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「新邸が豪華」「佳子さま別居」「悠仁さま東大?」と続く秋篠宮叩きにみる「差別された特権階級」の悲哀

坂東太郎十文字学園女子大学非常勤講師
働く28歳女性が1人暮らしするのがおかしいか(写真:Motoo Naka/アフロ)

 バッシングは主に週刊誌や女性誌が展開中。「女性自身」は天皇ご一家(上皇・上皇后・今上天皇・雅子皇后・愛子さま)に極めて好意的な半面で秋篠宮ご一家に対しては「心配だ」との観点と断りつつ否定的な内容を展開しています。

 「女性セブン」もまた秋篠宮さまと紀子妃との仲やご一家の不協和音を「心配」し、それは両陛下も同じと時折ほのめかすとの書きぶり。最大の理由は次代の天皇になる悠仁さまを巡って。「週刊女性」も同じようです。

 事実関係を整理したら多くがおそらく誤認。にもかかわらず一定の説得力を持つのは庶民感覚とかけ離れているのとの底意がうかがえます。でも皇族は「身分制度の飛び地」でハナから庶民ではない。「差別された特権階級」というジレンマにも触れていきます。

東宮御所→旧官舎→旧秩父宮邸と「お下がり」暮らし

 最初に「豪華すぎる」と批判を浴びる秋篠宮邸の増改築。金額云々はさておき、なぜこうした結果に至ったかを時系列で追ってみます。

 大原則は以下の2つです。

1)天皇は「御所」に住む

2)皇太子は「東宮御所」に住む。東宮とは皇太子を指す

 秋篠宮さまは1965年生まれ。称号は礼宮(あやのみや)。89年までは昭和天皇であったので、父である皇太子(現在の上皇さま)とともに東宮御所で暮らしました。

 90年に紀子さまと結婚。ほぼ同時に「秋篠宮」号を授かって秋篠宮家を創設。新婚生活は前年に死去した鷹司和子さんが住んでいた赤坂御用地内の旧宮内省官舎。和子さんは昭和天皇の娘で、名門鷹司家に嫁ぐも早くに夫を亡くして子もなく不遇をかこっていたのを父君が案じて身近へ引き取った経緯があります。

 いわば公務員宿舎でスタートした秋篠宮家も翌年に眞子さま、94年に佳子さまとお二人の内親王が誕生し明らかに手狭となったところ、妃の死去で空き家となった旧秩父宮邸を改修した「秋篠宮邸」へ97年に引っ越したのです。どちらかといえば質素な「お下がり」暮らし。

「皇嗣殿下」が移るべき邸宅は上皇さまがお住まい

 2016年、父である平成の天皇が退位の意向を示したのにともない法改正がなされて19年5月から兄である皇太子の即位が決まり、当然、東宮御所から御所へ移るも、ここで難問が2つ。皇室典範が想定していなかった上皇さまのお住まい「皇太子がいない」問題。

 前者は上皇さまが皇太子時代に住み慣れた東宮御所に引っ越すと決まりました。東宮=皇太子だから御所名も「仙洞御所」と変更されたのです。

 「皇太子がいない」問題は皇室典範が「皇嗣たる皇子」と定めるため生じます。今上天皇に「皇子」(男子)はいません。秋篠宮さまは皇位継承順位こそ1位ながら皇子でなく「皇弟」。ゆえに立場が皇太子と同等である「皇嗣殿下」へと格上げされたのです。

 形式上は皇太子≒皇嗣殿下だから住まいも本来は東宮御所(改名が必要としても)へ移るのが原則。ところがそこには上皇さまがお住まい

改修が必要な理由と仮住まい

 といって単なる(失礼!)宮家と次期天皇たる皇嗣殿下では地位も役割も桁違いに大きくなるため現在の邸宅のままでは要人や訪問客の接遇など公務部分が圧倒的に足りません。いわば公邸はあっても官邸がないといった具合。さらに次代の天皇である悠仁さまの養育も重大事。皇嗣家となって倍以上に増えた職員の居場所も工面しなくてはならず。

 そこで秋篠宮邸を新築に近い程度に大改修すると決まり、この間は当然、ご一家はどこかへ仮住まいします。それが19年にできた「御仮寓所」で鉄筋コンクリート造り3階建てで約10億円の工費でした。本体の工事は22年に終了。延べ面積は以前の倍ほどに広がり、総工費は約30億円。

