Yahoo!ニュース

世界一のYouTuber「ピューディーパイ」の日本移住が、日本にもたらす3つのチャンス

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:PewDiePie YouTubeチャンネル)

世界で最もチャンネル登録者数が多いYouTuberとして知られる「PewDiePie(ピューディーパイ)」ことフェリックスさんが、日本移住を発表し、世界中で話題になっているのをご存じでしょうか?

参考:世界一のYouTuber「PewDiePie」日本移住の衝撃 国内YouTubeシーンに与える影響は?

なにしろ「ピューディーパイ」のYouTubeチャンネルの登録者数は1.11億人。日本の人口と大差ないほどのファンがいるYouTuberなのです。

そのフェリックスさんが、YouTubeで日本移住を報告した動画も700万以上再生されています。

実際に、Googleニュースで「PewDiePie Japan」と検索すると日本はもちろん、様々な海外のニュースサイトで彼の日本移住が話題になっていることが分かります。

世界一のYouTuberの知名度の凄さ

「ピューディーパイ」は、英語で発信されているチャンネルですから、日本ではまだそれほど知っている人は多くないかもしれません。

ただ、日本トップのYouTuberであるヒカキンさんのチャンネル登録者数が1,070万人でその10倍以上であると言えば、その凄さが伝わるでしょうか。

実際に「PewDiePie」という単語が、どれぐらい世界で検索されているかをGoogleの検索数でグラフ化すると、こうなります。

(出典:Googleトレンド 青「PewDiePie」赤「PPAP」黄「metaverse」)
(出典:Googleトレンド 青「PewDiePie」赤「PPAP」黄「metaverse」)

青いグラフが「PewDiePie」の検索数、赤色が世界中で大きな話題になったピコ太郎の「PPAP」で、黄色が現在世界中でバズワードになっている「metaverse(メタバース)」の検索数と言えば、大体の話題の大きさは想像できるのではないでしょうか。

特に大きな山になっている2019年頃には、「ピューディーパイ」と、インド企業のTシリーズが、YouTubeのチャンネル登録者数のトップ争いをしていたことが、世界で大きな話題になっていました。

参考:登録者数700%アップ! YouTuber「No.1争い」に見た、意地とトレンド変化

直近はグラフにもあるように検索数が低下していますが、これは実はフェリックスさんがマルツィアさんと結婚され、一時的に活動を休止するなど、YouTubeの投稿ペースを変えたのが影響しているようです。

参考:大人気ストリーマー「PewDiePie」氏が2020年初頭よりYouTubeでの活動を休止。

ただ、何しろ登録者数が1億人超えのアカウント。直近の動画は、どれも当然のように数百万再生を超えていますから、その影響力の大きさは今も健在です。

迷惑系YouTuberとは一線を画す

ちなみに、海外の人気YouTuberというと、富士の樹海で自殺遺体をYouTubeに投稿して炎上したローガン・ポール騒動を思い出して心配される方も多いかもしれません。

参考:「自分が恥ずかしい」 樹海の自殺遺体投稿した米ユーチューバーが謝罪

フェリックスさんも、実は2017年にナチスや反ユダヤ的な内容を投稿して炎上騒動に直面したことがあります。

参考:年間17億円強を稼ぐYouTubeトップスター「PewDiePie」がクビになった

ただ、彼の場合はこの際の反省を活かし、その後はこうした大きな炎上騒動をおこさないように発言に気をつけるようになっており、ローガン・ポール騒動の際には彼を批判する動画をアップしているのが非常に印象的でした。

そういう意味では、日本でも炎上をしないことで有名なヒカキンさんに近いタイプの良識派のYouTuberと言えるかもしれません。

2年半越しでの日本移住

特に、フェリックスさんの日本移住が我々日本人にとって嬉しいニュースなのは、フェリックスさんがたまたまいろんな国を転々とする過程で日本に来たわけではなく、これまで何度も日本を訪問して日本を好きになった結果、今回のコロナ禍での移住という難しい決断をされた点です。

しかも、実はフェリックスさんが日本に家を購入したと公表したのは2019年10月の話。その後、コロナ禍になり、日本に来たくても来れないという状況が続いたにもかかわらず、日本に来たいという思いを消せないまま、なんと2年半以上の時間をかけて、今回ようやく日本移住を実現されたのです。

昨日には、来日後の自宅待機期間も明けて、近所のレンタカー屋で車を借りて豪徳寺にドライブしたり、表参道で買い物をしたりして日本の生活を早くも楽しんでいる様子をアップされています。

