Yahoo!ニュース

9月に直行便就航で話題。チューク&ジープ島はこんなところ!

寺田直子トラベルジャーナリスト 寺田直子
ダイバー憧れのジープ島。世界の絶景に選ばれた/筆者撮影

ニューギニア航空が2018年9月1日から現在、週2便で運航している成田~パプアニューギニア・ポートモレスビー線をミクロネシア連邦チューク経由にすると発表した(認可申請中)。これにより成田~チュークの直行便が誕生することになった。

チュークの国際空港。なんとものどかで実に素朴だ/筆者撮影
チュークの国際空港。なんとものどかで実に素朴だ/筆者撮影

ミクロネシア連邦はヤップ州、チューク州、ポンペイ州、コスラエ州の4州からなる。チューク州はかつてトラック諸島と呼ばれていた世界最大径のサンゴ礁でできた島々からなり、太平洋戦争終結後、米軍の占領が始まるまでは日本が統治していた歴史を持つ。戦後、国連の太平洋信託統治領として米国の統治が始まり、1979年に連邦として独立を果たしている。今回、成田から直行便が就航するのはチューク州都ウエノ島にある国際空港。現在日本からはグアム経由でチュークに行くのが一般的なのでアクセスが大幅に向上する。ただ、行きのフライトのチューク到着が03:25着ととんでもない時間帯なので前日からホテルの部屋をおさえておくなど対策が必要だ。

フライトスケジュールは以下の予定となっている。

※認可申請中で変更の可能性あり。

<成田発 水・土曜運航>

PX057 成田:21時35分発/チューク03時25分着(翌日) チューク04時25分発(翌日)/ポートモレスビー07時25分着 

<ポートモレスビー発 水・土曜運航>

PX056 ポートモレスビー12時35分発/チューク15時35分着 チューク16時35分発/成田20時25分着

圧倒的な透明感を持つサンゴ礁の海は息をのむほどの美しさ。地球の丸さも実感/筆者撮影
圧倒的な透明感を持つサンゴ礁の海は息をのむほどの美しさ。地球の丸さも実感/筆者撮影

チュークといえばなんといってもダイバーズパラダイスと言われる海中の美しさが挙げられる。ペパーミントブルーの海の驚くほどの透明度、サンゴ礁の多様さなどに加え戦時中に沈んだ船が点在しダイバーには沈船スポットとして知られる。また、運が良ければ野生のイルカと遭遇、ドルフィンスイムを体験することもできる。

島一周わずか1分ほど!日本人が運営するジープ島/筆者撮影
島一周わずか1分ほど!日本人が運営するジープ島/筆者撮影

そしてチュークを一躍有名にしたのがジープ島。空港のあるウエノ島から専用ボートで約40分。某テレビ番組「世界絶景100選」で1位になったこともある小島はサンゴででき、数本のヤシの木と宿泊用コテージがあるだけ。筆者は昨年夏、毎年通うベテランダイバーの友人に誘われて3泊滞在。ほかでは味わえないユニークな体験となった。

奥の小屋はシャワー室とトイレ。シャワーは雨水利用、トイレは手で流す水洗式/筆者撮影
奥の小屋はシャワー室とトイレ。シャワーは雨水利用、トイレは手で流す水洗式/筆者撮影

ジープ島のすごいところは電気も水道もインターネットもないところ(夕食時の数時間のみ発電機により灯りがつき充電ができる)。シャワー、飲用水(煮沸されている)は大きなタンクに貯めた雨水を使用。二つある宿泊コテージもエアコンなし。まるでロビンソンクルーソーのような生活だ。食事は3食、宿泊料金に含まれ管理人夫婦が手がける。朝は目玉焼きに食パン、夜はBBQなどといたってアメリカンな食事が基本だがリクエストすれば近海で採れた大きなロブスターを夕食に食べることもできる。ジープ通の我が友人は日本から調味料、日本食、お菓子などさまざまなものを持参。ビールも大量にウエノ島から運んだ。

宿泊は2棟の簡易なコテージにマットレスを敷いて寝る雑魚寝スタイル(友人はキャンプ用のマットレスも持ってくるという周到さ)。我々は10人ほどのグループで借りきったので男女別々で使用した。こんなワイルドな時間がジープ島スタンダード。ネットなし、温水なしプライバシーあまりなし、といった特異な環境なのでそれが苦手だと滞在は少々、厳しいかもしれない。

朝焼けで目覚め、星空の下で眠るジープ島の贅沢。デジタルデトックスにも最適/筆者撮影
朝焼けで目覚め、星空の下で眠るジープ島の贅沢。デジタルデトックスにも最適/筆者撮影

