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日本航空15便のエンジントラブルを撮影した決定的瞬間

タワーマン元航空管制官
エンジントラブル発生時のシーン(Photo: Glenn Beltz)

10月15日(金)の現地時間14時頃、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス国際空港から日本の羽田国際空港へ向かっていた日本航空15便(JL015)ボーイング777-300(登録番号JA740J)は、離陸後まもなくにエンジントラブルを発生したため、ロサンゼルス国際空港へと引き返しました。トラブル発生の原因や発生時の詳細なやり取り等の情報は公開されていませんが、飛行航跡を見る限りは海上で旋回し燃料投棄を行った後に、航空管制上の優先的取扱いを受けて無事に着陸をしています。

https://www.airlive.net/alert-japan-airlines-boeing-777-suffered-an-engine-malfunction-on-departure-from-lax/
https://www.airlive.net/alert-japan-airlines-boeing-777-suffered-an-engine-malfunction-on-departure-from-lax/

現地時間14時32分、ロサンゼルス国際空港の4本ある滑走路のうちの25Rから出発した当該機のパイロットは、離陸後から5000フィートまでの間にエンジントラブルを認識したため、緊急状態を宣言し、5000フィートで上昇を停止することを航空管制官に伝えました。このときの様子を撮影した一枚の写真では、エンジン後方に出火が見られます。(本写真は撮影者のGlenn Beltz氏:Twitterアカウント@gb0nから承諾を得ています。)一般に日本のメディア等では、「緊急事態」という言葉を使用し、航空機の飛行が不安全な状態も旅客に急患が発生したときも同様の言葉が使われますが、航空の世界では航空機の飛行に危機的な影響がある状況を「緊急状態」といいます。旅客の急患など、航空機の飛行には影響はないが、緊急で着陸する必要があるときは、「優先的取扱い」が必要な状態という言葉を使用します。

その後、パイロットは6000フィートで燃料投棄を行うこと、燃料投棄後にロサンゼルス国際空港へ引き返すことを航空管制官に要求し、承認されています。航跡を見る限りでは、燃料投棄は海上で行われたようです。いわゆる上空待機は、ある一つのポイントを軸に、楕円を描くように回ることを意味しますが、当該機の燃料投棄は、レーダー誘導(航空機が進む方向を航空管制官が特定の方向で指定)を受け、数十マイル進んだら左に旋回するというパターンを数回繰り返して行われています。尚、仮に燃料投棄が内陸で行われる場合でも、航空燃料は揮発性が高く、地表に降りる前に蒸発します。

約30分の旋回を終えた後、ロサンゼルス国際空港へと針路を変え、15時19分頃に無事に滑走路25Lに着陸しました。着陸後も大きな問題はなく駐機場まで地上走行しました。

今回の日本航空15便の緊急宣言を発出しての着陸、エンジン後方から出火するトラブル等、一般の方々には、下手すれば墜落していたとか、旅客に何事もなかったことは幸いだったとか、大変な事態が起きたかのように感じられるかもしれません。決してこのような出来事が当たり前に起きていて安全、というつもりはありませんが、航空機のエンジンは片方だけでも十分な飛行が可能な時間を維持する設計が義務付けられていますし、パイロットも航空管制官も、淡々と定められた方式に従って、安全な引き返しを行いました。

今回、記事を執筆するに当り、一番お伝えしたかったことはこの写真です。不謹慎な意味ではありませんが、本当に奇跡の一枚とでも言えるような瞬間です。本記事を書くに当り、快く写真を提供してくれたGlenn氏に改めて感謝申し上げます。

引用:

http://avherald.com/h?article=4eec2f56

https://www.airlive.net/alert-japan-airlines-boeing-777-suffered-an-engine-malfunction-on-departure-from-lax/

https://www.flightradar24.com/

元航空管制官

元航空管制官で退職後は航空系ブロガー兼ゲーム実況YouTuberとなる。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験を基に、空の世界をわかりやすく発信し続ける。

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