地域航空会社である、北海道路線を中心に展開するAIRDOと九州・沖縄路線を中心に展開するソラシドエアの2社が2022年10月を目処に共同持株会社を設立することについての基本合意書を締結し、5月31日に両社が共同で発表した。

 発表によると、北海道の翼であるAIRDOと九州・沖縄の翼であるソラシドエアは、地域社会への貢献を理念に掲げ、地域に根ざした航空会社として独自ブランドを構築してきたが、新型コロナウイルスで航空需要が大幅に減少するなかで、2社が共同持株会社の設立を通じて、強固な経営基盤を構築することが最良な選択であるとの結論に至ったとのことだ。

2021年3月期、AIRDOは約121億円、ソラシドエアは約77億円の赤字に

 AIRDOとソラシドエアの2021年3月期の決算(2020年4月~2021年3月)も5月31日に発表され、AIRDOは121億8000万円、ソラシドエアは76億9400万円の純損益(赤字)となった。

 キャッシュアウトが増えたことで自己資本比率は、AIRDOは5.3%(2020年3月時点では28.2%)、ソラシドエアは13.9%(2020年3月時点では37.4%)となった。財務基盤を強化することを目的にAIRDOは日本政策投資銀行と北洋銀行、ソラシドエアは日本政策投資銀行と宮崎銀行、宮崎太陽銀行を割当先とした第三者割当による優先株式の発行を両社それぞれ5月28日に決議した。両社の経営が厳しい状況のなかで、業務提携関係にあった両社が次のステップとして共同持株会社を設立する。

AIRDOのボーイング767-300型機(今年1月、新千歳空港にて撮影、以下全て筆者撮影)
AIRDOのボーイング767-300型機(今年1月、新千歳空港にて撮影、以下全て筆者撮影)

ソラシドエアのボーイング737-800型機(今年1月、羽田空港にて撮影)
ソラシドエアのボーイング737-800型機(今年1月、羽田空港にて撮影)

2022年10月を目指して共同持株会社設立。詳細は今後発表へ

 今後は2022年10月を目処に株主移転による共同持株会社を設立し、事業会社であるAIRDOとソラシドエアは共同持株会社の傘下となるが、両社のブランドは維持されることになる。両社の発着が最も多い羽田空港を中心に業務共通化や知見共有などによる費用削減部分が最も大きいだろう。共同持株会社に関する詳細(商号や本社所在地など)は、今後両社で協議の上で追って発表される予定となっている。現時点では2022年6月に開催予定の両社の株主総会で共同株主移転計画の承認を行う予定としている。

 宮崎空港で会見したソラシドエアの高橋宏輔社長は「持株会社設立を機に当社はAIRDO様と協力し、一層の経営基盤の強化と地域ネットワークの堅持に取り組みたい。これからも九州・沖縄の翼として地元と共に成長し、地域になくてはならない航空会社として応援していただけるように安全運航の堅持、安心で心地よい空の旅の提供に努める」と話した。また、AIRDOの草野晋社長は「両社が一層強力しながら現下の危機克服と持続的成長を目指すことになった。北海道の翼AIRDOはこれからも地域に根ざした航空会社として、地域社会の発展に貢献していく」とのコメントを出した。

ソラシドエアの高橋宏輔社長(5月31日、宮崎空港で撮影)
ソラシドエアの高橋宏輔社長(5月31日、宮崎空港で撮影)

AIRDOの草野晋社長(1月20日、新千歳空港で撮影)
AIRDOの草野晋社長(1月20日、新千歳空港で撮影)

両社発着便の多くが羽田空港発着。羽田空港でのコスト削減が可能

 両社の持株会社設立メリットとしては、AIRDO、ソラシドエア共に羽田発着路線が中心の路線展開となっていることで、カウンターや羽田空港内のオフィスなどを共用化することが考えられる。羽田空港の発着ターミナルはAIRDO・ソラシドエアともに第2ターミナルだが、両社の羽田空港におけるオフィスは、AIRDOが第1ターミナル、ソラシドエアが東京モノレール新整備場駅近くのビルとなっている。様々な部分で共用化できることで、両方のブランドを維持してもコスト削減メリットは大きいだろう。羽田空港以外にも両社が就航する神戸空港、中部空港(セントレア)でも共用化することのメリットは出てくる。

