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いよいよ今月国会に「18歳選挙権実現法案」が与野党8党で提出。 抵抗勢力への最後の一押しを若者自身で

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

与野党8党で大筋合意、いよいよ「18歳選挙権法案」提出へ

先週、「18歳選挙権実現法案」が、「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」で8党が大筋合意した。いよいよ今月、臨時国会にこの8党で提案される事になる。

「18歳選挙権」に向けての議論が行われている「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」は、今年6月、通常国会の会期末に、与党自民公明はじめ野党からも集まり、8党によって立ち上げられ、9月末から始まった臨時国会でも初日から会合を行うなど、「18歳選挙権」の実現に向けての具体的な議論が積極的に進められている。

このプロジェクトは、船田元(憲法改正推進本部長)を座長に、自民党からは他にも逢沢一郎(選挙制度調査会長)・磯崎陽輔(憲法改正推進本部事務局長)、公明党から北側一雄(憲法調査会長)・大口善徳(憲法調査会事務局長)・中野洋昌(学生局長)、野党からも民主党から座長代理も担う武正公一(衆議院憲法審査会会長代理)・渡辺周(選挙制度担当)・小川淳也(総務委員会委員)、維新の党から馬場伸幸(国会対策副委員長)・浦野靖人(青年局長)・畠中光成(議院運営委員会理事)、次世代の党から江口克彦(憲法調査会会長)・西野弘一(憲法調査会事務局長)、みんなの党から水野賢一(幹事長)・三谷英弘(政策調査会憲法担当副主査)・松沢成文(政策調査会憲法担当主査)、生活の党から鈴木克昌(代表代行・幹事長)、新党改革から荒井広幸(代表)と、党の代表、幹事長、大臣経験者クラスと大物、政策通の議員達が並ぶ事からも、この「18歳選挙権」実現に向けての各党の「本気度」が皆さんにも伝わるはずだ。

私自身、大学生だった2000年5月に、この「選挙権年齢の引き下げ」を主要テーマに若者の政治参加の促進を訴えるNPO、「Rights」を友人とたった3人で立ち上げた。当時、「『大学生が法律を変えよう!』と言ったところで、本当に変わるわけはない」と言われたが、こうした活動をここまで続けてきた事で、ようやくここまで来たかと思うと感慨一入である。

「実現しない」と言われ続けてきた「18歳選挙権」についてもようやく、あと一歩のところまできた。

しかし、そうは言ってもまだまだ大きな一歩がある。まずは、法案提出、そして確実に法案成立にまで持っていけるよう、最後まで油断せずに全力で働きかけていきたいと思う。

さて、この「18歳選挙権」については、今年の通常国会で4月22日に行われた衆議院の憲法審査会では、私も参考人として呼ばれ、意見陳述と国会議員からの質問への答弁を行った。

この際に陳述や答弁した内容、先日「2016年までに『18歳選挙権』をめざすキャンペーン」である『Act18』で行った、「メディア懇談会」の際に論点としてお話しした内容など、ようやく実現が見えてくる中で、今回は、この「18歳選挙権」実現への論点を紹介しておきたいと思う。

国民投票法と、公職選挙法の選挙権年齢との関係と経緯

この8党で、「18歳選挙権」の実現をめざしている背景には、今年の通常国会で成立した「国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)」改正および、その際に結ばれた「8党合意」がある。

年齢の規定については、図表1を参照してもらいたいと思うが、2007年の「国民投票法」の成立で国民投票年齢が「18歳」と位置付けられ、2010年から施行となる。一方で、この「国民投票法」の附則で「公職選挙法」の選挙権についても「18歳」に引き下げる事が明記され、「国民投票法」上は選挙権年齢も「18歳」とされたが、「公職選挙法」は改正されることなく違法状態のまま放置された。このため、2014年に「国民投票法」が改正となり、国民投票年齢は2018年までの4年間が限定的に20歳に引き上げられた。しかし、この「国民投票法改正案」提出した8党は、提出と同時に、「8党合意」を結び、その中では、この「国民投票法改正案」成立から2年後の2016年までに「国民投票法」の選挙権年齢を「18歳」に引き下げ、さらには「国民投票法」上の国民投票年齢も同時に2016年に「18歳」に戻すことが明記されているのだ。

