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2階級王者オスカル・バルデス直撃インタビュー「戦慄KO劇の真相と日本への思い」

杉浦大介スポーツライター
Photo By Mikey Williams/Top Rank

Sフェザー級最強と評価されたベルチェルトを完璧KO

ーー2月20日のWBC世界Sフェザー級王者ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)戦では素晴らしい内容の戦いの末、10回KO勝ちで2階級制覇を果たしました。インパクトの大きな戦いぶりでしたが、試合後の気分は?周囲の人々の反応はいかがでしたか?

オスカル・バルデス(以下、OV) : WBCの世界王者になるという夢を叶えられて本当にハッピーでした。そして、私の周囲の人々、ファンが好ファイトを楽しんでくれたことを心から嬉しく思っています。アメリカからメキシコへの国境を渡った瞬間、家族や友人、ファンがそこで待っていてくれて、祝福してくれました。

ーー戦前、ベルチェルト戦は王者優位の予想が多かったですが、蓋を開けてみればあなたの快勝でした。ファイトプラン通り、やりたいことができた試合だったんでしょうか?

OV : Sフェザー級で最強と評価され、サイズ、パワーに恵まれたベルチェルトとの対戦は私の望んでいた試合でした。この一戦が実現していなかったら、今後のキャリアの中で後悔が残ったでしょう。そんな強豪王者を相手に、よりスマートにアウトボクシングするというのがあの日のプラン。カウンターも打てていましたし、ラウンドごとにほぼやりたいことができていたと思います。

ーーキャリア最大の大舞台でも冷静に戦い抜いたということですね。

OV : 試合中にはインファイトを挑み、打ち合いたいと思ったときもあったんですが、エディ・レイノソ・トレーナーからは「ゲームプランを守れ、必要以上に打ち合うな」という指示を受けました。「足も使い、これまで毎日、ジムで練習してきたように戦え」と言われ、そうやって戦い抜いたんです。

ーーあれほど完璧に近い試合ができたことに少し驚きもあったんでしょうか?

OV : 適切な準備ができていたので、私の夢がかなったことに驚きはありませんでした。驚いたとすれば、あれほど見事なKO勝ちができたことに対してです。もちろんKOできるとは思っていましたが、あんな見事なフィニッシュを実現できるとは考えていなかったですね。

ーー先ほど、レイノソ・トレーナーからの指示の話をされていましたが、レイノソは現在、最高級に評価されるトレーナーになりました。実際に指導を受けて、素晴らしいと感じるのはどんな部分でしょう?

OV : 常にボクシングを勉強し、分析しているところです。レイノソはいつでもボクシングの試合を見て、本を読み、どの選手にどのようなスタイルがフィットするかを学び続けています。そういった蓄積があるからこそ、様々なボクサーに適切な助言ができるのだと思います。

カネロから学べること、そして日本への思い

ーーレイノソの指示を受けることで、現役最強との呼び声高いサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)とも同僚になりました。カネロからはどんな刺激を受けていますか?

OV : 私はカネロの傍で多くを学んでいます。最高のファイターになるためにカネロが何をやっているか、身をもって知ることができるのは本当に大きいですよ。「夢があるなら、同じように夢を追いかけている人々と一緒に行動しろ」という言葉がありますよね。僕も、カネロも、このスポーツで最高のファイターになりたいと願い、努力を続けています。僕もカネロの後を追いかけていくつもりです。

ーー最高のボクサーとして認められるために、これから何を成し遂げたいと考えていますか?

OV : 最高のメキシカン・ファイターの1人として認められたい、というのが私の今の願いです。それが最終目標ですが、そのためにはまず目の前のことを1つずつやっていかなければいけません。ハードワークを続け、いずれライト級まで上げて3階級制覇を狙うことも頭にあります。ただ、その時が来るまで、まずは獲得したばかりのSフェザー級王座を可能な限り防衛したいですね。

ーー次の相手として、具体的にはジャメル・ヘリング、シャクール・スティーブンソン(ともにアメリカ)の名前が挙がっています。この2人について思うことは?

OV : 2人ともすごい選手たちです。個人的な希望を言えば、まずはWBO王座を保持しているヘリングと戦いたいですね。世界王者のベルトを持っている者同士が統一戦で激突するというのは魅力的です。ヘリングにもその意思はあると思うので、ぜひ実現させたいと願っています。

ーー最後になりますが、あなたは日本人の血をひいているという話を聞いたことがあります。それは事実でしょうか?

OV : はい、私の父方の曾祖父は日本人なんです。名前はトモグチ。メキシコにわたり、そこで多くの子供を作ったというわけです(笑)。つまり、日本の血もひいた私は“メキシカン・ジャパニーズ”ということ。日本語は話せないですけどね(笑)

ーー日本を訪れたことはあるんですか?

OV : いえ、行きたいと願いながら、まだ叶っていません。今年の東京オリンピックで訪れたかったんですが、難しそうですね。でもいつか必ず行きたいと思っています。

オスカル・バルデス:30歳。メキシコ出身。ロンドン五輪出場後にプロ入りし、2016年7月、マティアス・ルエダ(アルゼンチン)とのWBO世界フェザー級王座決定戦に2回TKO勝ちを収めて王座獲得に成功。このタイトルを6度防衛後に王座返上し、2月にWBC世界Sフェザー級王者ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)に10回KO勝ちで2階級制覇を果たした。戦績は29戦全勝(23KO)。

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スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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