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みずほ、三菱UFJ「世界最悪」-温暖化促進する石炭火力への融資、環境NGOが批判、口座解約呼びかけも

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
みずほ銀行本店前での石炭火力への融資を止めるようアピール

 破局的な影響をもたらす地球温暖化を防止するための全世界的な枠組みである、パリ協定が採択されてから、今月で2年となる(発効してからは1年と1カ月)。温暖化防止への取り組みは経済・金融界にも広がり、「ダイベストメント」と呼ばれる、石油や石炭などの化石燃料関連の事業から投資を引き揚げる動きが活発化している。そうした世界的な潮流から乗り遅れているのが、日本のメガバンクだ。国内外の環境NGOがその問題を指摘、預金口座解約といったアクションも行われている。

〇石炭火力への融資で突出する日本のメガバンク

 今月11日、国際的な環境NGOの日本支部「350.org.Japan」のメンバー、支持者らが、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行の本店前で、「地球環境を守るためにダイベストして下さい!」とアピールした。フランスのエマニュエル・マクロン大統領主催の「気候変動サミット」においても、パリ協定の目標達成に向けた世界の金融業界の取り組みが重要なテーマとされた一方で、石炭火力発電所に融資する日本のメガバンクの姿勢が問題視されているのだという。

三菱東京UFJ銀行本店前でアピールする環境団体メンバー達
三菱東京UFJ銀行本店前でアピールする環境団体メンバー達

 温暖化防止の上で最優先なのは、温室効果ガスCO2の大排出源である火力発電所、とりわけ、CO2排出係数が高い石炭火力発電所を閉鎖し、太陽光や風力など、よりクリーンな再生可能エネルギーによる発電施設へと置き換えていくことだ。「バンクトラック」など環境NGO5団体が今月11日に発表した報告では、2014年以降、世界全体で、約68兆円以上が新規の石炭火力発電事業に融資・引受されているという。同報告をまとめた団体の一つ、「レインフォレスト・アクション・ネットワーク」の森林・金融シニアアドバイザーのハナ・ハイネケンさんは「中国と日本の銀行の石炭火力発電への融資・引受額の大きさが目立つ」と指摘する。

 

 とりわけ、融資額の大きさでは石炭関連で問題視される世界120社へ融資する民間銀行でも、みずほフィナンシャルグループ(約115億2500万ドル)と、三菱UFJフィナンシャルグループ(約101億1890万ドル)がそれぞれ1位と2位だという。つまり、石炭火力への融資を問題とする視点に限って言えば、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は「世界最悪の銀行」ということだ。筆者は本記事の配信にあたり、みずほ、三菱東京UFJの両行に問い合わせたが、石炭火力への融資の是非についての具体的な見解は得られなかった(両行からの回答は本記事末尾に要約、特に三菱東京UFJは再生可能エネルギー普及への貢献を強調)。

石炭火力に融資する銀行の1位にみずほ、2位に三菱UFJ。 バンクトラックの資料より
石炭火力に融資する銀行の1位にみずほ、2位に三菱UFJ。 バンクトラックの資料より

 350.org.Japanは、パリ協定合意から2年である今月12日までに先月から、日本のメガバンクから、より化石燃料の融資・引受の少ない銀行に乗り換えるキャンペーン「レッツ、ダイベスト!」を行ってきた。その結果、メガバンク3行を含む化石燃料や原子力に巨額な投融資を行っている民間銀行から、119人の個人、7団体が約4億3780万円(推定)を信用金庫やネット銀行などに移し替えたのだという。

レッツ、ダイベスト!キャンペーン動画

〇パリ協定に整合する投融資をー日本の銀行の責任を問う

 今月12日、350.org.Japanとその活動に賛同する個人、団体が環境省内で記者会見を開いた。350.org.Japanの古野真代表は、「新規の石炭火力発電建設への投融資は完全にパリ協定違反」「化石燃料に依存する経済から脱却するため、日本の銀行には責任ある投融資方針を策定し、持続可能な未来に投資していただきたい」と訴えた。

