こんまりメソッドの世界的大ブレイクから考える日本のコンテンツの未来

(出典:Netflixウェブサイト)

 100万部を超えるベストセラーとなった「人生がときめく片づけの魔法」の著者としても有名な、こんまりこと近藤麻理恵さんの「こんまりメソッド」が世界的な話題になっているようです。

 今年の元旦から動画配信サービスのNetflixで配信開始されたオリジナル番組「人生がときめく片づけの魔法」が公開されると、米国を中心に世界中で一気に話題になった模様。

 番組の中での本を捨てるという行為が、一部の本好きの識者の批判を引き起こしたこともあり、一部ではアジア人に対する差別問題の議論まで展開されているとか。

参考:こんまりメソッドを巡り、世界中で激論。差別問題にも発展。

 

 こちらの記事のタイトルは炎上気味に書いてありますが、おおよその視聴者の反応は非常に好意的なようで。

 一部ではすでに「Konmari」という単語が、片付けをするという意味の動詞的に使われ始めているんだそうです。

 「Google」=「検索する」のように「Konmari」=「片づける」というイメージでしょうか。

 私自身もNetflix契約者ですが、正月は別のドラマを見続けていたので全く気がつかず。

 昨日、こちらのツイートを拝見して知って、家に帰ってから慌てて番組を見てみた次第です。

 

 実際に、3本ほど一気に見てしまいましたが、これは確かに人気が出るだろうなという印象の、役に立つ面もあり、感動的な面もあり、という非常に面白い作りの番組でした。

 最初は、1シーズンで8本の動画が公開されていて、片づけ動画でシーズンものってどういうこと?と思ったのですが。

 ちゃんと人種や家庭環境が多様な構成になっており、番組にドップリはまる人が多いのも納得の作りになってます。

(私も猛烈に今すぐ家を片付けしたいな、と思ってしまったのが正直なところです。)

 

■今までのこんまりメソッドブームと、今回は規模が全く違う

 こんまりさんが、渡米して活動の拠点を日本からアメリカに変えたというのは、去年に記事でも取り上げられていますし、既に Konmari コンサルタントなる職種も生まれるなど、数年前から海外でも十分注目はされていたようですが。

参考:アメリカに渡ったこんまりさんの今――“ときめきの片づけメソッド”に世界がラブコールを送り続けるワケ

 今回の大ブレイクは、圧倒的に規模が違うようです。

 象徴的なのがGoogleの検索数をグラフ化してくれるGoogleトレンドのグラフ。

(出典:Googleトレンド)
(出典:Googleトレンド)

 日本では、2015年のテレビ出演等を中心に、こんまりさんに関連する検索が、非常に大きくなっていますが。

 これに英語のMarie Kondoを加えた瞬間。

(出典:Googleトレンド)
(出典:Googleトレンド)

 

 日本語の検索ボリュームのグラフは完全に埋もれます。

 今年に入って壁のように検索数が急上昇しているのが良く分かると思います。

 さらに検索をされている国の世界地図を見ると、アメリカとヨーロッパを中心に世界中の国で検索されまくっているのが良く分かります。

(出典:Googleトレンド)
(出典:Googleトレンド)

 さらに、比較対象として、PPAPと大坂なおみさんを追加してみた感じがこのグラフ。

(出典:Googleトレンド)
(出典:Googleトレンド)

 さすがに、全米を制覇したときの大坂なおみさんの検索ボリューム(緑色のグラフ)には負けていますが、ほぼPPAPと同じ検索数(黄色のグラフ)を、たたき出していることが分かります。

 前述のツイートで、孫正義や大坂なおみよりも凄いと書かれてる意味が良く分かるグラフです。

■Netflixのプラットフォームとしてのすごみ

 今回の大ブレイクを見て、個人的に改めて印象に残ったのが、Netflixのプラットフォームとしてのパワーの凄さです。

 ちょうど、今月はNetflixが公開した「バード・ボックス」という映画も、非常に大きな話題になっています。

 日本でもテレビCMが流れていましたが、それとあわせてバード・ボックスの目隠しのマネをして、危険行為をする人が続出していることが問題になっている、というニュースを見た人も多いのではないかと思います。

 参考:米国で危ない「目隠し動画」が大流行 車を運転して事故を起こす人も 日本に上陸するか?

