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Vaundyの気持ちよさ、マカえんの楽しさ、米津玄師の艶っぽさに魅せられた1年(年間ベストテン)

スージー鈴木音楽評論家、ラジオDJ、小説家
(写真:アフロ)

 東京スポーツ紙の連載「スージー鈴木のオジサンに贈るヒット曲講座」連動し、この1年「月刊レコード大賞」という企画を続けてきた音楽評論家のスージー鈴木です。ここでは今年の連載総まとめとして、同紙にて発表した年間ベストテンを、動画を加えて、あらためて発表します。

10位:宇多田ヒカル『Gold ~また逢う日まで~』

 私たちは、宇多田ヒカルが40歳となった日本を生きている。あの天才少女が今、西新宿に飛翔するMVに深く感じ入った。

9位:Mrs. GREEN APPLE『ケセラセラ』

 溢れ出る音楽的アイデアはまさにクイーンのよう。乱暴に言えば、Jポップの一定割合はつまるところクイーンだと思う。

8位:ちゃんみな『命日』

 新しい学校のリーダーズ『オトナブルー』同様の「昭和40年代後半歌謡」。爆発的なMVで加点。

7位:星野源『生命体』

 今年屈指の気持ちいいグルーヴ。個人的にはPSY・S(サイズ)を想起した。今年の紅白でいちばん生演奏で見たい曲。

6位:NewJeans『Ditto』(編曲賞)

 薄味サウンドに驚く。抑制的なビートにコードが薄く鳴るだけ。サビでは音がさらにシンプルに。Jポップの真逆の音が韓国から。

5位:羊文学『more than words』

 スリーピースバンドがBTSの循環コード・ディスコ曲をカバーしたような新鮮な音。とにかくかっこいい。MVに映る塩塚モエカの表情は実に今年的。

4位:YOASOBI『アイドル』(話題賞)

 文句なしの話題賞。英語版も素晴らしい。今年の紅白いちばんの注目。この超難曲を生歌でどう歌いこなすか。この公式ライブ映像で予習を。

3位:米津玄師『地球儀』(歌唱賞)

 事前情報が全くない中、映画『君たちはどう生きるか』を初日初回に観て、この「声怪獣」ぶりを聴いたときの感動は一生忘れない。この艶(つや)っぽい声は、今や日本音楽シーンの宝。

2位:マカロニえんぴつ『愛の波』(アルバム賞)

 『大人の涙』をアルバム大賞に。バンド全員でワチャワチャしながら作ったであろう彼らの音は、とにかく仕掛けが多く、とにかく楽しくて、まったく飽きない。「バンド冬の時代」という向かい風にすっくと立ちはだかった4人組。

1位:Vaundy 『replica』(レコード大賞)

 音の気持ちよさの解読はこちらに。過去の音楽的遺産をリスペクトしながら(昨今の音楽シーンにいちばん足りない点)、コピー(レプリカ)ではなく、自分なりの創意工夫を詰め込みながら、それでも頭でっかちにならず、劇的に気持ちいい音作りを成し遂げた23歳は、まさに今年のシーンの最先端だった。

  • 10位:宇多田ヒカル『Gold~また逢う日まで~』/作詞・作曲:宇多田ヒカル
  • 9位:Mrs. GREEN APPLE『ケセラセラ』/作詞・作曲:大森元貴
  • 8位:ちゃんみな『命日』/作詞:ちゃんみな、作曲:ちゃんみな・Ryosuke“Dr.R”Sakai
  • 7位:星野源『生命体』/作詞・作曲:星野源
  • 6位:NewJeans『Ditto』/作詞:Ylva Dimberg,チョ・ヒュイル (The Black Skirts),OOHYO,ミンジ、作曲:250,Ylva Dimberg
  • 5位:羊文学『more than words』/作詞・作曲:塩塚モエカ
  • 4位:YOASOBI『アイドル』/作詞・作曲:Ayase
  • 3位:米津玄師『地球儀』/作詞・作曲:米津玄師
  • 2位:マカロニえんぴつ『愛の波』/作詞・作曲:はっとり
  • 1位:Vaundy 『replica』/作詞・作曲:Vaundy

音楽評論家、ラジオDJ、小説家

音楽評論家。ラジオDJ、小説家。1966年大阪府東大阪市生まれ。BS12『ザ・カセットテープ・ミュージック』、bayfm『9の音粋』月曜日に出演中。主な著書に『幸福な退職』『桑田佳祐論』(新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』(ともに彩流社)、『恋するラジオ』(ブックマン社)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。東洋経済オンライン、東京スポーツなどで連載中。2023年12月12日に新刊『中森明菜の音楽1982-1991』(辰巳出版)発売。

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