『イスラム国』ISをめぐる情勢と日本の対応
結論から申し上げれば、「イスラム国」の勢いは、ピークを過ぎた。しかしながら、まだまだ警戒が必要である。ここでは「イスラム国」にはISとして言及しよう。軍事面で見れば、シリア北部のコバニというクルド人の都市をめぐってクルド人とISの間で昨年末から激しい攻防戦が行われた。ISはコバニの攻略を目指し、その一部を一時的に占領した。しかしクルド人の激しい抵抗に遭遇した。そしてイラク北部のクルディスターン自治政府の民兵組織ペシュメルガが、地元のクルド人勢力の側に立って戦闘に参加した。ペシュメルガとはクルド人の言葉で「死に向かう者」を意味している。さらにアメリカを中心とする有志連合諸国も上空からクルド人を支援した。結果としてISはコバニ市内から一掃された。そして多くの犠牲を出したISは、同市の攻略を断念し撤退した。ISの最初の大きな軍事的な敗北であった。そして3月末に、昨年からISの支配下にあったイラク中部の都市ティクリートを、イラク中央政府軍が奪還した。防衛していたISの部隊は全滅した。コバニとティクリートでの連敗により、IS不敗の神話は崩れ去った。さらに同じ3月に有志連合側の空爆で、ISの指導者でカリフ(イスラムの預言者ムハンマドの後継者)を自称するアブーバクル・アルバグダーディが重傷を負ったとの報道があった。経済面でもISは大きな打撃を受けている。ISの主要な財源は石油の密輸出とされているが、有志連合の爆撃によるIS支配下の石油関連施設の破壊が続いている。
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