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世界トップレベルの製パンコンクール「ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン」日本が優勝と準優勝!

清水美穂子ブレッドジャーナリスト
第3回 ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン優勝チーム(筆者撮影)

世界トップクラスのパン職人がその技を競う「ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン」が2023年3月1日から3日まで、モバックショウ(国際製パン製菓関連産業展)内の会場で開催され、8カ国11チームが参加した。

世界トップレベルのパン職人たち(筆者撮影)
世界トップレベルのパン職人たち(筆者撮影)

「モンディアル・デュ・パン」とは、2007年から2年に1度開催されている世界最高レベルの製パンコンクールの一つ。

他のコンクールと異なる特徴として、競技は二人の代表選手で行い、そのうちの一人は22歳以下の助手ということや、健康と栄養に留意したパンが評価されるということが挙げられる。

第4回ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン競技中の谷口さんと北峯さん(筆者撮影)
第4回ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン競技中の谷口さんと北峯さん(筆者撮影)

日本はこの「モンディアル・デュ・パン」第7回大会(2019年)、第8回大会(2021年)の二年連続で総合優勝を果たした。今回行われたのは、その2大会の上位チームが再度集まって競う「ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン」。

なぜもう一度?と思う人も多いかもしれないが、フランス以外の加盟国を会場として開催することで、この大会の存在を世界に広く伝える、いわば巡業の意味合いがある。

このコンクールの目的は、パン職人の地位向上、若手パン職人の意識向上の他に、健康に良いパンの知識や世界の原材料、機器の情報を広く世界に認知させ、普及させることにもある。また、一度順位が決定しても気を抜かず技術を研鑽し続けよう、ということでもあるかもしれない。

コロナ禍で中止になっていた第3回(2019)と第4回(2021)の同時開催になったこと、いずれの年も本戦では日本が優勝していたことで、幕張の会場は大きな盛り上がりを見せた。

結果は、以下の通り。表彰台に上った選手が、隣に立った他国の選手と極上の笑顔で握手する姿が印象的だった。

左から西川コーチ、久保田さん、大澤さん(筆者撮影)
左から西川コーチ、久保田さん、大澤さん(筆者撮影)

第3回 ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン

1位 日本(大澤秀一さん、久保田遥さん、西川功晃コーチ)

2位 ベルギー(Stijn VAN KERCKHOVENさん、Berre CEUPPENSさん、

Guido DEVILLÉコーチ)

3位 フランス(Yohan FERRANTさん、Matt VALETTEさん、

Matthieu ATZENHOFFER コーチ)

日本は芸術的作品部門賞も受賞。異彩を放っていた飾りパンは、「世界のスポーツ」というテーマに対し日本チームは「登竜門」という独自のテーマを設け、大澤さんが柔道を嗜んでいたことから、柔道着を着た人物を中心に鯉が昇って龍になる様子をパンで製作した。柔道着はクロワッサン生地。バゲットやヴィエノワズリーも圧倒的な美しさでその場の人たちを魅了していた。

登竜門という独自のテーマで製作(筆者撮影)
登竜門という独自のテーマで製作(筆者撮影)

第4回ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン

1位 フランス(Alexandre LAUMAINさん、Yann RAIMONDOさん 、Thomas SUBRINコーチ)

2位 日本(谷口佳典さん、北峯昌奈さん、山崎隆二コーチ)

3位 スペイン(Enric BADIA ELIASさん、Marta SAN JOSÉさん、Yohan FERRANTコーチ)

第4回準優勝の日本チーム。他国のチームとの温かい交流も宝物となる。(筆者撮影)
第4回準優勝の日本チーム。他国のチームとの温かい交流も宝物となる。(筆者撮影)

日本は栄養パン部門賞も受賞。サンドイッチにはウナギを用いた。飾りパンは「ベーカリー、その誕生から現在まで」という難しいテーマに挑んだ。谷口さんは20世紀のフランスパン業界の権威、レイモン・カルヴェル教授に始まる日本のパンの半世紀の光と陰を形にしたという。

競技は前日準備に1時間半、当日8時間半の制限時間が設けられ、大きく分けて次の4項目で審査される。

一つは、世界のパン部門。バゲット、レストラン用プティパン、雑穀や種子を用いて健康と栄養を考慮したパン、オーガニックの小麦粉を使用した「レスペクチュスパニス製法」の手ごねバゲット、そしてサンドイッチ(第3回はストリートフード、第4回はレストラン用のサンドイッチがお題となった)。

二つ目は、ヴィエノワズリー部門。クロワッサンやブリオッシュ各種。出身国にちなんだものも作る。

三つ目は、芸術的作品部門(第3回のテーマは「世界のスポーツ」、第4回は「ベーカリー、その誕生から現在まで」)。最大60cm×60cm×高さ80cm以上で、素材は接着するものもすべて食品でなければならない。

そして、四つ目は作業関連で、衛生状況や助手とのチームワークなどが審査される。さらに専門的な詳細な規定もある。それらを守り、二人で制限時間内に行うのだ。あらゆる面から世界トップレベルのパン職人の資質が求められる。

美しい芸術作品としても高く評価された第3回優勝チームの作品(筆者撮影)
美しい芸術作品としても高く評価された第3回優勝チームの作品(筆者撮影)

次回のモンディアル・デュ・パンの本選は今年2023年10月にフランス・ナントで開催される。日本からの代表選手としては、高橋佳介さん、松永ももこさん、松田武司コーチの出場が予定されている。

ブレッドジャーナリスト

東京出身。2001年より総合情報サイトAll Aboutでガイドを務めることにより、パンに特化した取材執筆活動を開始。注目のベーカリーとつくり手についてWeb、TV、ラジオ、新聞、雑誌等メディアで発信、紹介する一方で、消費者動向やトレンド情報を業界に提供、ベーカリーと消費者の相互理解を深める活動をしている。取材執筆、企画監修、講師、各種コンテスト審査員、コンサルティングなども行う。主な著書『BAKERS おいしいパンの向こう側』(実業之日本社)『日々のパン手帖 パンを愉しむsomething good』(メディアファクトリー)『おいしいパン屋さんのつくりかた』(ソフトバンククリエイティブ)他

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