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「村田諒太の体調不良はわかっていた」 WBC米大陸Sウェルター級王者 パトリック・デイ(アメリカ)

杉浦大介スポーツライター
Photo By Daisuke Sugiura

WBC米大陸スーパーウェルター級王者

パトリック・デイ(アメリカ)

1992年8月9日生まれ 26歳

ニューヨーク州フリーポート出身

 身長175cmのボクサータイプ。プロ戦績は16勝(6KO)2敗1分。村田諒太(帝拳)のスパーリングパートナーとして何度も来日を果たしてきた。アメリカに戻って迎えた10月27日、過去に世界挑戦経験もあるベテラン、エルビン・アヤラ(アメリカ)に判定勝ちでWBC米大陸スーパーウェルター級タイトルの防衛に成功。近日中にビッグファイト実現を目指す。

PBCファイターとの対戦交渉は至難

ーー先月のアヤラ戦の出来をどう振り返りますか?

PD : 自分のパフォーマンスには満足しています。アヤラはタフで、普段はミドルやスーパーミドル級で戦っている選手なので僕よりサイズもありました。そんな相手に対してやるべきことをやり、パンチはほとんどもらわなかった。ボディ攻撃から相手を崩していけたことも嬉しく思っています。

ーー自身の成長が感じられたようですね。

PD : 経験を積んで、自分が向上している実感があります。前戦から試合間隔がかなり空いてしまいましたが、もっと頻繁にリングに立ちたい。そうすればもっと強くなれると信じています。

ーーボディ攻撃は確かに有効だったように見えましたが、それもプラン通りですか?

PD : アヤラは代役の対戦相手でしたが、少し変わったタイミングを持っている選手でした。パンチを打ち込むのは簡単ではありませんが、ボディを打てば標的を定めるのが容易になると感じていたんです。目論見通り、ボディが効いたあとの彼にはもう余力はなかったはずです。

ーー当初はこちらも実績のあるウィリー・ネルソン(アメリカ)との対戦が予定されていましたが、アヤラに代わりました。直前変更の影響は感じなかったですか?

PD : 影響はやはり少しありましたね。ネルソン対策を頭に置いてトレーニングを続けていたのに、ネルソンは本番1週間前に出場辞退。また新たなプランを練らなければいけなくなったのだから、フラストレーションは感じました。

ーー2018年は2戦2勝で終え、現在21位のWBCランキングでもさらに上がるでしょう。2019年はどんな年にしたいですか? 

PD : 来年の目標はトップ10に入ることです。少しでもタイトル挑戦に近づいていきたい。2019年はできれば4戦、少なくとも3戦はしたいですね。そして2020年の世界タイトル挑戦を目指していきたいです。

ーー具体的に戦いたい相手はいますか?

PD : もう誰でも構わないですよ。スーパーウェルター級には多くのプロスペクト、コンテンダーがいますが、特にアル・ヘイモン傘下の選手は誰も対戦を受けてくれません。夏の間にエリクソン・ルビン、テレル・ガウシャ、クリス・ピアーソン、ジャマンテ・クラーク(すべてアメリカ)といったところに声をかけたんですが、1人も承諾してくれませんでした。ランキング15位以内の選手なら誰でもいいので、受けてくれる選手と戦いたいですね。

村田の体調不良でキャンプ開始は延期になっていた

ーー日本でスパーリングパートナーを務めた村田選手についても少し話して下さい。先月、村田はロブ・ブラント(アメリカ)に完敗してWBA世界ミドル級王座を失いました。その試合を見て思ったことは?

PD : 村田は完調には見えませんでした。100%のコンディションではなかったと思います。相変わらずタフではありましたが、パンチをもらいすぎましたね。僕は村田が大好きなので、残念でしたし、悲しい気持ちになりました。彼のことは友人だと考えています。そんな彼があれほど打たれるのを見るのは辛いことでした。

ーー村田選手は調整段階で風邪を引いたという噂がありましたが、それについて知っていることは? 

PD : 僕は9月上旬に日本に到着したのですが、村田は病気を患っており、キャンプ開始を遅らせねばなりませんでした。だから今回の村田が完全な状態でないことは察しがついていました。

ーーこれまでスパーリングを繰り返す過程で村田選手とかなり親しくなったと思いますが、今回の挫折の後で彼は現役を続けると思いますか?

PD : それに関しては僕にはわかりません。ブラントとの再戦はあるでしょうが、引退の可能性もあるかもしれませんね。なぜなら、日本ではすでにスーパースターで、他のことをする機会はあるでしょうし、いずれにしても彼には幸福な未来が待ち受けていると感じられるからです。ただ、決断するにはまだ早過ぎる。村田は家族と時間を過ごし、試合を振り返り、頭をすっきりさせてから決めるべきです。周囲の人間も彼に時間を与えてあげるべきでしょう。

ーーブラントがあれだけの試合をしたことは予想外でしたか? 

PD : ブラントのタフネスとコンディションの良さは印象的でした。手打ちで体重が乗っていないパンチが多く、スキルやパワーの面で感心させられたとは言いません。ただ、あれほどパンチを打ち続けたことには驚かされました。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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