Yahoo!ニュース

仮想「日本」韓国と対戦したポーランド。勝負強さを発揮し、3-2で勝利。試行しているオプションに手応え

柴村直弥プロサッカー選手
先制ゴールを決めたレヴァンドフスキ(写真:ロイター/アフロ)

 今年6月に行われるサッカーW杯のグループリーグで日本と対戦するポーランド。日本との戦いを想定し、日本時間28日4時45分、同じくアジア代表である韓国と対戦した。

 試合は、前半の内にポーランドがレヴァンドフスキ(バイエルン)、グロシツキ(ハル・シティ)のゴールで2点を先行し、84分まで2-0でポーランドがリード。85分、87分と立て続けに韓国にゴールを許し、一時は2-2と追いつかれるも、アディッショナルタイムにジエリンスキ(ナポリ)のゴールで3-2。勝負強さを見せつけた。

試行しているサイド攻撃のオプション

 前半32分、ポーランドの左サイドであり韓国の右サイドの深い位置まで攻め込んだ後、ペナルティエリアの角辺りにサポートに入ったグロシツキにパス。グロシツキは右足でゴールに向かっていくクロスボールをニアサイドに送ると、そこへ走り込んだレヴァンドフスキが韓国DFチャン・ヒョンス(FC東京)に競り勝ち、ヘディングシュート。ゴール右隅に突き刺さった。

 3月23日に行われたナイジェリア戦でも、クルザワ(ゴルニク・ザブジェ)の左サイドからのクロスにレヴァンドフスキが合わせ、シュートがゴールポストに当たるシーンがあったが、ゴール前で巧みにマークを外しながら、かつ競り合いでも強さを発揮するレヴァンドフスキに、サイドからクロスを入れてくる攻撃は、ポーランドの主要攻撃パターンの1つである。

 W杯欧州予選までは、4-4-2(あるいは4-2-3-1)のシステムで、両サイドのサイドバックとサイドハーフの関係でサイドを崩してクロスまで持っていく形もあったが、ナイジェリア戦、韓国戦も含め、W杯欧州予選以降すべての親善試合でアダム・ナバウカ監督は3-4-2-1のシステムを採用し、攻撃のバリエーションを増やしている。

 サイド攻撃は、3-4-2-1の4の両サイドの選手と、2のシャドーの選手、そして4の中央2人のボランチの1枚が関わってきて3人、あるいは1トップの選手も関わってきて崩す形を試行しており、ナイジェリア戦、韓国戦である程度の成果を出すことができたと言える。

韓国が前線からプレスをかけてきたところを逆手にとりゴール

 44分、1点を追いかける韓国が、前線の高い位置(ポーランド自陣ペナルティエリア前付近)からプレスをかけてきたところを、3バックの中央を務めるグリク(モナコ)は、ポーランドの右サイドのハーフライン辺りでタッチライン際に位置どっていたイェンドジェイチク(レギア・ワルシャワ)にロングフィード。イェンドジェイチクがヘディングする瞬間に、右のシャドー(3-4-2-1の2)に位置していたジエリンスキが中央右寄りのポジションから、イェンドジェイチクの前(相手ゴールに向かって)のタッチライン際のスペースへ走り出す。そこに韓国DFの1人が付いてきたところの空いたスペースへ、ダブルボランチの1人であるモンチニスキー(レギア・ワルシャワ)が走り込み、ジエリンスキがスルーしたボールを受け、韓国DFホン・ジョンホ(チョンブク)が少し右に寄ってきた瞬間に空いたホン・ジョンホの背後のスペースへスルーパス。これを走り込んだグロシツキが受け取り、GKとの1対1を制し、ゴールを決めた。

 

 3バックの中央のグリクからのビルドアップで、韓国が高い位置からプレスをかけてきたところを一つずつ剥がし、韓国の高いDFラインの背後のスペースを効果的に使い、ゴールまで繋げたプレーだった。

 

 このように、相手が高い位置からプレスをかけてきた際には、長短のパスを巧みに使いながらスペースを創り、最終ラインのビルドアップからゴールまで繋げていく攻撃もあり、相手の出方に応じて柔軟に対応していく力もある。この攻撃にレヴァンドフスキは直接的には関与していないが、それでも韓国のプレスをかいくぐり、ゴールまで持っていく力もあり、レヴァンドフスキだけに注意を払うわけにもいかない。

2つの異なるオプションを手に入れたポーランド

 W杯本番では、相手の戦い方や自分たちの選手たちの状況などにより、4-4-2(あるいは4-2-3-1)と3-4-2-1の2つの異なるオプションを併用して戦ってくるだろう。

 この2つのオプションで大きく異なる点は、前述のサイド攻撃の他、最終ラインが4バックか3バックか、という点と、1トップの選手のすぐ後ろに位置するシャドーの選手が1人か2人か、という点も挙げられる。W杯欧州予選では、レヴァンドフスキの周りをミリク(ナポリ)が衛星のように動く形も多かったが、3-4-2-1の場合、レヴァンドフスキの周りの選手が2人になる。調子の良いグロシツキやジエリンスキ、そしてミリクも復調してくることを考えると、攻撃のオプションは多彩だ。

 ポーランドは前述の4-4-2(あるいは4-2-3-1)でのサイド攻撃のオプションは保持しつつ、3-4-2-1での攻撃オプションも手にし、3か月後のW杯本番に向けて着々と準備を進めているといえるだろう。

 ナイジェリア戦後、ナバウカ監督は「我々は3バックのシステムを試している。結果も重要だがその他のことも重要だ。」とコメント。勝利した韓国戦後にも同様の「いまは結果よりも内容が大事。」とコメントし、仮想「日本」の韓国に勝利はしたが、日本との戦いに向けて油断や慢心はない。

 W杯欧州予選後の4試合の親善試合を有効に活用し、新たなオプションを手に入れつつあるポーランド。W杯本番に向けての準備は確実に前に進んでいる。

プロサッカー選手

1982年広島市生まれ。中央大学卒業。アルビレックス新潟シンガポールを経てアビスパ福岡でプレーした後、徳島ヴォルティスでは主将を務め、2011年ラトビアのFKヴェンツピルスへ移籍。同年のUEFAELでは2回戦、3回戦の全4試合にフル出場した。日本人初となるラトビアリーグ及びラトビアカップ優勝を成し遂げ、2冠を達成。翌年のUEFACL出場権を獲得した。リーグ最多優勝並びにアジアで唯一ACL全大会に出場していたウズベキスタンの名門パフタコールへ移籍し、ACLにも出場。FKブハラでも主力として2シーズンに渡り公式戦全試合に出場。ポーランドのストミールを経て当時J1のヴァンフォーレ甲府へ移籍した

柴村直弥の最近の記事