「ボコ・ハラム」の背景・・・支援組織は?急拡大した理由は?

ボコ・ハラムは、2002年にナイジェリア東北部でイスラム教の説教師モハマッド・ヨセフが始めた運動である。ナイジェリア政府の打倒と自らが信じるイスラム体制の樹立を目指している。「ボコ」は現地の言葉のハウサ語で「偽りの」を意味している。「ハラム」はアラビア語で「禁止」を意味している。つまり偽りの教育への反対という意味である。ということはイスラムの教えに反した教育に反対というわけで、西欧式の教育に反対という意味になる。

こうした運動の起こった背景には、ナイジェリア北部の貧しさがある。産油国で豊かなハズであるが、腐敗が激しく、石油収入は一部の人々しかうるおしていない。イスラム教徒の多い北部では不満が渦巻いている。これは、アフガニスタン南部やパキスタン北部の貧しい地域でターリバンの運動が起こったのを想起させる。事実ボコ・ハラムは、アフリカのターリバンとも呼ばれている。

ボコ・ハラムの武力闘争を受けて、2009年にナイジェリア軍が、その本部を制圧し、指導者のモハマッド・ヨセフを拘束した。そしてヨセフは拘束中に死亡した。政府は、勝利を宣言して問題は解決したと発表したが。問題は解決しなかった。

その後、新しい指導者のアブバカル・シェカウに率いられてボコ・ハラムが武装闘争を再開したからである。既に2千名以上の死者が出ている。アブバカルはアラビア語のアブバクルの現地訛りであろう。アブバクルは、スンニー派の解釈であればイスラム教の預言者ムハンマドの最初のカリフ(後継者)であった。ボコ・ハラムも創設者がモハマッド(ムハンマド)であり、その最初のカリフということでアブバカルという名前を二代目の指導者が名乗っているのだろうか。

昨年5月には地方都市で軍営、警察署、政府関連の建物などをボコ・ハラムは200名ほどの規模の部隊を動員して一斉に攻撃した。しかも機関銃を装備した装甲車両まで使用した。この攻撃で数十名が死亡し、刑務所内の収監されていた百名以上が逃亡した。

都市部ではオートバイからの攻撃で知られていたボコ・ハラムであるが、この時は装甲車両まで利用して政府軍を圧倒した。ボコ・ハラムの武装闘争が、より組織的に大規模になっている。これは、北アフリカのアルカーイダ系の組織からの支援を疑わせる。2011年の「アラブの春」でリビアのカダフィ政権が倒れて以来、大量の兵器が闇市場に流通しているのも、ボコ・ハラムの兵器の大型化の背景にあるだろう。

この攻撃に対してナイジェリア軍がボコ・ハラムの活動地域で反撃を行った。大規模な作戦が行われ二百名が死亡し、また数千軒の家屋が破壊された。ナイジェリア軍は、住民がボコ・ハラムのメンバーをかくまっていたと主張した。しかしナイジェリア軍の攻撃が無差別であったとの国際的な非難を受けた。以降ボコ・ハラムとナイジェリア軍の間で繰り返される暴力の連鎖のパターンの始まりであった。

テロ攻撃主体だったのが、なぜ誘拐をしたのか?

ボコ・ハラムが若い女性の誘拐を組織的に始めたのは、昨年の5月であった。政府が同組織のメンバーの妻子を拘束したのに対抗しての動きであった。その後に誘拐が続発するようになった。そして今年つまり2014年4月14日に女子寮が襲われ二百名以上の女生徒が誘拐される事件が発生した。

今年に入ってからは、この事件の前にも25人が誘拐される事件があった。また、この事件の後にも8人が誘拐されている。ボコ・ハラムの活動で目立つのは、若い女性の誘拐と学校の襲撃である。2013年からだけでも学校の襲撃は7件に達している。

被害者の少女たちが隣国で武装組織に嫁として1200円で売られたという情報があるが、ナイジェリア国内の人身売買市場値は12万円とも15万円とも言われている中で信憑性は?

確認はできないが、恐らくボコ・ハラムの兵士に対して誘拐された女性の一部が「妻」として少額あるいは無料で「与えられた」可能性はあるだろう。そして残りの女性たちは、資金調達のために高額で「売られる」だろう。

この点も推測だが、政府側が拘束しているボコ・ハラム関係者がいれば、その釈放を求める交換の駒として利用してくるかも知れない。であるとすれば、近い内に交渉を求める新たな声明があるだろう。

アメリカが救援に乗り出す方向ですがこれまでアメリカとは距離を置いてきたナイジェリア政府がなぜアメリカを容認したのか?

少女たちの誘拐が起こってからすでに3週間がたっており、しかも解放のメドは見えない。内外でナイジェリア政府は激しい批判にさらされており、やむなくアメリカの支援を受け入れた。

アメリカを第一の敵と声明で語ったボコ・ハラムを相手にアメリカが乗り出すことで今後のナイジェリアがイラクやアフガンのようになるのか?(北部イスラムVS南部キリストの構図?チャドやカメルーンを巻き込んで内戦状態になる可能性は?)

まず指摘すべきは、ナイジェリアは既にボコ・ハラムと政府の内戦状態にある。ボコ・ハラムは、キリスト教との共存を主張する穏健なイスラムの指導者をもテロに対象にしており、少なくとも現段階では「イスラム教」対「キリスト教」という構図ではない。

アフガンやイラクのようになるかどうかは、アメリカ軍の介入の程度によるだろう。アメリカ政府の発表では、送られるのは、誘拐犯との交渉や解放された人質の心理ケアの専門家などを含む少数のチームである。であるならば、介入という言葉は、不適切であろう。もちろん、これは煙幕で実際は救出作戦の特殊部隊を派遣するのかも知れない。

いずれにしろアメリカの世論は大規模な軍事介入には否定的である。となると今後はナイジェリア軍の対ゲリラ戦の訓練、そしてハイテク兵器の供与などをアメリカは行うだろう。

ナイジェリア軍とボコ・ハラムの戦いは長期戦となるだろう。既に10年以上も戦っているのだが。もし追い詰められればボコ・ハラムは国境を越えて周辺諸国を聖域(避難先)として使うだろう。周辺諸国は、いずれも国境地帯を掌握しているわけではないので、ナイジェリア内戦が周辺諸国も巻き込む事態が想定される。

アフリカの人身売買事情について(経路、受入国、目的など)

アフリカにおいて人身売買の犠牲者が一番多いのがソマリアである。国内の混乱を逃れようとする人々が、甘い言葉にだまされて出獄して奴隷状態に置かれるケースが多い。行く先は多様だが、比較的に豊かな南アフリカそしてヨーロッパなどである。同じように南北スーダン、エリトリア、エチオピアなど貧しさと内戦の組み合わせが、難民を生む。その中に人身売買の罠にはまる人々が多く出る。性的な搾取、奴隷的な労働、少年兵などの道が待っている。

ナイジェリアの場合は、サハラ砂漠を越えてモロッコなどの北アフリカの海岸に達して、船でヨーロッパに渡ろうとする例が報告されている。しかし、沈没などの事故も少なくない。