未来の東宮御所となり得る場所として高いか

 主な批判として改修と御仮寓所の工費計40億円が高すぎるというもの。でも計画はコソコソ決めていません。予算書に書かれて国会で承認されているのです。

 純粋に高すぎるという批判であればあっていい。国民主権ですから。ただ先述した経緯を踏まえての議論でしょうか。

 理屈だけで申せば上皇さまが退位なさらなければ秋篠宮家は今でも「単なる宮家」で済んでいました。また退位後の居住先を旧東宮御所にしなければ(例えば吹上大宮御所など)立皇嗣後に秋篠宮ご一家がそこへ移ればいいだけの話でもあったのです。つまり悪いのは上皇さまだ! という批判を筆者は寡聞にして知りませんし、私自身そうとも思わない

 でも、だとしたら秋篠宮家の改築のみが的になるのが解せません。やはり少なからぬ国民に宮家への疑念があるのでしょう。源泉はおそらく眞子さまの件かと。

 継承順に皇位が移ったとしたら次の天皇は秋篠宮さまで即位とほぼ同時に御所へ引っ越し悠仁さまはその瞬間に「皇嗣たる皇子」となるので皇太子。つまり改修後の秋篠宮邸がそのまま東宮御所になる可能性大です。それでも40億円は高すぎるのかという反論がなされないのは新天皇の即位が前天皇の薨去と一致するので畏れ多いからなのかもしれません。

「28歳の働く女性の1人暮らし」とハッキリ説明しない訳

 「高すぎる」批判の余波で、せっかく大改装したのに佳子さまが旧御仮寓所に残って「1人暮らし」する件もしばしば取り上げられています。この件について宮内庁は今年6月になって記者会見で概略以下のように説明。

 旧御仮寓所には元から私室機能があって、その一部を佳子さまが引き続き住む変更がなされた。理由は秋篠宮邸改修の経費節減。(まだ結婚前であった小室眞子さんを含む)家族5人の部屋を新秋篠宮邸に作ると費用が増える。そこでご家族で相談した結果として佳子さまの部屋を作らない代わりに旧御仮寓所に引き続き住む計画変更をした、と。

 まあこれを聞いて黙っていたら記者失格。当然、計画を変更した時期や改修終了後半年以上経ってこんな発表をする訳は何だとか、そもそも削減額はいくらなのかと5W1Hを質問します。案の定、宮内庁は答えられずモヤモヤが募るばかり。

 ハッキリと佳子さまも28歳。公務もこなしている今は親元から離れたいと思ってもおかしくないでしょといえない理由は何でしょうか。うわさされる親子不仲説や結婚間近説を恐れたのか。だとしたら大いなる逆効果。経費=税金を減らすためやむを得ずそうしたが削減額を「発表するつもりはない」(宮内庁)ではなかなか理解は得られないでしょう。

 無理筋でかわそうという狙いは佳子さまが皇族ゆえ。普通の感覚で「そりゃあ28にもなれば1人暮らししたいよね」が通じない。いわば「差別された特権階級」です。

せめて大学ぐらい好きなところへ行かせて差し上げればいい

 「秋篠宮家不信」が悠仁さまにも及びつつあるのも憂慮されます。女性誌のタイトルも

「悠仁さま 改修後のお部屋は異例の広さに…17歳当時の天皇陛下を上回るレベルか」

「悠仁さま 同世代との懇談で懸念された“無表情”ぶり…側近退任説まで浮上する秋篠宮家の混迷」

「悠仁さま、紀子さま悲願の史上初“東大卒の天皇陛下”に暗雲!」

などなど。別に部屋が広いぐらい構うまいし時には「無表情」にもなるでしょう。座視できないのは東大進学について。筆者は以前に「推薦で東大進学を目指す」に関して「考えにくい」との記事を発表しました。ただ、それはそれとして悠仁さまが東大に進んではいけないのでしょうか。

 日本国憲法は「天皇」を象徴と定めて一般国民と区別しています。いわば「身分制度の飛び地」。ネットスラングを模すならば正真正銘の上級国民。例えば推薦入試の志望理由書に「将来天皇になるために貴学の学びが不可欠」と記されて却下できる大学などどこにもないはずです。

 現行の皇室典範に則れば、悠仁さまは次世代の天皇候補となります。生まれながら象徴になる宿命とはいかばかりか。せめて大学ぐらい好きなところへ行かせて差し上げればいい。それもダメとしたらまさに「差別された特権階級」そのものです。

十文字学園女子大学非常勤講師

十文字学園女子大学非常勤講師。毎日新聞記者などを経て現在、日本ニュース時事能力検定協会監事などを務める。近著に『政治のしくみがイチからわかる本』『国際関係の基本がイチから分かる本』(いずれも日本実業出版社刊)など。

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