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“名古屋の喫茶店”をお持ち帰り! レトロかわいいおみやげに秘められた思いとは?

大竹敏之名古屋ネタライター
「名古屋の喫茶店珈琲と豆のおつまみ」600円は2月1日発売

名古屋=喫茶店。でもコーヒーのお土産がない!

名古屋といえば喫茶店。モーニングサービスに小倉トースト、昭和のムード漂うレトロ喫茶など、今や喫茶店を目的に名古屋を訪れる人も少なくありません。

そんな“名古屋の喫茶店”の空気を持ち帰ることができるおみやげ商品が登場。その名も「名古屋の喫茶店珈琲と豆のおつまみ」です。

販売元は名古屋のコーヒー焙煎メーカー、「イトウコーヒー」(名古屋市東区)。1951(昭和26)年創業で、市内県内を中心におよそ600店の喫茶店にコーヒー豆を卸している名古屋の喫茶店文化の縁の下の力持ちです。そんな同社が今回の商品の開発に取り組んだのはなぜだったのでしょうか?

イトウコーヒー本店に並ぶ同商品。パッケージイラスト・いえやすくんを立体化したぬいぐるみがかわいい。同店は地下鉄高岳駅から徒歩5分。中部電力MIRAI TOWER(名古屋テレビ塔)からも徒歩圏内
イトウコーヒー本店に並ぶ同商品。パッケージイラスト・いえやすくんを立体化したぬいぐるみがかわいい。同店は地下鉄高岳駅から徒歩5分。中部電力MIRAI TOWER(名古屋テレビ塔)からも徒歩圏内

「“名古屋=喫茶店”というイメージは、今では全国に広く知られるものとなっています。その際にまず頭に浮かぶのはモーニングや小倉トースト。でも、肝心のコーヒーはあまり思い浮かべてもらえないし、おみやげ商品もない。喫茶店のコーヒーをちゃんとアピールできるようなものをつくれないか、と考えたんです」とはパッケージを手がけたグラフィックデザイナーのピースグラフィックス・平井秀和さん。

コーヒーはコクとキレ。おまけの豆菓子も欠かせない

そこで重要となったのが“名古屋の喫茶店”らしいコーヒーの味わいです。

名古屋の喫茶店のコーヒーは、しっかりコクがありつつ後味がすっきりしているのが特徴です。ドリップバッグでもそんな味わいを出せるよう、マンデリン産の豆でコクを出し、グアテマラをブレンドしてすっきり感も加えました」とイトウコーヒー・営業部の比江嶋靖さん。

もうひとつ欠かせないのがおつまみ。名古屋では多くの喫茶店で、ピーナッツなどの豆菓子がドリンクのおまけとして無料でついてきます。

「当社でも喫茶店で提供する小袋入りのおつまみを10種類ほど取り扱っています。その中でも名古屋の喫茶店のコーヒーとの相性がよく、人気が高いコーヒー粉入りの砂糖蜜でコーティングした豆菓子を、ドリップバッグと一緒に詰め合わせました」とは同社取締役の伊藤愛子さん。

コーヒーに豆菓子などのおつまみがついてくるのも名古屋独特の喫茶店文化。同商品にも豆菓子が2袋入っている
コーヒーに豆菓子などのおつまみがついてくるのも名古屋独特の喫茶店文化。同商品にも豆菓子が2袋入っている

パッケージにも工夫と遊び心が。箱のふたが軒先テントのように折り返され、また中央の小窓を開けると、コーヒー片手にくつろいでいる、かわいいたぬきのキャラクター・いえやすくんがのぞき見えます。箱がそっくり小さな喫茶店になっているのです。「名古屋の喫茶店といえば昭和のイメージ。商品名の書体や色合いなど、ちょっとレトロ風に表現しました」とデザイナーの平井さん。

パッケージの窓を開けると、いえやすくんがコーヒーを片手にくつろいでいる
パッケージの窓を開けると、いえやすくんがコーヒーを片手にくつろいでいる

実際に淹れてみると、コーヒーはドリップバッグながらストロングな味わい。確かに名古屋の昔ながらの喫茶店で飲むコーヒーの苦みやコクが思い起こされます。豆菓子はコーティングされた砂糖蜜の甘さとピーナッツの塩気が交互に現れ、さらにほんのりコーヒーのフレーバーが。これ自体がおいしい上に、コーヒーの次のひと口がより味わい深く感じられるという効果をもたらします。

名古屋の喫茶店の現在と未来をつなぐ商品に

若い女性からの視線も熱いレトロ喫茶をモチーフにし雑貨的なかわいらしさもあるこの商品ですが、背景には実は熱い思いも込められています。

「取引先の喫茶店さんと日々接していると、コロナ禍の影響や後継者不足で悩んでいるオーナーさんも多く、名古屋の喫茶店文化の行く末に不安を感じることも少なくありません。お土産となるこの商品で、他地域の人にも“名古屋=喫茶店”のイメージをより持ってもらい、次に名古屋に来た時にはまた喫茶店に足を運んでもらいたい。名古屋、愛知の喫茶店の未来につながる商品にできればと思っています!」と比江嶋さん。

イトウコーヒー営業部の比江嶋靖さん(左)、取締役の伊藤愛子さん(中)、デザイナーの平井秀和さん
イトウコーヒー営業部の比江嶋靖さん(左)、取締役の伊藤愛子さん(中)、デザイナーの平井秀和さん

きっかけはもちろん「カワイイ!」でOK。見た目のかわいらしさや飲んだ時のおいしさの記憶とともに、開発者の思いも頭の片隅に覚えていてもらえると、名古屋の喫茶店文化を豊かにする一杯になるのではないでしょうか。

「名古屋の喫茶店珈琲と豆のおつまみ」はイトウコーヒー本店、同社ネットショップの他、直営喫茶・遇暖(ぐうたん)でも順次販売。他に徳川美術館、名古屋城金シャチ横丁、清須城でも販売し、販路は今後も拡大予定
「名古屋の喫茶店珈琲と豆のおつまみ」はイトウコーヒー本店、同社ネットショップの他、直営喫茶・遇暖(ぐうたん)でも順次販売。他に徳川美術館、名古屋城金シャチ横丁、清須城でも販売し、販路は今後も拡大予定

(写真撮影/すべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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