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天皇杯で次なるJ1チーム撃破へ いわきFC田村監督:「やれないことはない」

杉山孝フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

普段は都道府県リーグを戦う、Jリーグ1部(J1)から数えると7部相当のチームが、大きな注目を集めている。その快進撃は、J1を戦う清水エスパルスとの12日の天皇杯3回戦でも続くのか。いわきFCを率いる田村雄三監督に話を聞いた。

理念を示す延長戦での3得点

試合前、田村監督は「札幌さんに勝つことがジャイアントキリングではない」と伝えて選手たちを送り出したという。そのコンサドーレ札幌との天皇杯1回戦は、後半残り15分を切った76分から2点ずつを奪い合い、延長戦にもつれ込んだ。その20分弱だけでも濃密なのに、いわきFCは延長戦で3ゴールを叩き込んで、堂々国内最高カテゴリーを戦うチームを撃破した。

9日に地元いわきの商工会議所などと出した共同宣言でも、いわきFCは「このチームが目指すのは、J1入りでも、目の前の勝利でも決してありません」と、国内の他クラブとは一戦を画す理念を掲げている。例えばその一つが「日本のフィジカルスタンダードを変える」というスローガンであり、その体現が延長戦で3点を叩き込んだ札幌戦というわけだ。

札幌戦では2失点したが、その3日後の全国社会人サッカー選手権の福島予選準決勝、さらにその翌日の決勝など、ここ4試合は福島県1部リーグも含めて4試合で27得点無失点。ちなみに10-0で勝った9日のビアンコーネ福島戦は12時キックオフだったが、前日は天皇杯のキックオフに合わせて18時から2時間の練習を行っている。

9日の試合後、田村監督はこう話した。

「昨日の練習でも紅白戦をやっていますし、調整もしていません」

通常の都道府県リーグでは、いわきFCにとって歯ごたえのある相手がいないのは致し方ない。それでも、「こういう言い方をしたら相手に失礼になるかもしれませんが、こういう試合もトレーニングになるんです。暑いし、そういうきつさはあると思います。でも、ボールを奪われたら奪い返しに行けとか、相手に何もさせるなとか、フィジカル面のことを考えても、トレーニングになります」と田村監督は目指すものへの視点をぶらさずに指導を続ける。

「ストロングポイントを前面に」

一方的な試合が多いこともあってか、GKも含めて頻繁に先発メンバーが変わる。選考基準は、「天皇杯が終わって1週間、ケガでやっていなかった選手には、ボールフィーリングが悪いからちょっとやらせようとか。あるいは、天皇杯に出たけど、調子乗らせないようにやらせようかなとか(笑)。まあ、だいたい、若い選手にはプレーさせようかなと思っていますけど」。若手選手の筋肉のように、チームがどんどん“発達”している自信の表れだろう。

「うまい子を走れるようにしたいな、と思います。足元ばかりのスタンディングプレーをしてきた選手が、走れるようになったら面白い。むしろ、そのままじゃ通用しないだろう、という思いもありますし」。その育成方針の手応えを感じているのは、誰よりも選手たち自身だろう。

次なるJ1チームの撃破に向けても、おごりも過剰なたかぶりもない。

「公式戦で、またJ1のチームとできる機会です。自分たちのサッカーを変えずにやって、その結果がどうなるかは、やってみないと分かりません。仮に負けたとしても自分たちの立ち位置が分かるということだし、たぶん何も変えないでやります」

「やれないことはないと思います。ただ、もちろん、『止めて蹴る』といったサッカーとしての技量は向こうの方が上だと思います。かといって、それだけで勝敗が決まるわけではありません。うちの良いところ、ストロングポイントを前面に出しながらどういう戦いができるかなと思っています。選手には思い切りチャレンジしろと言います。ミスをしたり、1人でダメでも2人でかかれ、という話です」

試合は19時、乗り込んだ清水のホームにてキックオフとなる。燃える要素は、十分にそろっている。

フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

1975年生まれ。新聞社で少年サッカーから高校ラグビー、決勝含む日韓W杯、中村俊輔の国外挑戦までと、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を約3年務め、同サイトの日本での人気確立・発展に尽力。現在はライター・編集者・翻訳家としてサッカーとスポーツ、その周辺を追い続ける。

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