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バイデン政権と中東(4)

高橋和夫国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

もう一つ、このピサールの交友関係に言及しておきましょう。ピサールはレナード・バーンスタインというウエストサイド物語を書いた作曲家と非常に親しかったのです。バーンスタインが交響曲をいくつか書いていますが「3番」というのがあります。「カディッシュ」というユダヤ教の挽歌というのかな。亡くなった方を悼む曲があります。それは朗読と音楽を一緒にやるという曲なのですが、それの「朗読部分をお前、書いてくれ」と、ピサールはバーンスタインに頼まれました。ただ「バーンスタインの素晴らしい音楽に合うような文は、私には書けない、私は、もともと英語のネイティブではないから」と、いったんは断ります。ですがバーンスタインが亡くなった後、気持ちが変わって、「カディッシュ」に祈りの言葉を書いています。ただその祈りの言葉が非常に厳しくて、神様を叱りつけています。アウシュヴィッツというこの世の地獄があって、ダンテの地獄よりも酷いことが起こっていて、罪もない人たちが焼かれていった時、貴方はどこにいたんだ、貴方はなぜ助けに来なかったんだ。私は許さない、貴方を。そう神様を??りつける。最後は祈るのですが、凄まじい詩を書かれています。そういう義理のお父さんの話を子どもの時にずっと聞きながら育ったとブリンケンは言っています。私もユダヤ人の本をいっぱい読んでいるから、アウシュヴィッツに行くと、何か懐かしいような不思議な気持ちがしました。もう、ここは来たことがある。良く知っているという。不思議な感覚がしました。

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国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

国際情勢をわかる言葉で、まず自分自身に語りたいと思っています。北九州で生まれ育ち、大阪とニューヨークで勉強し、クウェートでの滞在経験もあります。アメリカで中東を研究した日本人という三つの視点を大切にしています。映像メディアに深い不信感を抱きながらも、放送大学ではテレビで講義をするという矛盾した存在です。及ばないながらも努力を続け、その過程を読者の皆様と共有できればと希求しています。

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