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PS5 Pro(仮)強化タイトルには「PS5 Pro Enhanced」付き?ただし強化は限定的かも

多根清史アニメライター/ゲームライター
(写真:ロイター/アフロ)

ソニーが中世代ゲーム機、つまり次世代機(PS6)までの強化型PS5こと「PS5 Pro」を開発していることは、あくまで噂レベルに留まっていました。

が、先日「内部文書」と称してPS5 Proの仕様を紹介した動画が「著作権の申し立てがあったため」として削除。ということは……あとはご想像にお任せします。

さておきPS5 Proの仕様や発売時期は、ゲーム業界のインサイダー情報に詳しいTom Henderson氏が「確認した」として次のようにまとめています。ちなみに同氏は、光学ドライブ着脱式の新型PS5が2023年秋に登場することを的中させていました

  • レンダリングはPS5より45%高速
  • レイトレーシング性能は2~3倍(場合によっては4倍)
  • 33.5TFLOPS(TFLOPS=1秒間に1兆回の浮動小数点演算を処理できる能力)
  • ソニー独自開発の超解像技術PSSR(PlayStation Spectral Super Resolution Upscaling)を実現
  • 将来的には最大8Kの解像度に対応
  • カスタム機械学習アーキテクチャ
  • AIアクセラレータ、300 TOPSの8ビット計算/67 TFLOPSの16ビット浮動小数点をサポート
  • 開発キットは2023年9月からファーストパーティ(ソニー傘下)スタジオ、2024年1月からサードパーティスタジオ、2024年春から最終製品と同じテストキットも提供
  • 暫定的にはホリデーシーズン(年末年始の商戦期)発売を目指すが、変更される可能性もあり

PS5は10.28TFLOPSであり、33.5TFLOPSはその3倍以上。これらカタログスペックを見ればスゴい性能にも思えますが、実際にはどこまでゲーム表現や体験が強化されるのか? ザックリまとめれば「かなり限られている」との情報が次々と届いています。

PS5 Pro強化タイトルには「PS5 Pro Enhanced」ラベルが付く?

まずTom Henderson氏は、PS5 Proで強化されるタイトルには「PS5 Pro Enhanced」のラベルが付与されるとの資料を入手したと報告

このラベルは、かつてPS4 Pro発売後に導入された「PS4 Pro Enhanced」にちなんでいる模様。当時、ソニーは「PS4 Proで映像表現が強化されている」ものと定義し、通常モデルより「映像ディティール視覚効果の強化やフレームレートの安定ないし向上」していると説明していました

具体的に何が、どう良くなるのか。以下の条件のどれか1つを満たせば、「PS5 Pro Enhanced」ラベルを付けられるかもしれないそうです。

  • 通常モデルで固定リフレッシュレートで動くゲームの解像度を向上
  • 通常モデルで可変リフレッシュレート(VRR)で動く解像度を向上
  • 通常モデルで固定リフレッシュレートで動くゲームのフレームレートを向上
  • レイトレーシング効果の追加

繰り返すと「すべて」ではなく「どれか1つ」です。「PS4 Pro Enhanced」も「~や」「ないし」などぼやかした表現をしていましたが、その延長上にあるというわけです。

PS5 Proは「開発者に優しいハード」の可能性

さらに『The Elder Scrolls』シリーズ等を手がけたベテラン開発者は、AMD(PS5やXboxにチップ供給)関連のリーク情報を扱うYouTubeチャンネル「Moore’s Law is Dead」に出演。そこでPS5 Proにコメントし、通常モデルよりはるかに強力なゲームが実現することはないとの趣旨を述べています。

これはPS5 Proのパワフルな性能を否定しているのではなく、タイミング的な問題のため。

1つには、すでにPS5標準モデル用に開発中のゲームは予算が組まれているため、予定よりはるかに高いスペックに底上げするわけにはいかないこと。

たとえばオープンワールドゲーム『ARK 2』は配信を延期する理由の1つとしてゲームエンジン「Unreal Engine 5」に対応する必要を挙げていましたが、ましてゲームのハードウェアが途中で大きく変わっても付いていく余裕がない、ということでしょう。

また、真の次世代機である「PS6」につき、ソニーがゲーム開発者と話し合っている可能性が高いこと。ここ最近の大作ゲーム開発は数年がかりが当たり前となり、PS6・次世代Xboxともに発売が予想される2028年以降といえども遠い将来ではありません。

つまり最も普及台数が多い現世代ハードと、次の主流となる次世代ハード向け開発で手いっぱいであり、どれほど台数が出るか分からない中世代機に大きなリソースを割いてる場合ではないのでしょう。

また、ベテラン開発者は「ソニーがPS3時代と比べて、現在では非常にゲーム開発者に優しくなった」とコメント。PS3はどれほど厳しかったのか気になるところです。

本題は、PS5 Proが開発者が拡張機能を実装する上で、簡単でコストの掛からない方法を提供するよう設計されているとの主張です。

また超解像技術(低解像度でシステムに負荷を掛けず描画しておき、見かけの解像度やフレームレートを機械学習で底上げする)のPSSRも同様に設計されており、特定のハードウェアに合わせて調整され、ソニーがAPIの変更を完全に制御できるため、AMD FSRよりもはるかに簡単に実装できるとのこと。

AMD FSRとは、PCゲームやXbox用ゲームで利用可能な超解像技術のこと。逆にいえば、様々なグラフィックカードやハードウェアに対応する必要があるため、事細かな調整が難しい。が、ソニー独自開発のPSSRならばソニー製のハードだけ対応していれば十分で、小回りが利きやすいというわけです。

以上をまとめると、PS5 Proはかなりの性能を持つものの、ゲーム開発企業のコスト的に「これまで重かったPS5ゲームが高解像度でサクサク動くようになります」程度に留まらざるを得ないようです。

ともあれ、PS5 Proの価格は「新型PS5+光学ドライブ」程度との予想もあります。そのぐらいならPS5の買い換えとしてもちょうど良く、また無印PS5も同時に値下げする可能性もありそうです。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

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