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「小児性愛を助長と漫画批判したCNNプロデューサーが児童性的虐待で逮捕」はミスリード。批判者とは別人

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
ミスリードの元となった5chの投稿。筆者キャプチャ

 12月16日から「日本の漫画を『小児性愛を助長する』と糾弾していたCNN名物プロデューサー、女児への性的暴行で逮捕」との情報がSNSで拡散していますが、ミスリードです。糾弾していた人物と、逮捕された人物は別人です。

5chからまとめサイトやインフルエンサーが拡散するなかでミスリードから完全なデマに

 拡散している情報は、児童への性犯罪で2021年12月に逮捕されたCNNのテレビ番組『NewDay』のプロデューサーであるJohn Griffinが、1年後の2022年12月に開かれた裁判で有罪を認めたことを報じたニュースについてのものです。

 この件を12月12日に報じたFox Newsの情報をもとに、匿名の人物が『5ちゃんねる』のニュース速報板に「【悲報】日本の二次元ポルノを繰り返し糾弾していたCNN名物プロデューサー、9歳女児への性的暴行で逮捕」というタイトルで12月16日にスレッドを投稿。

 それをまとめサイト『保守速報』が同じタイトルで同16日に記事化し、記事の内容に「『小児性愛を助長する』と漫画を批判したメディア『CNN』のプロデューサーが未成年者虐待で逮捕される」という別の海外サイトの記事をくっつけました。

 それぞれの記事を詳しく読めば「逮捕された人物が“日本の二次元ポルノを繰り返し糾弾していた人物”ではない」とわかるのですが、タイトルをそのまま読むと批判人物=逮捕された人物となるため、勘違いによる情報が拡散していくことになります。

 さらに翌17日には、デマ系まとめサイト『Share News Japan』が「日本の漫画を「小児性愛を助長する」と糾弾していたCNN名物プロデューサー、女児への性的暴行で逮捕」とのタイトルで記事化。

 これがTwitterで21,000件以上も拡散することになり(保守速報は同5,000件)、ミスリードによる誤解が広がっていきました。

ミスリードを拡散している悪質なデマ系まとめサイト『Share News Japan』。Twitterより。筆者キャプチャ
ミスリードを拡散している悪質なデマ系まとめサイト『Share News Japan』。Twitterより。筆者キャプチャ

 そして今度はこのデマの拡散力を見たインフルエンサーが便乗。

 例えばインフルエンサーの滝沢ガレソ氏は「『日本の漫画は小児性愛を助長する』と糾弾していたCNNプロデューサー、女児(9)をレイプし逮捕」という内容をTwitterに投稿し、こちらは10,000件以上拡散する事態となりました。

 このような流れでミスリードの情報がかなり広がったため、誤った情報を信じる人が多数出てしまったものと思われます。

批判記事を書いた人物と逮捕された人物は別人

 しかし、繰り返しになりますが、批判記事を書いた人物と逮捕された人物は別人です。

 問題の批判記事は2014年に書かれたこちらの記事ですが、執筆者は「Will Ripley、Hilary Whiteman、Edmund Henry」の3名です。

 一方、児童への性犯罪で逮捕された人物は「John Griffin」です。別人です。

 所属が同じだけであり、この情報に対する反応としてよく見かける「自分の性癖を隠すために日本の漫画を児童ポルノだと批判していた」というのは誤りだと言えます。

 まとめサイトの情報を鵜呑みにするのではなく、まずは自分で調べてみる癖をつけましょう。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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