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浅田真央引退報道で考える中田英寿引退後10年の変化

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
浅田真央選手はどんな思いで、最後の演技を終えたのでしょうか。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

浅田真央選手の引退発表が大きなニュースとなっています。

引退発表の瞬間はYahooのニュースアプリも当然のように通知してきましたし、テレビもネットも浅田真央選手関連の記事で一色ですから、いかに浅田真央選手が日本で愛されている選手だったか良く分かります。

私個人も、バンクーバーやソチでの浅田真央選手の演技をハラハラしながら見守っていた一人でもありますし、ついつい怖い物知らずの絶好調だったトリノ五輪に浅田真央選手がもし出れていたら、と考えてしまう一人でもありますので、語りたいことはたくさんあるのですが。

ただ、この記事では浅田真央選手の引退そのものというよりも、引退発表の仕方について考えてみたいと思います。

今回の浅田真央選手の引退発表は、自分のブログに「ご報告を致します。」という1本の記事を投稿する形での発表となりました。

浅田 真央オフィシャルウェブサイト | ご報告致します。

このブログが22時51分に公開されると、この発表は瞬く間に日本中をかけめぐることになります。

この出来事をみて、私と同世代の方が思い出すのが、きっと日本サッカー代表の中田ヒデこと中田英寿選手の引退発表ではないでしょうか。

中田英寿選手が引退を発表したのは、2006年7月3日。

もう10年以上前の出来事になります。

6月にドイツW杯が終了したばかりで、選手としてはまだまだ日本代表の中心選手だった中田選手の突然の引退発表は、日本中に「なぜ?」という疑問を残すことになりました。

特に当時物議をよんだのが、中田選手が引退コメントをネット上だけに公開して、マスメディアに対する引退会見を行わなかったこと。

当時は今よりもさらにネットメディアと既存メディアの間の溝が深い時代でしたから、大手マスメディアからは自分達が国民を代表して中田選手の引退コメントを取れないという事態に困惑し、中田選手の引退発表の仕方を厳しく非難する記者も多かったと聞いています。

画像

(昨年開催されたadtech東京に登壇した中田氏は、現在はサッカーと同じスタンスで日本酒の啓発活動に取り組んでいると話していた。写真adtech事務局

参考:中田英寿氏がネット活用指南 世界見据えよ

そしてあれから10年以上の時が流れ、2017年4月10日。

浅田選手も同様にブログでの引退発表を先行する形になりましたが、興味深いのは、今回は大手新聞社が軒並み当然のように浅田選手のブログコメント全文を転載している点です。

参考:浅田真央引退へ「フィギュア人生悔いなし」~ブログ全文 読売新聞

参考:「全日本終えて、目標が消えた」 浅田真央ブログ全文:朝日新聞デジタル

参考:フィギュア:浅田真央さん引退 ブログ全文 - 毎日新聞

参考:浅田真央 引退ブログ全文「自分の気力もなくなりました」 産経ニュース

参考:浅田の引退発表ブログ全文:時事ドットコム

参考:浅田真央選手 引退表明 ブログ全文 | NHKニュース

中田選手の引退コメントについても、サイトが高負荷でアクセスが止まってしまいがちだったこともあり、一部のメディアが全文転載をしていたように記憶していますが。

参考:中田英寿、“引退メッセージ”全文 - ライブドアニュース

(中田選手の引退メッセージについては、今はライブドアニュースの履歴が残っているだけのようです。)

さすがに、ここまで足並み揃ってなかったですよね。

今回は、まるで新聞業界にブログ記事を全文転載しないといけないルールでもあるかのよう。

まぁ、実際記者発表会がないとコメント取れないですから新しく記事を作りづらいという事情はあるんだと思います。

その関係で、朝日新聞さんが昔作った3年前に作ったサイトがバズっていると言うから、面白いです。

参考:浅田真央 ラストダンス - 朝日新聞デジタル

ちなみに、時系列の履歴を見る限り、ブログが22時51分のタイムスタンプなのに対して、Yahooニュースの日刊スポーツの記事は22時55分に公開されていますし、FNNビデオのサイトに至っては22時52分に第一報を投稿していますから、事前なり公開と同時に一部のメディアには告知がされていた可能性はたかそうです。

さすがに1分とか3分で記事か公開できないですよね。できるのかな・・・

(※タイムスタンプは編集可能ですが、ツイッターの履歴を見る限りあってそうです。)

発表のタイミングも新聞の締め切りとか、テレビ局各社のニュース番組の放映時間とか考えると絶妙ですし。

そういう意味で各社の全文転載も既定路線なのかもしれませんし、実際には引退会見は開くみたいですので、それも踏まえて既存メディアからはネット先行公開に対して、今回は非難が聞こえないということなのかもしれませんが。

それにしても10年前の中田選手の時と比べると、この大手メディアのブログコメント全文転載そろい踏みは、隔世の感が強いです。

丁度先週、中川淳一郎さんが「テレビが「バカにしていた」ネットに頼る皮肉」  という記事で、「かつてのマスメディア人は、「ネットはあくまでもオタクが集う場所であり、世間に顔出しできぬ臆病者が傷をなめ合ったり、匿名で立場ある者を罵倒したりする異常空間である」ととらえていたフシがある。」けど、最近はネット頼みになってるテレビ人や新聞・雑誌の記者が増えているのではないかという趣旨の話を書いてましたが。

確かに、中田ヒデ引退発表後のこの10年で、こうした有名人に関するニュースに関しては、完全に主導権はメディアから有名人自身に移っているように感じる今日この頃です。

ただ、新聞系ネットメディアがこれまた判をついたように、元ネタの浅田真央選手のブログにリンクをしていなかったり、というのを見ると、ちょっとモヤモヤしてしまったり(新聞紙面との関係かもしれませんが)、この時代の変化の企業にとっての意味という意味では、丁度今日話題になっていたユナイテッド航空の炎上騒動が興味深かったりするのですが、長くなりましたので今日のところはこの辺で。

浅田真央選手に様々なドキドキや感動を頂いた1ファンとして、浅田真央選手のこれからの、のびのびした活躍を見れることを楽しみにしたいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

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