外国にルーツを持つ子どもたちの貧困―今、子どもの貧困問題関係者に知ってほしいこと

その施策やプロジェクト、日本語がわからない人たちに届きますか?(写真:アフロ)

日本に暮らす子ども達の16%以上が貧困状態にあるといわれる現在。

両親または保護者のどちらかが外国出身者である外国にルーツを持つ子どもたちが、実際にどの程度の割合「貧困」にあるかという具体的な実態調査はほとんど行われていませんが、今回は、いくつか外国にルーツを持つ子どもやその家族の経済的な状況を推測するためのヒントとなるデータをご紹介します。

単純に言葉の課題だけに留まらない外国にルーツを持つ子どもの直面する困難。

日本語がわからないこと、母語を失いやすいこと、教育機会自体が不足していることや孤立感を深めやすいことに加え、経済的な側面でもリスクを抱えやすい存在であることが、データから見えてきます。

失業と非正規での就業を繰り返す外国人保護者も

2010年度国勢調査より、国籍別の完全失業率
2010年度国勢調査より、国籍別の完全失業率

2010年度国勢調査を元に、外国にルーツを持つ方々について多方面からの考察を行っている研究論文によると、日本の完全失業者が労働力人口に占める失業者比率は6.5%であるのに対し、韓国・朝鮮籍11.3%、中国籍6.5%、フィリピン国籍9%、タイ国籍9.6%、ブラジル国籍9.7%、ペルー国籍11.2%に上っています。

特に、子育て世代と言える20代後半~50代の失業率は10%前後に上る国籍もあり、経済的に厳しい状況に置かれている点は、現場から見えてくる実態に即しています。失業と非正規での就業を繰り返す外国人保護者もおり、その子ども達の生活環境は不安定にならざるを得ません。

私が現場で出会ったある生徒の家庭は、エスニックレストランで働いていた保護者が突然失業することになり、公立の高校への進学を考えていた子どもが、進学をあきらめて働くかどうかというところまで追いつめられたことがあります。結局、長くかからないうちに保護者に新たな働き口が見つかり、働く必要はなくなりましたが、受験の直前に他県へ引っ越すことになり入試制度の違いから大きな負担がかかりました。

ひとり親家庭率、フィリピン・タイにルーツを持つ家庭は日本人の2倍に

国籍別の母子世帯率ではフィリピン、タイ出身女性のひとり親率が高い
国籍別の母子世帯率ではフィリピン、タイ出身女性のひとり親率が高い

また、同じく2010年国勢調査にみる同論文シリーズから、外国にルーツを持つ母子親家庭の割合を国籍別に見て行くと、日本人母を持つ子どものひとり親家庭率は5.5%ある一方、フィリピン人母を持つ子どものひとり親率が11.6%、続いてタイが11.3%と、日本人シングルマザーを持つお子さんの2倍以上。その他の国籍と比べても高いことがわかります。

同1995年と2000年の国勢調査では、フィリピン人母子世帯率は2%未満だったそうですが、2005年の時点で9.6%まで跳ね上がり、2010年の調査では11.6%へ。フィリピンにルーツを持つお子さんのひとり親家庭率は右肩上がりであることがわかります。

父子家庭率も日本人0.6%と比較し、フィリピン0.9、タイ1.1など、保護者の国籍によっては日本人家庭よりも高いことがわかりました。

ひとり親家庭の一般的な困難に加え、日本語の壁が必要な情報を遮断する

ひとり親家庭が、親も子もそうでない家庭と比べると困窮しやすく、また教育などの面でもハンデを負いやすいことは近年、よく知られるところとなりました。外国にルーツを持つひとり親家庭の親子の場合、このひとり親家庭の困難に加え、外国人であることや日本語の壁などが加わり、さらに困難の度合いを極めることは珍しくありません。

差別や偏見、言葉の壁や情報格差などがある中で、外国人女性がシングルペアレントとして就業することは難しく、下のグラフに見るように、外国籍の世帯主を持ち生活保護を受給する家庭の中で、総世帯数に占める「母子」需給の割合は、日本国籍世帯が7%であるのに対し、アメリカ国籍世帯以外は軒並み倍以上となり、フィリピン国籍の母子世帯では70%を超えています。

日本に暮らす、外国人母子家庭の貧困状況が深刻
日本に暮らす、外国人母子家庭の貧困状況が深刻

日本人母子世帯の親御さんが踏ん張っている、という側面もあるかと思いますが、やはり日本語を母語としないシングルマザーが生計を立てられるほどの職業に就くことの難しさが現れている、という面が強いのではないかと見ています。

子ども達への影響は

貧困・困窮あるいは十分な収入のない、不安定な状況は、外国にルーツを持つ子ども達に様々な影響を与えています。エアコンがない、勉強机がない、制服や学用品をそろえる資金がない等の状況に加え、夜間に働く保護者に代わって幼い兄弟の世話をする為に、学校から足が遠のいたりすることもあります。高校進学をあきらめ、働いて家族を支えようとする子どもも。

日本人の貧困にある子どもたちも同じような困難に直面しますが、外国にルーツを持つ子どもの場合は、保護者(や本人)が日本語がわからず必要な支援や情報へのアクセスが閉ざされていたり、学校の先生や福祉関係者とのコミュニケーションが取れないなどの難しさも加わります。

このような保護者世代の貧困・困窮の影響は、より大きな波となって次世代に継承されようとしています。50%~60%と言われる高校進学率、現場では18%に上る高校中退率。大学進学率は日本人の半数にも届きません。

外国人保護者と同じように不安定な雇用環境に組み込まれたり、未婚のまま10代で出産する外国にルーツを持つ子ども・若者も、現場では珍しくなく、今、この悪循環を絶たなくてはならないという危機感を感じています。

「貧困」について考えるとき、忘れないでほしい―外国にルーツを持つ子どもや家庭の存在

現在、日本社会における格差や母子家庭・子どもの貧困に対する関心が高まり、市民団体やNPOによるプロジェクトだけでなく、自治体による各種の支援なども広がりを見せています。

一方で、そのプロジェクトや施策の対象者として、日本語を母語としない家庭や子どもたちの存在が当初から定められているケースはあまり多くはありません。プロジェクトを行ってみて、自治体で学習支援を行ってみて初めて、外国にルーツを持つ子どもやその保護者がつながった、という場合がほとんどかもしれません。

しかし、先にも述べたように外国にルーツを持つ家庭や子どもたちの貧困は、言葉の壁により支援情報へアクセスすることが難しい、という、一歩手前の困難を抱えているケースも少なくなく、支援にたどり着いたこと自体が「幸運」となってしまっている状況です。

外国にルーツを持つ子どもやその家庭を支援している自治体や支援団体の絶対数は少なく、地域的にも偏りが見られ、全国に暮らすこうした子どもや家庭に対して、「彼らのためだけの特別な貧困対策」を展開することは現実的ではありません。自治体の関係者や民間支援団体関係者の方々には当初からプロジェクトやその施策の内部に「日本語を母語としない対象者」の存在を見据え、アウトリーチ(発見)段階からの配慮を求めたいと思います。

*この記事は、個人ブログに掲載した複数の記事に最新データや加筆を行い統合したものです。