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【パリ】ラグビーW杯抽選会に見るコロナ禍のフランスの今

鈴木春恵パリ在住ジャーナリスト
RUGBY WORLD CUP FRANCE 2023公式サイトから(以下同)

12月14日月曜日、フランス時間12時30分(日本時間20時30分)、2023年ラグビーワールドカップフランス大会の組み合わせ抽選会が、エマニュエル・マクロン大統領も出席して、パリの旧証券取引所にて行われました。

抽選結果は、すでに日本のさまざまなメディアで報道されていると思いますので、そちらをご覧いただくとして、この記事では、「フランスの今」が象徴されていた抽選会のメンバーについて触れたいと思います。

文化の国を象徴する抽選会

抽選人として選ばれたのは、さまざまな分野、しかも特にアーティスティックな分野で活躍する6人のフランス人でした。

まず初めに登壇したのはジャン・デュジャルダンさん。開催国フランスがどのグループに入るかを選ぶくじを引いた彼は、映画「アーティスト」で、フランス人初のアカデミー賞主演男優賞を獲得した俳優です。この方、いまはちょっとニヒルな顔もできる大スターですけれど、かつては、テレビコメディーシリーズで男女のやりとりをおもしろおかしく演じていた、ちょっとお笑い芸人さんに通じるような面もある俳優さんで、当時はお茶の間の人気者というようなイメージでした。それから芸域を広げ、大出世してアカデミー賞俳優ですから、フランス人にとっては好感度抜群な人選といえるでしょう。

続く5人はといいいますと、まずは建築家のジャン=ミシェル・ヴィルモットさん。全国の名だたる高級ホテルやレストランなどの設計をしている方で、建築、インテリア界の第一人者です。

次は、『空から見た地球』という写真集で世界的に有名になった写真家ヤン・アルチュス=ベルトランさん。いまは地球環境活動家としても積極的にメディアに出ていて、そういったテーマでドキュメンタリー映画なども撮っています。

次は靴のデザイナー、クリスチャン・ルブタンさん。真っ赤な靴底がトレードマークの高級靴のブランド創設者です。

そしてパリ・オペラ座のダンサー、アリス・ルナヴァンさん。2013年からエトワール、つまりオペラ座バレエ団の最高位にあるバレリーナです。6人のなかでは彼女が唯一の女性でしたが、この方が日本のくじを引きました。

抽選会で引かれた「日本」。今回のくじのボールをはじめ舞台の什器は、環境意識を反映してか木が多く使われていた
抽選会で引かれた「日本」。今回のくじのボールをはじめ舞台の什器は、環境意識を反映してか木が多く使われていた

「日本」のボールをひいたオペラ座のエトワールダンサー、アリス・ルナヴァンさん
「日本」のボールをひいたオペラ座のエトワールダンサー、アリス・ルナヴァンさん

そして、大トリは世界ナンバーワンレストランに何度も選出され、ミシュラン三つ星を長年キープし続けているシェフのギィ・サヴォアさん。最強4チームのボールが入ったくじを引く役目です。そこで彼が最初に引いたのがニュージーランドと書かれたボール。つまりこれがプールA、フランスと同じグループにニュージーランドが入ってくるとうとこで、ギィ・サヴォアさん自身、ボールに書かれている文字を手元で確認したとき、思わず「ワオ」 と声がでていました。

日本では、イングランドとアルゼンチンのグループに入ったというのが話題になっていると思いますが、フランスのこの夜のニュースでは、フランスがニュージーランドと同じグループということに話題集中。どこの国も自国の命運に一喜一憂、というところでしょうか…。

さて、この抽選会をあらためて振り返って筆者が思うのは、コロナ禍でもっとも打撃を受けている分野の代表が登壇した、ということ。もちろん、そもそもフランスは文化的な国とう自負がありますから、そういったカラーで抽選会を演出するのは意外なことではありません。けれども、依然として閉まったままの劇場、それらの象徴的な存在であるオペラ座のエトワール、そして少なくとも1月20日まで再開の見込みがないレストラン業界の重鎮が大トリのくじを引いた、2020年という年を反映した抽選会、といえるのではないかと思います。

パリ在住ジャーナリスト

出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめヨーロッパの風土、文化、暮らしをテーマに取材し、雑誌、インターネットメディアのほか、Youtubeチャンネル ( Paris Promenade)でも紹介している。

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