 脱原発に取り組む弁護士で映画『日本再生 光と風のギガワット作戦』の監督でもある河合弘之さんは、「原発の再稼働を求めているのも、電力会社に融資してきたメガバンク。環境問題に対する金融の責任は極めて大きい」「問題ある投融資に対するボイコットは非常に重要」と強調した。

三井住友銀行本店前でアピールする環境団体メンバー達
三井住友銀行本店前でアピールする環境団体メンバー達

 持続可能な社会のための企業活動や投資についてのコンサルタント事業を行う株式会社ニューラルの夫馬賢治・代表取締役CEOも「EU諸国の金融機関では、石炭等の化石燃料への投資は、レピュテーションリスク(イメージ悪化等の風評リスク)を超えて、経営マターと位置付けられています」と指摘した。バンク・オブ・アメリカやモルガン・スタンレー、シティバンクなど、世界の金融大手が石炭からのダイベストを表明しているのも、温暖化防止の世界的な取り組みの中で、石炭への投融資は多大な損失を招くリスクと受けて取っているからだ。「投資家達も、石炭からダイベストしろと、金融機関に強く働きかけています」(夫馬さん)。

〇日本自体が投資対象としてイメージ悪化

 夫馬さんは、日本の金融機関が石炭関連への投融資を行っている要因として「日本の産業政策になってしまっていることが大きい」と言う。安倍政権は、石炭火力発電の推進をその成長戦略に位置付け、海外にもインフラ輸出しようとしている。「高効率型だからCO2削減に貢献する」と政府は主張しているが、高効率型石炭火力発電であっても、天然ガス火力発電に比べ約2倍のCO2を排出する。石炭火力と決別できない日本について、古野さんは「日本の金融機関というより、日本という国自体のレピュテーションリスクとして、国際社会から受け取られるのではないか」と警鐘を鳴らす。確かに、先月にドイツで行われた温暖化防止のための国際会議「COP23」でも、日本への批判が殺到した(関連記事)。石炭火力推進は中長期的に観て、日本の経済成長の妨げにすらなりうるのだ。

 日本のメガバンクは、非人道兵器クラスター爆弾製造企業への与信が国際NGOから問題視され、その後、名指しされたメガバンクはいずれも、クラスター爆弾製造企業への与信を行わないと方針を変更した。石炭関連についても、賢明な判断をしていくよう、日本の預金者や投資家も、メガバンクに働きかけていくことが重要なのだろう。

(了)

以下、筆者の問い合わせに対する、メガバンクからの回答

みずほフィナンシャルグループの回答

  <みずほ>では「環境への取り組み方針」の中で、環境への取り組みが企業の存立と活動に必須の要件であり、<みずほ>にとってリスクと機会になり得ることを認識するとともに、気候変動問題への対応や低炭素社会の構築、資源循環型社会の形成、生物多様性の保全等に対し、予防的アプローチの視点も踏まえ、自主的・積極的に行動することを定めています(中略)<みずほ>は、気候変動をはじめとする環境課題のビジネスへの影響および関連するリスクと機会を認識し、国際的な関心・動向なども踏まえ、金融機関として適切に対応していきます。

三菱UFJフィナンシャルグループの回答

MUFGは、環境保護を社会的使命の一つと捉え、環境負荷を低減して持続可能な社会の実現に貢献する取り組みを進めており、『グループ環境理念・環境方針』 を策定して金融機能を通じて地球規模の課題に取り組んでいます。

 具体的には、赤道原則(環境・社会リスクと影響を特定/評価/管理するための枠組み)の採択に加え、再生可能エネルギー事業に関したプロジェクトファイナンスのアレンジ(グローバルで2016年1位のランキング)や融資を通じて、世界の再生可能エネルギーの普及を推進している他、資金使途を地球環境への貢献が期待されているプロジェクト(再エネ・省エネ事業等)に限定している『グリーンボンド』を発行し、グリーンプロジェクトへの融資に充てています。

地球温暖化への対応は国際社会全体で取り組むべき重要な課題ですので、グループの総合力を結集して、地球環境の保護に貢献していきます。

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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