その中でも非常に印象的なのは、世田谷区の役所に移転の手続きに行ったあとに日本に来れたことに本当に感慨深げにされている姿です。

今後注目されるのは、「1億人を超えるファンがいるYouTuberが日本に移住すると、どういうことがおこるのか。」という点でしょう。

短期的には、大きく3つの変化がおこる可能性があると思われます。

■日本のYouTuberの海外とのパイプに

まずシンプルに想像されるのは、フェリックスさんと、ヒカキンさんなどの日本のYouTuberのコラボです。

これまではフェリックスさんはイギリス在住でしたので、ほとんどの日本人には遠い存在で、日本のYouTuberとしてもコラボの機会は少なかったと思います。実際、これまでのフェリックスさんの来日の際も、あまりYouTubeの中には日本人との交流のシーンは出てきません。

ただ、当然今回日本に移住したことで、さまざまな日本人とも交流関係ができてくるでしょうし、日本のYouTuberからもコラボのオファーが来るはずです。

これまでもフェリックスさんは友人であるMrBeastが4億円かけて製作したイカゲームのパロディ動画を紹介したりなど、YouTuber仲間を紹介したり、絡んだりという動画をあげていますから、この中に日本人YouTuberが入ってくることは全く夢物語ではないわけです。

フェリックスさんはまだ日本語はあまり喋れないようですから、そこはある程度英語が喋れるか、通訳を挟むなどの工夫が必要になりますが、フェリックスさんの1億人のチャンネル登録者が、日本のYouTuberを知るきっかけを得ることで、日本のYouTuberが海外にもファンを拡げるきっかけになる可能性は十分あると言えるでしょう。

英語を勉強中の小学生YouTuberが、フェリックスさんとコラボして世界的に有名になるような胸熱の展開もありえるわけです。

■日本のインバウンド復活のシンボルに

また、当然期待されるのは海外のファンに、日本の様々な魅力的なスポットを紹介してくれる機会が増える点です。

実際にフェリックスさんは、過去に何度も日本の動画をアップしており、そのどれもが数百万再生を超えているのです。

もちろん、現在はコロナ禍でもあり、外国人観光客の規制がありますので、今すぐにその効果が目に見えて表れることはないと思います。

ただ、彼の日本好きはその一つ一つの動画から滲み出ています。

妻であるマルツィアさんにプロポーズしたのも日本旅行の最中というのが、その象徴的な逸話と言えるでしょう。

フェリックスさんが日本に移住されたことで、当然日本国内を旅行してYouTubeに動画をアップする機会は増えると思われます。

そうしたフェリックスさんの日本愛に満ちた動画は、間違いなく多くの海外の視聴者に良い影響を与えてくれるはずです。

■日本企業製品の海外向け認知拡大も

さらに、実は最も即効性がありそうなのが、日本企業の製品の海外での認知拡大です。

現在のところ日本企業が何らかのフェリックスさんのスポンサードをしているというケースはないようですが、G FUELというエナジードリンクが「ピューディーパイ味」を発売しており、YouTubeの動画にもたびたび登場しています。

フェリックスさんが日本に移住したことで、こうした「ピューディーパイ」コラボやタイアップを日本企業が実施する可能性があがると考えられます。

実際、過去にはサンリオさんがフェリックスさんを日本に招待したことがあるようですので、すでにコンタクトをされているかもしれません。

動画を見て頂けると分かると思いますが、日本人にとっては普段見慣れた普通の光景や見慣れた商品でも、フェリックスさんのように海外の方に日本人が気づかない魅力を違う角度で紹介してもらえるケースがたくさんあります。

現在はネット経由で日本の商品が海外からでも注文可能な時代。

日本に移住したフェリックスさんが商品をYouTubeで紹介することで、海外で人気になる商品というのも今後出てくる可能性は十分あるように思います。

日本人が知らない日本の可能性

もちろん、フェリックスさんは日本でのYouTube更新頻度は以前に比べると緩やかになると発言されており、今後どのような動画を公開されていく予定なのかも分かりません。

ただ、私たち日本人は、ついつい日本には資源もないし、高齢化も進み人口減少が見えていて、日本の将来は暗いと悲観的にばかり捉えてしまいがち。

その一方で、世界一のYouTuberであるフェリックスさんとマルツィアさんが数ある国の中から日本移住を選択してくれたということは、日本にも私たち日本人が知らない魅力や可能性がたくさん眠っているという証しのように感じます。

今回の世界一のYouTuber「ピューディーパイ」日本移住が、日本に良い刺激をもたらしてくれることを期待して、今後のYouTubeの動画に注目したいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

徳力基彦の最近の記事