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18歳選挙権なら実現していた「大阪都構想」。若者が投票すれば社会が変わる初の選挙となるか!

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事
(写真:アフロ)

初となる18歳からの大阪都構想の是非を問う住民投票

明日11月1日、大阪市は大阪都構想の是非を問う住民投票を行う。

是非、大阪市の皆さん、とくに若い皆さんには投票に行ってもらいたいと思う。

なぜなら「若者が投票すれば社会が変わる初の選挙」となる可能性があるからだ!

初めて18歳からの投票が可能となる大阪都構想の是非を問う住民投票、是非、参加してもらいたいと思う。

僅差0.8Pで否決した2015年の大阪都構想は世代間の争いだった

大阪都構想の是非を問う住民投票は今回が2度目となる。

1度目は5年前。2015年当時の橋下徹 大阪市長が行なった住民投票は、賛成49.6%、反対50.4%と、0.8ポイントの僅差で否決された。

住民投票の結果を受け、橋下徹市長(当時)は政界引退を表明することになったわけだが、賛成票と反対票の差はわずか1万741票だった。

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出典: 「大阪都」5年前は僅差で否決 データで見る住民投票(日本経済新聞)

当時の住民投票の結果は、世代間の争いだったなどと報道された。

開票結果をデータで見ると、20代・30代の若者の比率が高い区では都構想への賛成が多くなっている一方で、20代・30代の若者の比率が低い区では都構想への反対が多かったからだ。

さらに言えば、20代・30代の割合が高い区ほど賛成率が高くなるという結果だった。

20代・30代の投票率がもう少し高ければ、「若者が社会を変えた初の選挙」になっていた

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出典: 「大阪都」5年前は僅差で否決 データで見る住民投票(日本経済新聞)

都構想への賛否にはそれぞれメリットとデメリットがあり、その判断はもちろんそれぞれであるし、必ずしも世代で決める必要もない。

そのことは前提とした上で、この住民投票には残念なことがいくつもあった。

その1つが若者の低投票率だ。

2015年の投票率を年代別に見ると、20代が低く70代まで世代が上がるごとに投票率が上がる。

このグラフの形は、決してこの住民投票だけに見られるものではなく、国政選挙を初めとした多くの選挙で見られる傾向ではある。

ただ、20代だけで棄権票は15万票。

有権者数で見ると、20代・30代で計62万8298人、一方で60代・70代が61万4933人と、ほぼ同数であり、むしろ若者の方が多かった。

それが、投票率の違いから投票数では若者と高齢者の差は14万票以上となった。

この際の選挙は、賛成票と反対票の差は前述したようにわずか1万741票。

「若い人たちが投票に行っていれば・・・」と感じざるを得ない選挙となった。

18歳選挙権なら5年前に実現していた「大阪都構想」

さらに残念だったのが、18歳からの投票にできなかったことだ。

2015年と言えば、6月に「18歳選挙権」を実現する公職選挙法の改正が成立した年でもある。

筆者は、学生時代にNPO法人Rights(代表理事:高橋亮平)を立ち上げ、2000年から選挙権・被選挙権年齢の引き下げや政治教育の充実から若者の政治参加の促進を求めてきた。

この「18歳選挙権」実現に向けて働きかけてきた第一人者として、なぜ、この「世代間の争い」とも言われる結果となった大阪都構想の是非を問う住民投票を18歳から参加できるものにできなかったのだろうかという後悔がある。

10代の投票傾向が、20代・30代と同じ傾向だったかは分からないが、世代の争いとも言われる構造の中で、仮に18歳から投票に参加できる住民投票が実現できていたとするならば、5年前の時点で大阪都構想が実現できていた可能性は高い。

日本で初めて、国でなく住民が統治構造を決める選挙には、全国の方が注目

今回の大阪都構想の是非を問う住民投票は、東京への一極集中が進む中での地方創生や地方自治の今後のあり方に一石を投じることにもなる可能性がある。

2000年に施行されたいわゆる地方分権一括法により、地方の自主裁量を高め、国の管理を少なくすることで、国と地方の関係を見直し、地方分権改革を進めていくこととされた。

その後の平成の大合併による市町村合併においては、その実施についての住民投票が行われた事例も多いが、合併の方向性については国からの提案であり、自治体からの提案を受けて平成の大合併となったものではない。

今回、住民投票となる大阪都構想は、大阪市を廃止し、4つの特別区を作るという、自治体からの提案によって、統治構造を住民に判断してもらうおうというものであり、極めて珍しい住民投票であると言える。

賛成派は、その目的を大阪府と大阪市による二重行政の解消と、その事による経費削減、経済効果は1兆円を超えるといい、一方、反対派は、特別区と一部事務組合へと移管されることでむしろ三重行政になるなど、経費はさらにかさむなどとの指摘をする。

賛否については、是非、それぞれのメリットとデメリットを検討した上で判断してもらえればと思うが、大阪都構想は、停滞していた地方分権改革の流れや、今後の各地域、全国の自治体のあり方を変えていくきっかけになる可能性も高い。

大阪市民に限らず、全国の多くの方々が注目している住民投票である。

是非、この貴重な機会で投票できる限られたチャンスを持った有権者として、18歳からの若者たちには投票に行ってもらいたいと思う。

「18歳からの若者の投票によって結果が変わる初めての選挙」となる可能性がある

今回の大阪都構想の是非を問う住民投票では、新たに18歳・19歳にも投票権が与えられ、有権者数は2015年の210万人から223万人へと13万人増えた。

繰り返しになるが、5年前の住民投票の賛否の差は、わずか1万741票。

その前回は、20代・30代の割合が高い区ほど賛成率が高くなることから「世代間争いの選挙」などと言われた住民投票だった。

いよいよ明日、2回目の住民投票となる、

「若者が投票すれば社会が変わる初の選挙」をめざして、是非、多くの若者達に、自分たちの街や地域の未来、さらには日本の未来のあり方を考える選挙で、貴重な一票を投じてもらいたい。

15年の活動によって、2015年に「18歳選挙権」を実現した立場として、若者の政治参加の新たな1ページとなることを期待したい。

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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