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天皇陛下即位、令和元年から1年。過去の元号の2年目は?

坂東太郎十文字学園女子大学非常勤講師
あれから1年(写真:長田洋平/アフロ)

 早いもので天皇陛下が即位されて本日から2年目を迎えます。平成の天皇が生前に退位しての即位であったため奉祝一色だった「令和」のスタートも2年目は思いもかけぬ疫病のまん延で重苦しいものとなりました。

 天皇お1人に1つの元号を定める「一世一元」は明治から制度化されました。そこで今回は明治以降の元号の「2年目」に何があったかを紹介します。

明治の2年目(1869年10月23日~)

 明治は少々ややこしく今の西暦(グレゴリオ暦)に換算すると1868年10月23日がスタート。旧暦慶応4年9月8日に相当します。さらに「明治元年」は慶応4年1月1日からともされているのです。つまり慶応最後の4年は「慶応でも明治でもある」と。ここでは1868年10月23日を起点といたします。

 何しろ長きにわたる徳川幕藩体制が終わって新政府が始まったばかりなので2年目も大きな話題がてんこ盛りです。

 新政は発足以来、重度の金欠に陥っていました。幕藩体制解体と財政安定のため実行された版籍奉還(明治の1年目)は中途半端で、さらなる中央集権案を練っていたのがこの時期です。後に廃藩置県として結実しました。

 倒幕の名目が「王政復古」だったのにからんで、新政府は祭政一致の古制を理想に神道を保護する政策を進めていきます。神仏分離令発布や神祇官を重視などです。1870年には大教宣布の詔が出されて国家意識の高揚を図ったものの当初のイメージ通りに国家神道は定着しませんでした。

 世界史的な大事件は1870年7月に勃発した普仏戦争。勝者プロイセンはドイツ統一を成し遂げました。ビスマルク首相は後に伊藤博文らに大きな影響を与えます。

大正の2年目(1913年7月30日~)

 東洋・西洋で大きな変動が生じ、今後の日本と深い関わりが生じた出来事が相次ぎました。まず東からです。弱体化していた清(中国)を共和制にしようとする運動が成功(辛亥革命)し、1912年に中華民国が成立しました。日本が承認したのが13年です。

 西では14年6月28日に発生したサラエボ事件を発端に第一次世界大戦が勃発したのです。日本はイギリスやフランスら連合国に与し、ドイツらと戦う側に回りました。なお大戦後期に発生したのが今日のコロナ禍でしばしば例示されるスペイン風邪です。

昭和の2年目(1927年12月25日~)

 民主主義的話題と後の大戦を予感させる出来事が混在しています。

 前者の代表が28年2月20日に行われた衆議院議員総選挙です。この時から「男子25歳以上」すべてが財産制限なしで選挙権を持つ普通選挙となりました。25年の加藤高明内閣で法案が可決成立しての第1回です。

 加藤内閣は普選に先立って、共産主義勢力の伸張を抑止する治安維持法も成立させていました。同法に基づき共産主義者らを大量検挙したのが同年の三・一五事件。この摘発は取り締まり側から不十分であったと総括され、4月に最高刑を死刑とする法改正がなされたのです。

 対外的な大変事は28年6月4日に発生した張作霖爆殺事件。満州(中国東北部)への支配権強化を目指す関東軍は当初、軍閥の張と協調関係のあったものの次第に不和となり、関東軍が守備する南満州鉄道(満鉄)に張が乗車中、奉天郊外で爆殺されたのです。関東軍の河本大作大佐らの陰謀でした。

 関東軍は関東州=遼東半島南端の日本の租借地の行政に当たる関東庁から陸軍部が独立してできた部隊で満鉄や租借地の守備を任務とするも次第に大陸進出の先鋒となっていきました。

 事件を知って昭和天皇は激怒。時の田中義一内閣総辞職につながる一方、河本は予備役(OB)編入という軽い処分で済まされ、後の満州事変など「関東軍独走」の種火となりました。

 医学・生理学上の功績としては28年、フレミングが世界初の抗生物質である「ペニシリン」を発見しています。

平成の2年目(1990年1月8日~)

 前年末、日経平均株価が38,957円の史上最高値を記録しました。いわゆる「バブル景気」絶頂期です。翌年から暴落に転じ、日本銀行の引き締め策もあって崩壊への道を転がり落ちていったのが90年全般の傾向です。

 国際的にも大きな変動が。89年のマルタ会談で米ソ冷戦が終結したのはよかったのですが、以後、ソ連を盟主に仰いだ東側陣営が急速に弱体化。その象徴的な出来事が90年10月3日の東西ドイツ再統一といえましょう。

 冷戦という大きな対立構造が崩れるなか、封じ込められていた地域対立も顕在化してきます。同年8月2日、イラクが隣国クウェートへと侵攻。翌年1月からの湾岸戦争へと発展するのです。

 改元は一義的に「日本の天皇が代替わりした」以上の意味を持ちません。したがって2年目に起きた出来事を比較しても単なる偶然の域を出ないのは当然ながら奇妙な符丁に興味をそそがれないわけでもないから不思議です。

 いずれも日本自ら起こした事件も含めて世界史を揺るがした出来事が発生しています。普仏戦争、サラエボ事件、張作霖爆殺事件、東西ドイツ統一、クウェート侵攻など。国内の政治(普選実施)や経済(バブル景気)なども見逃せません。

 すでに令和2年は「新型コロナウイルス大流行」という世界的な事象が進行中です。できればこれ以上に暗い、特に人為的に防げる惨事は起きてほしくないですね。

十文字学園女子大学非常勤講師

十文字学園女子大学非常勤講師。毎日新聞記者などを経て現在、日本ニュース時事能力検定協会監事などを務める。近著に『政治のしくみがイチからわかる本』『国際関係の基本がイチから分かる本』(いずれも日本実業出版社刊)など。

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