 またAIRDOは北海道発着路線、ソラシドエアは九州・沖縄発着路線であり、路線重複がないことから、路線の整理は必要なく、逆に両社のネットワークを活用し、羽田乗り継ぎでの北海道と九州・沖縄を乗り継ぐ需要促進も期待できる。AIRDOは新千歳だけでなく、函館、旭川、帯広、女満別、帯広、釧路と道内7都市と羽田を結んでいる。ソラシドエアは宮崎、鹿児島、大分、熊本、長崎の九州5都市からの羽田便に加えて、今年3月28日には羽田~那覇線にも1日3往復で就航した。

今年3月28日に新たに羽田~那覇線にソラシドエアが1日3往復で就航した(羽田空港での就航セレモニー)
今年3月28日に新たに羽田~那覇線にソラシドエアが1日3往復で就航した(羽田空港での就航セレモニー)

羽田空港発着枠の行方は?現状AIRDO23枠、ソラシドエア25枠

 両社が共同持株会社を設立することで注目されるのが羽田空港発着枠の行方である。羽田空港の発着枠はAIRDOが23枠(往復)、ソラシドエアが25枠(往復)を持っており、両社合わせると48枠となり、これまでANA・JALに次ぐ発着枠を持っていたスカイマークの37枠+トライアル運航1枠(羽田~下地島線)の38枠(往復)を上回る形になるが、共同持株会社設立時に同じ発着枠数を維持できるのかが焦点となる。

 各社の収益にとって大きな影響力がある羽田空港の発着枠の返上を競合他社が国に対して求める可能性もある。

両社が発着する羽田空港第2ターミナル(5月11日撮影)
両社が発着する羽田空港第2ターミナル(5月11日撮影)

重複路線はなく、ブランドが維持され、地方路線が多いことから現状の発着枠が維持される可能性が高い

 だが今回、2社が共同持株会社を設立しても、重複路線がないことから競争環境が変わることはなく、羽田発着路線の勢力図にも変化は起きない。加えて、北海道各地や九州各地へのローカル路線が多いことで地方空港発着路線維持という側面もある。AIRDO・ソラシドエアのそれぞれのブランドが継続されることで、発着枠の現状維持の可能性も十分にある。

 この点について、ソラシドエアの高橋社長は「両社の存在意義が地元の為のエアラインであり、合併(ブランド統一)のような形は考えられず、検討もしていない。大事なことは協業の推進であり、航空会社としての立場を両社が今の状態から変えることはないという前提で、当局に(対して)はこのような考え方について相談をしている。共同持株会社を設立した後でも、両社が独立した航空会社というのを継続するという認識である」と話し、発着枠は維持できる可能性が高いことを示唆した。

ANAとのコードシェア便も継続へ。両社のマイレージやクレジットカードの統合は未定

 AIRDO、ソラシドエアともにANAホールディングスの資本が入っており、全便がANAとのコードシェア便となっている。両社の共同持株会社設立後もその枠組みは維持される見込みだ。今後はANAからの一定の利用者獲得に加えて、2社が1つの持株会社の傘下になることで更なる集客力を期待したいところだろう。その中でもポイントプログラム(マイレージプログラム)やクレジットカードの統合は必要だろう。現状、両社それぞれで展開しているが、1つにまとまることのメリットは大きい。

 例えば、ソラシドエアのクレジットカード「ソラシドカード」はカード会員専用運賃「ソラシドカード割」において、10日前までの購入で羽田~鹿児島線が片道1万2700円、羽田~那覇線が片道1万5300円と2週間を切った段階では割安な運賃であるなどの魅力がある。ただ、路線が限られていることでクレジットカードを作るまでに至らない利用者も多い。今後、AIRDOの北海道路線でも同様のカード会員向けの割引が設定され、クレジットカードが1つになれば新たにクレジットカードを作る人が増える可能性も十分に考えられる。両社の共同持株会社設立へ向けた最初の取り組みとして、7月1日からは両社のポイントを相互交換できるキャンペーンもスタートするが、今後、マーケティング戦略についても協議されることになる。

どこまで独自性・地域性を保てるのかに注目

 懸念事項としては、AIRDOは北海道の翼、ソラシドエアは九州・沖縄の翼という位置づけが維持されることになり、共同持株会社主導というよりは事業会社となる2社の意向が経営に反映されることになる。独自性・地域色を1つの共同持株会社の中でどう展開していくのか、その点も含めた今後の展開に注目していきたい。

 筆者の見解としては、羽田空港の発着枠が維持できるのであれば、デメリットよりもメリットの方が格段に大きい。競合路線がないことでマイナス要素は限られる。コロナ禍で生き残りをかけた中堅の地域航空会社のチャレンジが始まる。