30日、元徴用工に対する日本企業の賠償を命じた、韓国大法院(最高裁)による18年10月の「徴用工裁判」判決から丸3年を迎えた。「韓国が動け」とする日本側の態度に問題はないか、争点をまとめた。

●求めるのは被告企業との「協議」

判決が確定してからの過去の3年は、被害者たち(原告)にとっても、被害者たちを支援した代理人や市民団体にとっても、より苦痛を感じる時間でした。

判決が宣告されてからの3年間、いかなる変化もありませんでした。大法院判決の後、判決の履行はもちろんのこと、最小限の意見表明や、歴史的な事実を認めることもしませんでした。

28日、ソウル市内で判決から丸3年に際し開かれた、原告側の弁護士や支援団体側による会見で、原告の代理人を務める林宰成(イム・ジェソン)弁護士はこう述べた。

同氏はまた、「これまで、被害者の権利が救済される、名誉が回復される変化を作り出すことはできなかった」とも振り返った。

後段の主語は徴用工裁判で「被告」となっていた日本企業である、日本製鉄(旧新日鉄住金)や三菱重工業である。

林弁護士はその上で、「過去3年の間、原告や代理人そして支援団体の誰も、被告である日本企業と協議を行えていない。私たちが求めるのは『協議』だ」と改めて強調した。

林弁護士はさらに、「その間、日本企業と日本政府から受け取ったのは無視と冒涜だった。それにもかかわらず、私たちは協議を望む」と繰り返した。

なお同氏は今月7日、『ハンギョレ』への寄稿で▲強制動員の被害者と日本企業の間での最低3度以上の協議、▲協議中には現金化の手続きおよび資産差し押さえなどの停止、▲協議手続きを日韓政府が保証し、オブザーバーで参加という「解決案」の第一歩を、岸田首相宛てに提案している。

28日、ソウル市内で会見した徴用工裁判を支援する市民団体。「日本政府、戦犯企業は強制動員を謝罪し賠償せよ!」と書かれている。主催者提供。
28日、ソウル市内で会見した徴用工裁判を支援する市民団体。「日本政府、戦犯企業は強制動員を謝罪し賠償せよ!」と書かれている。主催者提供。

●日本政府の介入とメディアの「無為」

日本政府は露骨に判決履行のプロセスに介入している。

林弁護士は冒頭の会見で、「韓国と日本の間で様々な裁判が行われており、その過程で当然、韓国の司法機関と日本の外務省が関連書類をやり取りしているが、中でも強制動員裁判(徴用工裁判)に関するものだけ、日本の外務省は公示送達を行っていない」と指摘した。

日本の外務省が書類を被告企業に届けていない、ということだ。林氏はさらに「その理由も明らかになっていない。なぜ書類が届かないのか、誰一人、その理由について答えていない」と事態の異常性について、重ねて言及した。

こんな日本政府の態度の裏には、危機感がある。日本政府はこれをいわゆる「65年体制」への挑戦と受け止めているからに他ならない。

韓国大法院判決を受け入れる場合、日本が植民地時代に行った不法行為への賠償が1965年の「日韓請求権協定」に含まれないと認めることになるため、日韓関係の枠組みが根底から覆るとする見方だ。「完全かつ最終的に解決済み」であるはずの植民地時代の問題を蒸し返され、追及される事態を避けたい思いがある。

原告側が被告企業に無視され続けている背景に、こうした日本政府の意向があるのは疑いようもない。そしてこんな日本政府の態度が「韓国はしつこい」という今の日本社会の認識の形成に、大きな影響を与えている。

メディアの無気力ぶりも際立つ。

日本の新聞記事を検索してみたが、そこには「徴用工問題では、安易な妥協はしないだろう」(朝日新聞、30日記事より)という日本政府関係者のコメントばかりが並び、被告企業への取材は一切なかった。

なぜ、被告企業と原告の接触を止めるのか、書類の受け渡しを外務省が行わない理由は何かなどについても、どのメディアも報じることはなかった。

冒頭に触れた28日の会見を、日本の主要メディアはチェックしていたにもかかわらず、だ。これでは単なる思考停止だろう。

このように日本社会のメインストリームでは「徴用工問題」はあたかも外交・軍事といった国際問題のように扱われてきた。個人の尊厳の問題として扱われたことは少なくとも過去3年のあいだ、一度も無かった。

[参考記事]

韓国・強制徴用判決から2年、臆病な日本社会を憂う

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20201030-00205518

●「謝罪」そして「冷たさ」の正体

多くの日本メディアが伝えているように、18年10月30日の大法院判決から丸3年が経過したことで、民事訴訟上の時効が訪れたとする見方がある。これは前出の林弁護士も認めるところだ。

別の角度から考えると「全体像が見えた」ということになり、日本政府はここから何かしらのアクションを取る可能性があると見る向きも支援団体側にはある。だが、こうした立場を日本の外務省は一貫して否定している。

一方で、被告企業の韓国内の財産差し押さえと現金化の手続きは少しずつ進んでいる。三菱重工業の財産が「今後6〜8か月後に現金化される見通し」と林弁護士も28日の会見で明かした。

解決策も議論されてはいる。特に最近になって、韓国政府が被告企業に代わって賠償を行うという「代位弁済案」が注目されている。これについて、林弁護士は受け入れ可能性を否定している。

それではどう解決するのか。

原告側は前出の「協議」と共にその先にある「被告企業の謝罪」という当然の「落とし所」をこれまで何度も明言してきた。筆者も過去、これを事あるごとに書き伝えてきた。

「被告企業の謝罪」について30日、林弁護士は筆者の取材に対し「行われなければならず、できる時間が限られたもの」と述べた。

さらに「日本国内の司法も被告企業の不法行為を認めている。歴史的な事実が存在するならば、これを認め謝罪するべき。1965年の請求権協定に対する日本側の解釈に照らし合わせても謝罪は充分に可能だ。生存者がいる時に行われるべき」と説明した。

なお日本の裁判所も01年、日本製鉄による徴用工裁判において「賃金の不足や、食料の不足、自由を奪われたまま危険な労働に従事させられたことは強制労働にあたり、違法である」と原告の主張を認めている。

しかし見てきたように日本政府は被告企業と原告の接触も認めず、岩のように動かない。なぜ動かないのか。この底知れぬ「冷たさ」の正体は今もくっきりと見えず、薄ら寒さは増すばかりだ。

ただ、その過程で分かったこともある。こんな「冷たさ」こそが、過去の「徴用工問題」を招いたということだ。日本政府の本質の一部は、大日本帝国時代から変わっていないのではないかという疑念を拭い去ることは容易ではない。

林弁護士は先の会見で、今の状況を「日本政府、日本企業にとっても不幸なことだ」と評したが、筆者はこれに「日本社会」という言葉を付け加えたい。

徴用工裁判に社会として向き合わないことは、日本政府が個人に向ける「冷たさ」を許容することに他ならないからだ。いずれ自らへの刃となって返ってくるだろう。