 ここで注目して頂きたいのが、Netflixは有料の動画配信サービスであるという点です。

 本来、YouTubeのような無料動画であれば、SNSやLINEでクチコミが拡がって、一気に1億人が見て話題になるということが、比較的容易に発生します。

 ピコ太郎のPPAPの動画が象徴的でしょう。

 この動画の再生回数は1億3千万回を超えていますが、この現象が発生するのは誰でもリンクをクリックすれば動画を見ることができたからです。

 テレビの地上波においても、ツイッターで話題になっているのを見てチャンネルを変えたという経験がある人は少なくないはずで。

 これが可能なのもテレビの地上波が、テレビを持っていれば無料で見ることができるからです。

 一方、Netflixの番組は、クチコミで番組を知っても、Netflix契約者でなければ番組を見ることができません。

 普通はその場合、クチコミの拡がりは限定的になりがちです。

 ただ、今回のこんまりさんの大ブレイクで、Netflixは有料契約者しか見られないにもかかわらず、ネットが繋がれば誰でも見れる無料のYouTubeの動画と、同じ規模での世界的話題を巻き起こすことが可能であることを証明してしまっているわけです。

 既にNetflixの有料契約者数は1億3千万人を超えていると言われています。

 有料契約者しか見れないと言っても、日本の人口よりも多い人がNetflixを見ることができるわけで、その影響力の大きさが今回も証明されたと言えるでしょう。

■言語の壁を感じさせないNetflixの番組作り

 さらに、こんまりさんのNetflixの番組で興味深いのは、こんまりさんがNetflixの番組の中で、ほとんどのコミュニケーションを通訳を介して日本語で行っている点です。

 

 Netflixは多言語対応していますので、字幕に英語や日本語を選択することができるのはもちろん、音声も複数選べてしまいます。

(出典:Netflixアプリ)
(出典:Netflixアプリ)

 こんまりさんもある程度の英会話は可能なはずですし、あえて番組の雰囲気作りのために日本語を軸にしているのかも知れませんが、少なくとも言語の壁のハードルが大きく下がっているというのが番組を見た率直な印象です。

 

 よく、芸人さんとか役者さんが「海外でブレイクするために、まずは英語勉強します」みたいなシーンがあると思うんですが、実はNetflix経由では言葉の壁は関係ないかもしれない、という可能性が見えてくるわけです。

 実際、すでにアニメの世界は、Netflixから世界市場を直接ターゲットにしている事例が複数出てきているようです。

参考:Netflixは日本アニメで「世界市場」を攻める

 もちろん、今回のこんまりさんは、あくまで渡米したことがNetflixの番組作りに繋がっていますから、日本在住のまま、全く英語を勉強せずに世界でブレイクしたわけではありません。

 ただ、今回のような成功事例があるということは、日本のコンテンツがNetflixの世界市場でブレイクする可能性も見えてきます。

 カメラを止めるな!が海外でも、観衆に非常にうけているというニュースも良く眼にしていたことを考えると、実は日本の映画やドラマも、そして今回のこんまりさんのようなノウハウ動画も、まずは日本でヒットしてから世界市場に展開、という順番ではなく、最初から世界を目指すアプローチがありえる、という可能性が見えてくるわけです。

 昨年はハリウッドの映画俳優が、Netflixに「アーティストにアーティストとしていさせてくれてありがとう」と感謝したという逸話が話題になりましたが、日本の俳優やコンテンツ制作者が同様の謝辞を述べる日が来るのはそう遠くないのかもしれません。

参考:有料動画作品、米で高評価 高い質生む環境 広がるか

 Netflixが日本でサービス開始する際には「黒船襲来」というキーワードが、メディア業界のそこら中で使われていた印象がありますが。

 実は、映画やドラマ、アニメや番組を作る人にとって、Netflixは「敵」としての黒船ではなく、鎖国状態の日本のコンテンツを世界につなげてくれた、コンテンツ制作者の「味方」としての新しい黒船として歴史に名を残す可能性がある気がしてきます。