなく「文食い」なんです。

 いろいろな人と会ってみて気づいたこともあります。最初からグイグイ来るような人には「私の何を知っているんだ」と不信感を持ってしまうのです。私は男らしい女だと自覚していますが、自分よりも男らしい男が好きだということもわかりました。仕事はできるけれど他人に甘えるのが下手で、弱いところを見せない人をあえて甘やかしたいんです。

 私の男性好みはすごくニッチなのだと思います。でも、宝くじは買わないと当たらないので、婚活もずっと続けていました。

 いま付き合っている彼は、潔い人です。私と出会った婚活サイトは1ヶ月しか続けないと決めていたと聞きました。5年間とダラダラと続けていた私とは違います。

 彼と付き合い始めてから、久しぶりに「自分は女子だったんだ」と気づきました。今まで「人としての面白さ」とか「ヒューマンスキル」を強調していましたが、彼の前では女性らしさが自然と出ています。普段はこんなによくしゃべる私が、彼と一緒にいるときは2割ぐらいしか話していません(笑)。しかもそれが心地いい。恋愛しているからでしょう。これはこれでいいな、と思っているところです。

***筆者より市川さんへ**

お互いが相手を「大事にしたい」と思いながら結ばれるのが大人の結婚

 衣食足りて礼節を知る、という言葉を思い出します。就職氷河期に社会に出た現在のアラフォー男女にとって、まずは自分の生活を安定させることが第一で、仕事や趣味で「やりたいこと」を追求することが第二で、その後に結婚が来るのだと思います。自分が幸せになって初めて、他人にも愛情を向けられるようになるのです。

 市川さんの場合、得意の「先読み」が生かせる仕事に10年間を捧げ、大好きなゲームにも没頭することができました。その後、「誰かを大事にしたい」という気持ちが高まって婚活を始めたのは素晴らしいことです。強い誰かに「守られたい」「世話されたい」という受け身姿勢ではなく、双方が相手を「大事にしたい」と思いながら結ばれるのが大人の結婚だと筆者は思うからです。市川さんが彼との関係を慈しんでいることが伝わってくるようなインタビューでした。

※「40歳からの婚活入門」取材ご協力のお願い

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フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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