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海外リゾートに来た雰囲気が味わえる沖縄の下地島空港。今までの日本の空港にはないリゾートターミナルビル

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
下地島空港は日本で一番リゾート地らしい空港ターミナルになっている(筆者撮影)

 日本の空港のなかで、これほどリゾートに来たことを実感させてくれる空港はないだろう。3月30日に宮古島から伊良部大橋を経由して約30分の場所にある下地島空港に「みやこ下地島空港ターミナル」がオープンし、同日よりLCC(格安航空会社)のジェットスター・ジャパンが成田~下地島線を就航した。

宮古島から車で30分ほどでアクセスできる3月30日に開業の「みやこ下地島空港ターミナル」(2019年3月筆者撮影、以下同じ)
宮古島から車で30分ほどでアクセスできる3月30日に開業の「みやこ下地島空港ターミナル」(2019年3月筆者撮影、以下同じ)

伊良部大橋の開通で宮古島から約30分で行けるようになった

 元々、パイロットの訓練をメインにした空港で、1994年に当時の南西航空(現在の日本トランスオーシャン航空)が定期便を撤退して以降もANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)の訓練を行っていたが、現在は両社の訓練は下地島空港では行われておらず、一部の国内航空会社の訓練に限定されている。訓練も少なくなった状況下で、2015年1月に宮古島と伊良部島を結ぶ全長3540メートルの伊良部大橋が開通したことで(かつてはフェリーでしか行けなかった)、伊良部島から小さな橋で結ばれている下地島へ車で往来できるようになった。

 既にANAやJALグループの日本トランスオーシャン航空が就航する宮古空港も飛行機を駐機するスポットが足りず、新規航空会社の参入が難しい。そんな中で下地島空港に定期便を就航させるべく三菱地所を中心に民間で空港ターミナルビルを建設し、LCCを中心に航空会社誘致を進めた。結果、ジェットスター・ジャパンの誘致に成功し、3月30日より成田~下地島線を就航し、7月3日からは関西~下地島線の運航も開始するほか、香港のLCCである香港エクスプレスも香港~下地島線に就航することを発表した。

下地島空港に成田空港から到着したジェットスター・ジャパン機
下地島空港に成田空港から到着したジェットスター・ジャパン機

リゾート地らしい空港ターミナルビル

 筆者も就航前の内覧会と就航初日にジェットスター・ジャパン便で成田から下地島へ飛んで実際に空港を利用してみたが、日本では類似の空港がないリゾート地らしい雰囲気の空港ターミナルビルになっていた。タイのリゾート地の空港をイメージしたターミナルビルとのことだが、その言葉通りに実際に空港を利用した人からも高級リゾートホテルのラウンジにいるかのような雰囲気という声が多く聞かれた。特に保安検査後の待合室エリアの椅子も居住性が高く、出発エリア内はプールのような人工池に囲まれており、南国ムード満点で、テラスで泡盛カクテルを飲みながら出発を待つことができるのだ。これも民間を中心に設計・建設されたことで実現できた空港ターミナルビルだ。

保安検査場を通過後の開放的な出発待合室には大きなテーブル席もあり、電源も備えられている。
保安検査場を通過後の開放的な出発待合室には大きなテーブル席もあり、電源も備えられている。
搭乗ゲート前の椅子もソファでゆったり
搭乗ゲート前の椅子もソファでゆったり
空港らしくない外のテラスも気持ちいい
空港らしくない外のテラスも気持ちいい
出発エリアを囲む人工池はまさに高級リゾートホテルのような雰囲気
出発エリアを囲む人工池はまさに高級リゾートホテルのような雰囲気
泡盛カクテルなども出発前に飲むことができる
泡盛カクテルなども出発前に飲むことができる
早めに空港に到着して空港内で最後のリゾート時間を堪能できる。
早めに空港に到着して空港内で最後のリゾート時間を堪能できる。

 チェックインカウンターも広々しており、何よりも天井が高くて気持ちがよい。またエコアイランドの取組として、板の方向が層ごとに直交するように重ねて装着した大判のパネル「CLT」を使用し、空港ターミナルとして全国で初めて屋根の構造材を採用するなどエコな空港になっている。現状では成田からの1便のみとなっており、今は勿体ないくらい贅沢な空間であり、満席でも1便180名しか乗れないので、混雑とは全く無縁の空港ターミナルである。現状、下地島空港で決まっているのは1日最大3便しかないが、10便程度には増やしたいところだ。

