井上尚弥とのバンタム級統一戦に駒を進めるのは? ドネア対ガバリョを現地記者が予想
12月11日 ロサンジェルス
ディグニティ・ヘルス・スポーツ・センター
WBC世界バンタム級タイトル戦
王者
ノニト・ドネア(フィリピン/39歳/41勝(27KO)6敗)
12回戦
暫定王者
レイマート・ガバリョ(フィリピン/25歳/21戦全勝(18KO))
パネリスト
ダグラス・フィッシャー(リングマガジンの編集長。ロサンジェルス在住で、ビッグファイトではリングサイドの常連 Twitter : @dougiefischer )
マルコス・ビレガス(Fight Hub TVの創始者、インタヴュアー。FOXのボクシング中継で非公式ジャッジを務める Twitter @heyitsmarcosv)
ライアン・オハラ(リングマガジンのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)
ジェイソン・オタミアス(フィリピンの大手テレビ局GMAネットワークのコントリビューター、カメラマン。フィリピン出身で、現在はカリフォルニア在住。リングマガジンにも写真を寄稿する)
1. ドネア対ガバリョ戦の試合予想は?
フィッシャー : ドネアが勝つだろう。現時点でも、私はドネアこそが井上尚弥(大橋)に次ぐバンタム級No.2の選手だと認識している。彼くらいの年齢だと、“一夜にして衰える”といったことは実際に起こり得る。ただ、現在のドネアは精神的に極めて充実しているように見える。ナチュラルウェイトのバンタム級に戻り、リチャード・シェイファー・プロモーターと信頼関係を築き、妻にマネージメントを任せ、自分はボクシングに集中している。まるでボクシングに再び恋をした選手のようだ。ドネアが中盤KO勝ちを飾ると見る。
ビレガス : 良質なカウンターパンチャーのノニトにとって、積極的に前に出てくるガバリョはやりやすい相手だ。これまでのノニトはアグレッシブな選手を相手に見事なタイミングでカウンターを取り、倒してきた。ガバリョは前戦のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦でも飛び込んだところに良いパンチを浴びており、ノニトもそれに気付いているはずだ。ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)戦のようにKOするかもしれないし、ノニトのパワーに気付いたガバリョが足を使い、判定にもつれ込むかもしれない。いずれにしてもこの試合はノニトが有利だろう。
オハラ : ドネアの方がより優れたボクサーだ。4回でKO勝ちを収める。
オタミアス : 私は50/50の戦いだと思っている。序盤にどちらが良いパンチを当てるかで話は変わってくる。ハードパンチを持つフィリピン人同士の激突だから、最終ラウンド終了のゴングは聞かないはずだ。過去の失敗を受け止めた最近のドネアはより賢明に戦っているが、ガバリョも後には引かないだろう。また、当日は屋外アリーナの寒さもドネアの方に影響するかもしれない。ただ、ここで予想しなければならないなら、やはり大舞台で多くを証明してきたドネアのKO勝ちを推したい。
2. アンダードッグのガバリョが番狂わせうを起こすためにやるべきことは?
フィッシャー : ドネアに考える時間、主導権を握るスペースを与えてはいけない。ウバーリのように無鉄砲に突っ込むのではなく、ディフェンス面にも気を配りながら、ハイペースで攻めることが大事。高齢のドネアのボディを攻めることも重要になる。ガバリョがどんなトレーニングを積んできたのかはわからないが、ボディ攻めができるのであれば確実に遂行することだ。
ビレガス : ディフェンスに気をつけながら、賢明に戦う必要がある。ウバーリはディフェンスへの気配りが足りず、フックを放つ際にガードを下げていた。ガバリョはよく手数の出るアグレッシブな選手だが、闇雲に打ち込んでいくのではなく、ノニトにカウンターを放つタイミング、隙をなるべく与えないこと。それと同時に若さを生かし、運動量でノニトを上回ることが重要になる。より多くのパンチをヒットし、ジャッジの心証を良くすることが必須条件だ。
オハラ : 正直、ガバリョの勝機を見出すのは難しい。ガバリョを気の毒に思う気持ちも少しある。本来なら前戦のロドリゲス戦で敗れていたはず。そこで判定で勝ちを拾ったがために、ここで現時点では不相応なドネアとの対戦が義務付けられることになった。
オタミアス : もの静かなガバリョは多くを語るわけではなく、SNSで頻繁に発言するわけでもないが、24時間をボクシングに捧げる危険な選手だ。そんなガバリョが良い結果を出すためには、ドネアが“キラー”と呼びえる強さを発揮する序盤を乗り切ること。ドネアの強烈な左フックで致命傷を受けず、勝負を後半戦に持ち込むことができればチャンスが出てくるかもしれない。
3. 勝者は次の試合で誰と対戦すべきか?
フィッシャー : 昨夏に一度は決まった直接対決は中止という残念な結果になってしまったが、キャラクター面で対照的なカシメロとドネアの対戦は本来であれば興味深いものだった。カシメロは実績があるだけでなく、放言を好むだけに、戦前のプロモーションは盛り上がったはずだ。自由奔放なカシメロは、相手へのリスペクトを忘れない井上、ドネアのライバルとしては興味深いキャラクターだった。ポール・バトラー(イギリス)戦の中止は残念だったが、カシメロがバンタム級王座に残るのであれば、依然としてドネアとのマッチアップは見てみたい。
ビレガス : ノニトが勝ち上がったとして、カシメロと対戦すれば盛り上がるだろう。カシメロは礼儀正しい典型的なフィリピン人とは一線を画しており、キャラクターの異なるノニトとの対戦は話題になるはずだ。ただ、個人的にはやはりノニトには井上と再戦してほしい。カウンターパンチャーのノニトにとってタイプ的にやりづらいわけではないカシメロより、井上との再戦の方が面白味がある。第1戦では終盤にボディでダウンを奪われて敗れたノニトが、リマッチではどんなアジャストメントを施すのか。それを井上がどう受けて立つか。ボクシングファンの1人として、井上の真価が示されるであろう2人のリマッチに興味がある。
オハラ : カシメロが離脱した現時点で、井上対ドネアの再戦こそが理に叶うファイトだ。
オタミアス : バンタム級では誰もが井上との対戦を望んでいる。プロモーターとの衝突といった問題を抱えているカシメロよりも、ドネア対ガバリョ戦の勝者こそが井上に挑むべきだろう。ただ、ドネアと井上の再戦は第1戦と似たような内容、結果になるのではないかと感じている。それよりもフレッシュなカードを希望する。ガバリョが勝ち残った場合、井上との統一戦がより魅力のあるカードになるんじゃないかと思う。
※12月11日に予定されていたWBO世界バンタム級タイトルマッチは、王者ジョンリエル・カシメロが前日計量に現れなかったために中止。胃炎でドバイの病院に入院した主張するカシメロは、10日以内にWBOに医学的な証拠を提出しなければWBO王座を剥奪されると報道されている。
ボクシング関連記事
ゴロフキンは村田諒太戦の延期をどう受け止めたのか 長年のプロモーターが語る
「師匠の輪島功一会長はビデオを見ると怒るんです」勅使河原弘晶との一問一答