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トレンド一位!「アンプリチュード年内で終了」の衝撃に思う、残念すぎるコスメ界!

齋藤薫美容ジャーナリスト・エッセイスト
アンプリチュードのベストセラー、ロングラスティング クリームファンデーション

3月6日月曜日、午後。大谷翔平がホームランを打つまで、“トレンド1位”が何時間も続いたのが、「アンプリチュード」というワード。デパートコスメの人気ブランドが、年内で終了するというニュースへの“驚きと怒り”のTwitterが後を絶たなかったのだ。

かつて「RMK」を立ち上げたメイクアップアーティストRUMIKO氏が“かっこいい大人美”をテーマに創造したコスメブランド「アンプリチュード」は、透明感とはまた違う“透き通る感”を鍵とし、“色も質も洗練の極み”!と、評価が高かった。

「大好きなアンプリチュードがなくなるなんて、ムリ〜〜」

そういう声の中に意外に目立ったのは、じつは「キッカ、ラデュレ、アンプリチュードと、なぜ絶対推しのブランドばかりなくなるの? 」というコメント。

確かにこの数年で、撤退したブランドほど、じつは哲学をきちんと持った独創的なブランドばかりだったことに、疑問を持つ人は多いはず。「ラデュレ」は、フランスのパティスリーが作ったコスメで、契約上の問題があったための終了となったが、いずれも他に置き換えが利かない、どことも似ていない“唯一無二”のものづくりが好評を博していただけに、直後から激しい買い溜め合戦が始まっていた。

もちろん、売り上げ目標を達成できないなどの問題もありながら、消費者はもちろん、コスメ業界としても、とりわけ重要なコスメブランドばかりを失うことになるのは、本当に皮肉な話。

ちなみに、「アンプリチュード」はポーラ・オルビスホールディングス グループ傘下のACROが展開するブランドで、同じくACROのスキンケアブランドである「イトリン(ITRIM)」も、やはり2023年中に終了となる。ブランドの終了に伴う23年12月期連結業績への影響については、特別損失約8億円の発生を見込んでいるが、イトリンもまた市場にはない極めて斬新かつ本質的な“ラグジュアリーオーガニック”を標榜するブランドであるだけに、あまりに惜しい。

特に「アンプリチュード」は職人技とも言える手の込んだカラーパレットが人気で、限定品は基本的に常に完売、ファンデーションや下地にも定評があり、コロナ禍を生き抜いてきただけに、このブランド自体に問題があったのではないとの見方もあるほど。

一方で、カネボウ化粧品が展開し、2019年秋をもって終了となったCHICCA(キッカ)も、NYで活躍してきた吉川康雄氏がプロデュースしてきたが、ブランド終了後、吉川さんは独自の理論を絶やすことなく、たった1人で「アンミックス」というブランドを立ち上げ、まさに自分で作って自分で売ることをモットーに、口紅1本からスタートさせたブランドを今、異例の成功に導いている。

アンプリチュードを作り上げたRUMIKOさんも、NYで活躍し、メイクアップアーティストとしても、ものづくりにおいても天才と言われた人。「アンプリチュード」の魅力とともに、コスメ界の財産として見直すべきではないかと考えてしまう。

正直、今の業界の仕組みとして、良いものだけが残っていくわけではない。精神論よりも“カタログ的な役割“や”お役立ち情報”満載の雑誌の方が売れるように。

いや今の時代、こうした知的財産をなかったことにしてしまうのは、大きな意味でのサステナブルにも反している。このまま終了を待ち、なかったことにするのはあまりに忍びない内容、何か方法はないものかと考えてしまうほど、ブランド終了への女性たちの失望感は大きいのだ。

新しい社会の仕組みは、こうしたブランド淘汰においても、今までの「仕方ないよね」というムードでは終わらせない、優れたブランドの存続に向けては、何か新しい動きを見せてくれるのではないか?という気がしてならないのだが。

美容ジャーナリスト・エッセイスト

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストへ。女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『されど“男”は愛おしい』』(講談社)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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