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村田諒太のスパーリング・パートナーが元世界王者ダニー・ジェイコブス、デビッド・レミューと戦力を比較

杉浦大介スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

パトリック・デイ

1992年8月9日生まれ 24歳

ニューヨーク州フリーポート出身

身長175cm プロ戦績は13勝(6KO)2敗1分

5月20日に開催されるWBA世界ミドル級王座決定戦、アッサン・エンダム(フランス)対村田諒太(帝拳)戦が決定後に日本に渡り、村田のチーフ・スパーリングパートナーを務めた

インタヴューはアメリカ東部時間5月19日の午前中に電話で行ったもの

村田はパワーと知性を兼備する

ーー村田とは何度スパーリングをしたんですか?

PD : 全部で10度です。彼は何人かスパーリングパートナーがいたのですが、その中でチーフ・パートナーを務めたのが僕でした。数は一番多かったと思います。一度につき4ラウンドずつだったので、合計40ラウンドですね。 

ーー村田に関して印象に残っていることは?

PD : まるで野獣のように激しく練習する選手だったことが印象的でした。長時間に渡ってハードなトレーニングをこなしていました。ただ動き回るだけでなく、田中繊大トレーナーの指導の下、ゲームプランを練り、同じ練習を何度も行っていたのを覚えています。とてもパワフルですが、ただパワーがあるだけでなく、知性的で頭の良い選手ですね。村田がミスを犯し、僕が1度はそこにつけこむことができても、次のスパー時には修正してきていました。

ーー事前の印象と違っていた部分は?

PD : 村田のスタイルを一見すると、ひたすら前に出てくる馬力型のファイターというイメージを持つかもしれません。ただ、実際にはその見かけ通りではない選手。知性を生かして戦うファイターです。

ーー過去にスパー経験があるデビッド・レミュー(カナダ)、ダニー・ジェイコブス(アメリカ)といった元世界王者たちと比較すると?

PD : ジェイコブスとレミューはただ強いだけでなく、個人的にも大好きなフェイバリットファイターたちです。ただ、村田は彼ら2人にもヒケはとらないと思いますよ。ボクサーはそれぞれ独自のスタイルを持っていて、村田のスタイルはその2人とは違うので、シンプルな比較が難しいのは事実です。村田は長いリーチを生かして距離をとり、パワーを最大限に利用してくる選手。離れると厄介な上、接近戦で相手にダメージを与える巧さもあるので、余計にデンジャラスです。

村田の強さは総合力の高さ

ーー村田、ジェイコブス、レミューという3人の中で最もパワーがあったのは?

PD : 3人とも凄くパワフルでしたが、一人選ぶならやはりレミューでしょう。凄い馬力でした。レミューのパワーは普通じゃなかったですよ。ほとんど超人(Super Human)みたいに感じたものでした。

ーースピードが最もあったのは? 

PD : 最も速いのはジェイコブスですね。レミューもクイックネスには優れていて、その素早さが彼の爆発力に繋がっていると思います。ただ、足の速さ、ハンドスピードではジェイコブスが上です。ジェイコブスはスピードを生かし、パンチの角度を変えて、相手にフラストレーションを感じさせることができるボクサーでした。

ーー個々の要素では村田はやはりその2人には劣っていましたか? 

PD : そう言ってしまえばそうですが、村田が良いと思ったのは、特筆されるパワーだけでなく、多くの要素を標準以上に備えていることでした。外から見ていると、ジェイコブスのスピード、レミューの馬力のような誰にも明白な武器は持っていないように思えるでしょう。しかし、これはリングで実際に顔を合わせてみて気づいたことですが、村田は実践的な強さを持っています。小さなことまでしっかりこなす選手で、最初は驚かされました。「Deceiving(見かけ通りではない)」という言葉がぴったりです。

ーー村田選手への評価が高いことは伝わってきますが、弱点を挙げるとすれば? 

PD : 適応能力のある選手なので、特定するのは難しいですが・・・・・・パンチの角度を変えて手数を出してくる選手には苦しむかもしれませんね。真正面から向かっていったら、破壊するだけの強さを持っています。ガードも硬い選手なので、ダメージを与えることは容易ではない。ただ、左右に動き、多彩なパンチを出せば、村田にフラストレーションを感じさせられる可能性はあると思います。

ーーエンダムとの対戦、スパー経験はないので難しいとは思いますが、最後にエンダム対村田戦の予想をお願いします。 

PD : 僕は村田がハッサン・エンダムをKOする初めての選手になると思っています。ラウンドは分かりませんが、恐らく後半でしょう。9ラウンドにストップするんじゃないでしょうか。何度かのダウンを与えるか、ダメージを蓄積させて、そこで試合が終わると予想します。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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