図表1: 「選挙権年齢」と「国民投票投票年齢」の法制上の年齢推移

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細かいところまで紹介しておくと、成立時の「国民投票法」と改正「国民投票法」、「8党合意」の関係する部分と論点は、以下の通りだ。

1)国民投票法の成立

2007年5月18日に成立した国民投票法附則には、施行日までに選挙権年齢を18歳に引き下げるよう明記されており、2010年5月18日以降は、違法状態となっていた。

<2007年成立時の国民投票法附則>

第3条 国はこの法律が施行されるまでの間に[※施行日は平成22年5月18日]、年齢満18年以上満20未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法(明治29年法律第89号)その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。

2 前項の法制上の措置を講ぜられ、年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間、第3条、第22条1項、第35条及び第36条第1項の規定の適用については、これらの規定中「満18年以上」とあるのは、「満20年以上」とする。

2)国民投票法改正

2014年6月13日に国民投票法改正案が成立。この改正案ではこれまでの法附則3条の「この法律が施行されるまでの間」が「この法律の施行後速やかに」と改められました。この事により、少なくとも法文上は、法制定後7年経過しながら法制上の措置が講じられず、さらに改正案では新たな期限が定めないという状況になった。

<改正法附則>

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 この法律の施行後4年を経過するまでの間にその期日がある国民投票(日本国憲法の改正手続に関する法律第1条に規定する国民投票をいう。)に係る同法第3条、第22条第1項、第35条及び第36条第1項の規定の適用については、これらの規定中「満18年以上」とあるのは、「満20年以上」とする。

3 国は、この法律の施行後速やかに、年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、国民投票の投票権を有する者の年齢と選挙権を有する者の年齢との均衡等を勘案し、公職選挙法(昭和25年法律第100号)、民法(明治29年法律第89号)その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。

3)8党合意

2014年4月3日、改正案提案とほぼ同時に、自民・公明・民主・維新・みんな・結い・生活・改革の8党は確認書で「選挙権年齢については、改正法施行後2年以内に18歳に引き下げることを目指し、各党間でプロジェクトチームを設置する。」と合意、さらに「また、改正法施行後4年を待たずに選挙権年齢が18歳に引き下げられた場合には、これと同時に憲法改正国民投票の投票権年齢についても18歳に引き下げる措置を講ずることとする。」とした。こうした8党合意や、衆参両院における付帯決議により、公職選挙における選挙権年齢についても、あらためて施行後2年以内に18歳への引き下げが求められる事となっている。

図表2: 18歳選挙権関連法案との関係性

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こうしたこの間の一連の中、「18歳選挙権」と共に、「18歳成人」と言われる「民法」の成年年齢の問題をはじめ、今国会でも議論となった「少年法」はじめ、年齢に関する規制については、酒、タバコ、などに至るまで、あらゆる法律との関係性について議論されてきた。

この後におよんでなお、選挙権年齢の引き下げは成年年齢の引き下げと同時にという人たちがいるが、法務省の見解としては、「公職選挙法」の改正により単独で選挙権年齢を引き下げることは可能だとされている。

こうした背景や「8党合意」を元に、与野党8党による「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」では、実現を最優先にするために、単独での「国民投票法」の改正をめざしている。

簡単に言えば、「民法改正も同時に」、「少年法改正も同時に」と関係法令や議論の対象を拡大すれば、議論がまとまることはなく、ここからまた10年は法改正が遅れることになるだろう。

各党にも未だにこうした主張をする議員もいるようだが、こうした議員の行動は、およそこの「18歳選挙権」の置かれている現状を理解していないか、または、表面的には「若者の見方」というイメージを崩さないようにしながら、実際には「18歳選挙権など絶対に実現させてはならない」と思っているかのどちらかだ。