しかし、そんな環境だからこそ体験できるドラマチックな感動はかけがえのないものだ。筆者が一番印象に残ったのがビーチぎわにデイベッドを置き星空の下で眠ること。2日目には真夜中にスコールが降ってきて寝ぼけたままコテージに避難するというハプニングもあったがそれもまた記憶に残る思い出。潮風と波の音に包まれ、頭上に広がる星空を眺めながら眠りにつくことの贅沢さは一生忘れないだろう。

空港のあるウエノ島がチューク州都。日本統治時代、春島と呼ばれていた/筆者撮影
空港のあるウエノ島がチューク州都。日本統治時代、春島と呼ばれていた/筆者撮影
小さな魚市場では巨大なロブスターを売っていた/筆者撮影
小さな魚市場では巨大なロブスターを売っていた/筆者撮影
ウエノ島にあるブルーラグーンリゾート。窓の外はオーシャンビュー。室内はシンプル/筆者撮影
ウエノ島にあるブルーラグーンリゾート。窓の外はオーシャンビュー。室内はシンプル/筆者撮影

空港があるウエノ島はとても素朴だ。空港から市場のある西海岸沿いが島の中心エリア。とはいえスーパーマーケット、銀行、小さなホテルなどが点在するのみ。島の生活風景に触れるのが最大の観光かもしれない。宿泊はダイバー客が主体の簡素なゲストハウス、ホテルが数件あるのみ。我々が滞在したのはジープ島のオーナーが運営するブルーラグーンリゾート。正直なところかなり老朽しているがそれでもウエノ島では最もリゾートらしい雰囲気を持つ。やっぱりホテルがいいという場合、ここに滞在して日帰りでジープ島に遊びに行くことも可能だ。

愛らしい姿の教会。ちょうどミサの最中だったので内部撮影は控えた/筆者撮影
愛らしい姿の教会。ちょうどミサの最中だったので内部撮影は控えた/筆者撮影
市場の近くには日本人が建てた慰霊碑がある/筆者撮影
市場の近くには日本人が建てた慰霊碑がある/筆者撮影

ウエノ島には日本軍が使用した地下壕など戦時中の遺構なども数多く残っている。西海岸沿いにあるのは慰霊碑。沖合の海に多くの沈船がいまも眠っていることを思い平和に感謝しつつ手をあわせる。なお、公共施設以外の私有地に立ち入る際は入場料を求められることもあるので島内見学をする際は確認してほしい。

初代代表シノブ・M・ポールさんをたたえて名づけられたShinobu M. Poll Memorial Center/筆者撮影
初代代表シノブ・M・ポールさんをたたえて名づけられたShinobu M. Poll Memorial Center/筆者撮影
施設内では女性たちが手づくりの品を作成中。技術を身につけ自立向上をうながす/筆者撮影
施設内では女性たちが手づくりの品を作成中。技術を身につけ自立向上をうながす/筆者撮影
愛らしい貝殻を使ったピアスを購入/筆者撮影
愛らしい貝殻を使ったピアスを購入/筆者撮影

「おみやげが買いたい」。そんな我々のリクエストにホテルの現地スタッフが連れていってくれたのがShinobu M. Poll Memorial Center。日本政府によって建てられチューク女性評議会によって運営される地元女性たちの社会的地位の向上、自立をうながすプログラム、ワークショップなどを行う活動拠点。日本からJICAの職員も派遣されている。ここで女性たちの手作りのアクセサリーやオーナメントなどを販売・収益を還元。チュークの思い出と社会貢献を兼ねた品が見つかるだろう。

チュークの空港ではグランドスタッフ全員が手をふって見送ってくれた/筆者撮影
チュークの空港ではグランドスタッフ全員が手をふって見送ってくれた/筆者撮影

今回、直行便就航によって日本からチュークを訪問するダイバー、ノンダイバーは増えることだろう。ハワイやグアムのような完成されたリゾートデスティネーションではないのでホテルや交通機関、サービスなどインフラの整備がまだまだとぼしいのが現状。だが、それゆえにほかにはない素朴さと手つかずのダイナミックな大自然、海の美しさを満喫できるのがチュークの醍醐味だといえる。

※参考サイト

ミクロネシア連邦政府観光局

トラベルジャーナリスト 寺田直子

観光は究極の六次産業であり、また災害・テロなどのリカバリーに欠かせない「平和産業」でもあります。トラベルジャーナリストとして旅歴35年。旅することの意義を柔らかく、ときにストレートに発信。アフターコロナ、インバウンド、民泊など日本を取り巻く観光産業も様変わりする中、最新のリゾート&ホテル情報から地方の観光活性化への気づき、人生を変えうる感動の旅など国内外の旅行事情を独自の視点で発信。著書に『ホテルブランド物語』(角川書店)『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)、『フランスの美しい村を歩く』(東海教育研究所)など。

寺田直子の最近の記事