温暖化で大寒波が頻発するのは何故なのかー北米、アジアでも猛威、ゴジラならぬ「スノージラ」
先週末、西日本を中心に40年ぶりの大寒波が各地を襲った。普段は比較的暖かい九州でも大雪が降り、交通機関に大きな影響が出ているようだ。こうした天候になると、必ず「温暖化はウソ、むしろ寒冷化が深刻」という言説が出てきて、メディアもそれを取り上げたりする。だが、温暖化が進行することによって、寒波が押し寄せてくる、ということも、実はよくあることなのだ。
○温暖化で寒波が頻発するのは、偏西風蛇行が原因か
温暖化が進行することによって、寒波が押し寄せてくるのは、なぜか。以前もYahoo!で書いたが、その原因と観られているのが、偏西風の蛇行だ。温暖化が進行すると、北極とそれより南側の地域との温度差が小さくなり、偏西風が弱まる。偏西風は北極の冷たい空気を遮断するカーテンのような役割を果たしているのだが、その勢いが弱くなると、グニャリと大きく蛇行することになる。その際、北極周辺の寒気が、より南側に進出してくるため、大寒波が起きる、と観られている。近年、北米各地が「スノーマゲドン(雪の最終戦争)」と呼ばれるほどの猛烈な寒波に襲われることが度々あるのも、こうした現象によるものだと考えられている。ここ数日は、米国東海岸でも大寒波に見舞われており、現地メディアはゴジラならぬ「スノージラ(Snowzilla)」と、その猛威を評している。また香港や台湾などでも寒波による被害が続出しているようだ。
○「温暖化」から「気候危機」へ
地球温暖化が進行する中で、気候のバランスが崩れ、熱波や寒波、大雨や干ばつなど激しい気象災害が頻発することは、早い段階からIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が警告している。実際、気象庁のデータを見ると、異常気象が世界レベルで毎年頻発している。そもそも、異常気象とは気象庁の定義では「その地域で30年間に1回以下の稀な気象現象」とされているのに、こう毎年、異常気象が起きることが常態化する、という時点でやはり異常なのである。昨年一年を観ても、
・インドでは、5月下旬に熱波に見舞われ、中部や南東部で合計2300人以上が死亡
・パキスタン南部では6月後半に熱波に見舞われ、1200人以上が死亡
・ミャンマーでは、6~8月に大雨による洪水で120人以上が死亡
・東アフリカ南部は1月に洪水に見舞われ、マラウイで270人以上、
モザンビークで160人以上が死亡
・南米北部では、5~12月に異常高温、5~9月に異常少雨となった
と世界規模で異常気象が起きている。寒波の例では、2012年1~2月、東アジア北部~アフリカ北西部という広範囲で異常低温となった。また同年12月にも東アジア北部から中央アジアにかけて異常低温となっている。
*データはいずれも気象庁
こうした事象を説明するのに、もはや「地球温暖化」という言葉だけでは、その脅威をイメージしづらい。専門家の間では以前から「気候変動」という言葉が使われていたが、それもいまいちピンと来ない。近年では「気候危機」という言葉も度々使われるようだ。
ともかく、地球温暖化による脅威は、もはや未来のものではなく、今そこにある危機になりつつある。これ以上事態を悪化させないよう、温室効果ガス排出の抑制などの対策を推し進めるべきだろう。
(了)