こうした事を認識しながら、「若者の政治参加の促進」すべきと思っている方、「18歳選挙権の実現」に共感してくださる方には、お力をお貸しいただきたいと思う。

図表3: 「18歳選挙権」実現へのスケジュール

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こうした中、「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」が、今月末までの臨時国会に提出すると言っているのは、「8党合意」の約束通りに、「国民投票法改正案」施行後2年以内の2016年6月までに「18歳選挙権」を実現するための「公職選挙法」改正を行うためには、図表3を見てもらえれば分かるように、少なくとも「4」や「5」のスケジュールでは間に合わない事が分かるはずだ。また、報道でも「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」では「周知期間1年」と話しているとされているが、この事から考えれば、「3」のスケジュールもなくなる。こうした事から考えれば、年明け1月からの2015年通常国会での成立が、実現の最低条件になるわけだが、予算や重要法案が山積する状況を考えれば、通常国会だけでの提出、成立という「2」のスケジュールも厳しい。おそらく「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」で考えているスケジュールは「1」ということになるのだろうが、今臨時国会では重要法案が先送りされるなど、来年1月の通常国会で議論すべき重要法案は山積、野党が対立姿勢に転じた中での集団的自衛権などに関する問題などといった要素を考えると、このシナリオすら非常に厳しい状況にある事が分かる。

おそらく「18歳選挙権」に対する抵抗勢力は、前述の様に「少年法」、場合によっては「民法」まで議論を戻して話を拡大しながら、「時間切れ廃案」さえをも狙ってくるのではないかと心配する。

14年かけて、ようやくここまで来た。10年に1度とも言えるチャンスだ。是非このチャンスを確実なものにするために全力を尽くしてほしいと思う。

世界では「18歳選挙権」が標準であり、さらに「16歳選挙権」への流れ

18歳選挙権については、世界189ヵ国・地域のうち166と全体の87.8%で保障しているほか、G8では日本以外、OECD34ヵ国でも日本と韓国以外の全ての国が18歳としているなど、国際標準となっている。

それどころか、さらに欧州各国では、18歳から16歳への選挙権引き下げへの動きが広がっている。オーストリアでは、国政・地方選挙で選挙権年齢を16歳に引き下げており、ドイツ・スイス・ノルウェーでは、特定の州・市町村選挙で選挙権年齢を16歳に引き下げられている。また、英国・スウェーデン・デンマークでは、選挙権年齢の16歳への引き下げを議論といった動きが起こっているほか、先日のスコットランドの独立に関する住民投票においても、16歳から投票が行われた事は記憶にも新しい。

また、16・17歳に投票権が保障されるドイツ・オーストリア・ノルウェーでは、16・17歳の投票率が、18・19歳の投票率を、また、10代の投票率が20代前半のそれを上回る傾向が見られる。一例として紹介すれば、2011年のドイツ・ブレーメン州議会選挙では16~20歳の投票率が48.6%で、21~25歳の39.8%を大幅に上回っている。こうした背景には、親との同居率や学校教育等があるとの研究結果もあり、日本においても、大学生になると親元を離れる学生も多い事を考えると、親元にいる間に、また高校における主権者(憲法)教育との関係性を持った形で選挙権を保障する事には、むしろ現状以上に大きな価値があると考えられる。

成長戦略としての若者の参画を

安倍政権においても、成長戦略としてダイバーシティ(多様性)が必要とし、女性や若者の活用という事が言われているが、経済における若者の活用と同様に、成長戦略として政治的分野においても若者人材の活用が求められる。こうした力を引き出すためにも、社会参加・政治参加の仕組みを整える一環として位置づけることが重要である。

こうした若者の政治参加による成長戦略や地域活性化については、2013年9月に、自治体ごとに市長選挙・市議会議員選挙における選挙権・被選挙権年齢の引き下げ等を可能にすることで、若者人材の流動化を図るという『政治参加を通じた地域活性化に係る特区提案』を提案した。この提案は、国家戦略特区ワーキンググループによる提案に関するヒアリングでも高い評価を得て、大臣の所まで上がり議論されたと聞いている。

