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日本取材をシャットアウト!サッカーW杯に懸けるポーランドの本気度

柴村直弥プロサッカー選手
ポーランドナショナルスタジアムでトレーニングをするポーランド代表チーム(写真:ロイター/アフロ)

「国外メディアからのインタビューを受けないように」

 アダム・ナバウカ監督からポーランド代表選手たちにそう通達があった。

 ポーランド代表選手たち、監督やコーチングスタッフなども含めて、現在徹底した取材規制が行われている。

 今年6月のロシアW杯で、ポーランドと日本が1次リーグで対戦することが決まったのが昨年12月1日。以降、日本のメディアからのポーランド代表選手たちへの取材依頼を断ったケースも、筆者の知る限りでも少なくとも3件はある。ナバウカ監督は少しでも対戦相手国へ情報が漏れることを危惧し、裏を返せば、それだけW杯に懸ける本気度が高いとも言え、また、決して日本を侮っているわけではない様子も伺える。これはポーランド代表にとっても異例の取材規制であり、今大会への意気込みは相当なものでもあるともいえる。

W杯優勝を狙うまでに成長したポーランド

 ポーランド代表は最新のFIFAランキング(2018年3月15日発表)ではスペインと同ポイントで6位。W杯優勝経験もあり、直近のEURO2016(欧州選手権)でも準優勝したフランスが9位、サッカーの母国であり、自国リーグは世界一の市場規模と観客動員数を誇るイングランドが16位という位置づけからも、ポーランド代表の現在の実力が世界屈指であることが伺える。(日本は55位)

 ポーランド代表のこれまでのW杯での最高成績は3位が2度だが、今大会それを上回る成績を期待している国民も少なくない。

 W杯決勝、そして優勝を狙えるまでに力をつけたポーランド代表の日本代表との最後の対戦は2002年に遡る。当時のFIFAランキングは日本22位に対してポーランドは34位。3月27日にポーランドのウッチで行われた試合では、中田英寿、高原直泰のゴールでトルシエJAPANが2-0でポーランドに勝利した。

 あれから16年。FIFAランキングを6位まで上げ、W杯欧州予選を圧巻の実力で堂々のグループ首位通過したポーランド。どのようにして、ここまで強くなったのか。

ポーランド代表が強くなった要因とは

 元ポーランド代表ストライカーのラドシエヴ・マチュシャク氏。現在は父の経営するUKS SMSウッチサッカーアカデミーでアドバイザーとしてクラブ経営や選手育成などについて自身の経験を元にアドバイスを行ったり、TVコメンテーターなどを務めている。同氏は近年のポーランド代表の躍進についてこう語る。

ポーランド代表でプレーしていたマチュシャク氏[マチュシャク氏提供]
ポーランド代表でプレーしていたマチュシャク氏[マチュシャク氏提供]

「以前は、我々は環境設備と教育を施す資金が十分にはありませんでした。しかし、国が発展するにつれて状況は変化してきました。サッカーは、ポーランドでは1つのスポーツではありません。人々は子供たちがアカデミーで遊ぶことを望んでいます。私が子供のころは練習はフィジカルトレーニングが多く、自分で外で自由にボールを蹴って遊び、それがスキルを身につけることにつながりました。いまは環境が整備され、子供たちがより自由に遊べるようになったことで、ポーランドサッカーは成長し、多くの選手が世界トップレベルのクラブやリーグで活躍するようになりました。」

 UKS SMSウッチサッカーアカデミーには、サッカーコート6面(天然芝及び人工芝)、ジムやプール、リハビリ設備に加え、学校(小中高)も併設されており、施設内の寮には300人余りが入寮している。広大な敷地内で、サッカーのみならず、様々なスポーツで子供たちが自由に「遊ぶ」ことが出来る環境を作ったUKS SMSウッチサッカーアカデミーは、これまでポーランド代表選手を13人輩出しており、ポーランド1部リーグクラブへ入団した選手は100人を超える。

UKS SMSウッチサッカーアカデミーHP

 国土の違いもあり容易ではないが、子供たちが自由に「遊べる」環境を作ることも、我々日本サッカーがより成長していく要因の一つになるかもしれない。

日本対ポーランド前哨戦

 そのSMSアカデミー施設で、本日(3月24日)から行われる大会に、日本から広島県高校選抜チームが招待されている。2015年に広島市で行われた平和祈念国際ユースサッカー大会にU-17ポーランド代表チームを招待したことから、広島とポーランドでの相互交流がスタートしたためだ。

参考記事:広島平和記念公園を訪れた、10代のポーランド、ウズベキスタンの代表選手たち。彼らは何を感じたのか?

 レギア・ワルシャワ U-17、ポゴン・シュチェチン U-17、UKS SMSウッチ U-17、ポーランドの3クラブと広島県高校選抜が戦う今大会、お互い代表チームではないが、次世代を担う選手たちによる6月のロシアW杯の一つの「前哨戦」とも言えるかもしれない。

ウッチ インターナショナルユースカップ2018[ウッチ インターナショナルユースカップ2018提供]
ウッチ インターナショナルユースカップ2018[ウッチ インターナショナルユースカップ2018提供]
プロサッカー選手

1982年広島市生まれ。中央大学卒業。アルビレックス新潟シンガポールを経てアビスパ福岡でプレーした後、徳島ヴォルティスでは主将を務め、2011年ラトビアのFKヴェンツピルスへ移籍。同年のUEFAELでは2回戦、3回戦の全4試合にフル出場した。日本人初となるラトビアリーグ及びラトビアカップ優勝を成し遂げ、2冠を達成。翌年のUEFACL出場権を獲得した。リーグ最多優勝並びにアジアで唯一ACL全大会に出場していたウズベキスタンの名門パフタコールへ移籍し、ACLにも出場。FKブハラでも主力として2シーズンに渡り公式戦全試合に出場。ポーランドのストミールを経て当時J1のヴァンフォーレ甲府へ移籍した

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