チェックインカウンターも屋根が高くて気持ちがいい。エコにも配慮したターミナルビルになっている。
チェックインカウンターも屋根が高くて気持ちがいい。エコにも配慮したターミナルビルになっている。

レンタカーもターミナルビルからそのまま乗れる

 もう1点、非常に使いやすかったのがレンタカー利用だ。下地島空港は、トヨタレンタカー、オリックスレンタカー、OTSの3社のみとなるが、到着ロビー前にある3社共通のレンタカーカウンターで手続きすれば目の前から出発することができる。宮古空港や石垣空港でも他の空港同様に送迎車でレンタカー会社のオフィスまで移動しなければならないが、その手間がない。

 飛行機到着後にすぐに出発でき、帰りもチェックインカウンターの至近距離でレンタカーを返却できるのもストレスフリーなリゾート旅行には特に嬉しい。出発便に合わせて宮古島への路線バスも運行されている。

レンタカーも到着後すぐにターミナルの専用エリアから出発できる。
レンタカーも到着後すぐにターミナルの専用エリアから出発できる。

欠点は成田出発が朝7時25分で空港アクセスが限られる

 ただジェットスター・ジャパンの成田~下地島便の唯一の欠点が成田空港を朝7時25分という出発時間の早さである。京成スカイライナーの一番列車だと、京成上野5時58分発・日暮里6時03分発で空港第2ビル駅に6時39分となり、チェックインの締め切りが便出発30分前の6時55分となり、ジェットスター・ジャパンが発着する第3ターミナルまで歩いて15分弱かかることを考えると厳しい。なので、東京駅5時40分発の格安バス「東京シャトル」「THEアクセス成田」(同時刻にそれぞれ出発)に乗らないと間に合わない。自動車で成田へ行ける場合や前泊できる場合は便利だが、公共交通機関での早朝移動は大変な状況だ。

 しかしながら早朝便に乗ってしまえば朝10時半には下地島空港に到着するので、そのままランチに行ける。また成田空港へ戻る便は11時過ぎなので宮古島なら9時過ぎ、高級リゾートヴィラが相次いで開業している伊良部島であれば9時半過ぎにホテルをチェックアウトすれば十分に間に合う。最近では那覇空港を中心に空港混雑やレンタカーを借りたり・返却する手間でリゾートに来たのに疲れてしまうこともあるが、下地島空港では無縁である。

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下地島空港から車で10分ほどの伊良部島にはプライベート感を味わえるリゾートヴィラが増えている(写真:紺碧 ザ・ヴィラオールスイート)
下地島空港から車で10分ほどの伊良部島にはプライベート感を味わえるリゾートヴィラが増えている(写真:紺碧 ザ・ヴィラオールスイート)

夏のシーズンは片道1万円台で推移している

 まもなく就航から1ヶ月が経過するが、ジェットスター・ジャパンによると就航以来搭乗率も好調とのことだ。成田~下地島線の運賃は空席連動性で片道6990円~(空港税や支払手数料などが別途必要)となっているが、7月搭乗分でチェックすると片道1万円~2万円程度が相場となる。閑散期やセール販売時には片道1万円以下で販売されることもある。海外リゾートの雰囲気の空港ターミナルビルが宝の持ち腐れになれないように、早期の新規就航や増便を目指すべく、成田~下地島線の搭乗率が今後の下地島空港の行方を大きく左右することになりそうだ。

■ジェットスター・ジャパン、成田~下地島線

GK323便 成田7時25分発 下地島10時25分着

GK324便 下地島11時10分発 成田14時05分着

※運航日:5月6日までの毎日、5月7日~6月27日の月・金・土・日、6月28日〜10月26日までの毎日

■ジェットスター・ジャパン、関西~下地島線(7月3日就航)

GK377便 関西15時50分発 下地島18時15分着

GK378便 下地島18時55分発 関西21時15分着

※運航日:7月3日~7月19日の月・水・金・日、7月20日~8月31日までの毎日、9月1日~10月26日の月・水・金・日

■香港エクスプレス、香港~下地島線(7月19日就航)

UO814便 香港8時40分発 下地島11時50分着(火曜)

UO814便 香港14時10分発 下地島17時20分着(金曜・日曜)

UO815便 下地島12時35分発 香港13時55分着(火曜)

UO815便 下地島18時35分発 香港20時05分着(金曜)

UO815便 下地島18時50分発 香港20時20分着(日曜)

※運航日:毎週火・金・日

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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