こうした問題も含め、さらに若者の政治参加の促進をめざしていくべきであり、選挙権年齢の引き下げは、その中の重要な要素であるの認識している。

<参考>国家戦略特区「若者の政治参加を通じた地域活性化に係る特区提案」

万年野党(政策監視会議)田原総一朗、磯山友幸、高橋亮平

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/13-mannenyato.pdf

「若者自身がこの国の法律を変える」そんな瞬間をぜひ当事者である若者に共有してもらいたい

先週も、高校生・大学生たちに話をしたが、おそらくこの国では初めてとなる、「若者が求めた法改正が実際に法律を変える」という瞬間を迎えることになる。

是非、この瞬間を当事者として、なんらかの形で関わって体験してもらいたいと思う。

こうした中、おそらく法案提出の前後という絶好のタイミングで、今週11月12日(水)の夕方に、衆議院第二議員会館で、「8党合意」の各党国会議員をパネリストに、Act18 第2回国会シンポジウム『18歳選挙権を実現させる国会議員シンポジウム』を行う。

こうした場に、高校生・大学生が集まり、あと一歩のところまで来た「18歳選挙権」を逃すことなく、実現へ導いてもらいたい。

「若者よ、国会へ集まれ!」

Act18 第2回国会シンポジウム『18歳選挙権を実現させる国会議員シンポジウム』

【開催主旨】

2014年通常国会で「憲法改正のための国民投票の手続きに関する法改正案」が成立し、選挙権年齢の18歳への引き下げについても、付帯決議では、「選挙権を有する者の年齢については、民法で定める成年年齢に先行してこの法律の施行後2年以内を目途に、年齢満18年以上の者が国政選挙等に参加することができることとなるよう、必要な法制上の措置を講ずること。」とされました。法案と同時に結ばれた「8党合意による確認書」では、2年以内の「18歳選挙権」を目指し、プロジェクトチームを立ち上げるとされており、現在、「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム(座長:船田元 衆議院議員)」の中で検討され、今国会に、この「18歳選挙権」実現のための公職選挙法改正案が提出される方向で進められている所です。

こうした中、2016年参議院選挙から「18歳選挙権」が確実に実施される事をめざし、政策課題が山積する通常国会で、公職選挙法改正案が成立するのか、また、欧州の若者参画政策や政治教育の先進事例の報告を元に、「18歳選挙権」実現後の日本の若者を取り巻く課題とその解決策について考えます。

【日時】2014年11月12日(水)午後5時半から午後7時半

【場所】衆議院第二議員会館1F多目的会議室(定員140名)

【参加者】高校生・大学生はじめ、一般

【内容】

第1部 海外の先進事例から日本のこれからの若者参画を考える

ドイツ先進事例報告 ※選挙権年齢の問題、その他、政治教育・若者の参画等

原田謙介 NPO法人Youth Create代表理事

小串聡彦 NPO法人Rights副代表理事

第2部 国会議員シンポジウム

船田 元 衆議院議員(自民党)

・選挙権年齢に関するプロジェクトチーム座長・自民党憲法改正推進本部長

北側一雄 衆議院議員(公明党)

・選挙権年齢に関するプロジェクトチーム・公明党憲法調査会長

渡辺 周 衆議院議員(民主党)・選挙権年齢に関するプロジェクトチーム

・民主党選挙制度担当

馬場伸幸 衆議院議員(維新の党)

・選挙権年齢に関するプロジェクトチーム・維新の党国会対策副委員長

西野弘一 衆議院議員(次世代の党)

・選挙権年齢に関するプロジェクトチーム・次世代の党憲法調査会事務局長

水野賢一 参議院議員(みんなの党)

・選挙権年齢に関するプロジェクトチーム・みんなの党幹事長

ほか(8党国会議員)

【当日タイムライン予定】

17:30〜17:35 開会

17:35〜18:20 第一部 海外の先進事例報告

18:20〜19:20 第二部 パネルディスカッション

19:20〜19:30 閉会

【主催】「ACT18」実行委員会

【共催】Teen’s Rights Movement、高校生未来会議、NPO法人Rights

【参加申込】

氏名・年齢・所属・ご連絡先などを明記の上、表題に「11/12【Act18】18歳選挙権を実現させる国会シンポジウム申込」とお書きの上、以下までお申し込みください。

act.eighteen@gmail.com

シンポジウムについて詳しくは、Act18ホームページ

高橋亮平

twitter: @ryohey7654

facebook: /ryohey7654

NPO法人Rights代表理事

中央大学特任准教授

NPO法人 万年野党 事務局長

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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