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あの名鉄がおしゃれに! Z世代がSNSに上げたくなる?限定品ばかりのお土産店「名鉄商店」オープン

大竹敏之名古屋ネタライター
「名鉄商店」は12月1日オープン。写真は「FLOZEN NANA CHAN」

地域密着の鉄道・流通の老舗がつくったネオ土産物店

「“あの名鉄がおしゃれなお店を…”と皆さんびっくりされるんです(笑)」

というのは「名鉄商店」店長の棚橋省午さん。同店は2022年12月1日、名古屋駅の名鉄百貨店本店メンズ館1階にオープン。ややあか抜けないイメージが地域密着企業らしく、親しまれている名鉄グループ。その最新お土産専門店は、“らしくなさ”で新しさを大いに印象づけてくれます。

お土産品店というと商品がびっしり積み上げられ、派手なポップがいたるところに貼り出されている印象がありますが、それとは真逆のイメージ。歩道に面したガラス張りの店内ではシンプルな陳列台に展示品のように商品がひとつずつ並べられ、まるで美術品のギャラリーかジュエリーショップのようです。

店舗はご覧の通り洗練された雰囲気。約80坪で広めのカフェくらいのスペース。商品は一般の土産物店のように積み上げられるのではなく、一点ずつ陳列される
店舗はご覧の通り洗練された雰囲気。約80坪で広めのカフェくらいのスペース。商品は一般の土産物店のように積み上げられるのではなく、一点ずつ陳列される

店舗中央部の柱には大きなしめ縄が飾られ、それを中心に左側は白、右側は黒のツートンに。「白」は老舗を、「黒」は新興を表現し、それぞれのカテゴリーにあたる企業とのコラボ商品が左右に配置されています。

地元企業約70社とコラボ。すべて“ここでしか買えない”限定品

驚かされるのは店づくりだけではもちろんありません。最大の驚きは、取扱商品がすべてこの店のために開発されたオリジナルの限定品であることです。

「名鉄沿線の愛知、岐阜の事業者様およそ70社とコラボして開発した商品です。『うれしいを、アゲる』をコンセプトに、これまでにないお土産品をつくろうと取り組みました」と店長・棚橋さん。

ういろうの老舗と知多の酒蔵があんこと日本酒をマリアージュさせた「青柳ういろう大吟醸 白老」、えびせんべい・ゆかりの坂角総本舗ときしめんブームを巻き起こしている星が丘製麺所がタッグを組んだ「えびだしきしめん」、名鉄百貨店のシンボルであるナナちゃん人形をかたどったくずアイス「FROZEN NANA CHAN」、3つの味のバウムクーヘンが名鉄電車パノラマカーのパッケージに入った「PANORAMA BAUM」(パノラマバウム)、タクシーの行燈を和菓子で表現した「名鉄行燈」などなど…。ローカル色豊かなユニークかつ食べてみたくなる商品がズラリ揃っています

「青柳ういろう大吟醸 白老」。青柳総本家と愛知県常滑市の澤田酒造とのコラボういろう。日本酒のほのかな香りと米の粒々感のある生地と、こしあん生地の二層がひとつになっている。1620円
「青柳ういろう大吟醸 白老」。青柳総本家と愛知県常滑市の澤田酒造とのコラボういろう。日本酒のほのかな香りと米の粒々感のある生地と、こしあん生地の二層がひとつになっている。1620円

「海老だしきしめん」。坂角総本家のえびせんべいに使われる海老をダシに使用。もちもちの幅広きしめんのおいしさにグッと深みが加わる。えびせんべい・ゆかりをトッピングして味わいたい。2160円
「海老だしきしめん」。坂角総本家のえびせんべいに使われる海老をダシに使用。もちもちの幅広きしめんのおいしさにグッと深みが加わる。えびせんべい・ゆかりをトッピングして味わいたい。2160円

「PANORAMA BAUM」(パノラマバウム)。米粉のバウムクーヘン3種が名鉄・パノラマカーのパッケージに入っている。3輌(箱)を連結でき、車庫に納められるのもかわいい。2800円
「PANORAMA BAUM」(パノラマバウム)。米粉のバウムクーヘン3種が名鉄・パノラマカーのパッケージに入っている。3輌(箱)を連結でき、車庫に納められるのもかわいい。2800円

「名タク行燈」。名古屋の人気和菓子店・小ざくらや一清のユニークな創作和菓子。土台はフルーツ果汁入りの羊かんでフルーティーな味わいを楽しめる。1個400円
「名タク行燈」。名古屋の人気和菓子店・小ざくらや一清のユニークな創作和菓子。土台はフルーツ果汁入りの羊かんでフルーティーな味わいを楽しめる。1個400円

「花鳥風月」は通常はオンラインでしか買えないバターサンド専門店「積奏」(せきそう)の名鉄商店限定商品。愛知・岐阜の県花・県木・県鳥などをイメージした4種類の詰め合わせ。3400円
「花鳥風月」は通常はオンラインでしか買えないバターサンド専門店「積奏」(せきそう)の名鉄商店限定商品。愛知・岐阜の県花・県木・県鳥などをイメージした4種類の詰め合わせ。3400円

「岐阜タンメンあられ」。愛知・岐阜で展開する人気ラーメン店と、名古屋の老舗あられ店のコラボ商品。おかもちがモチーフのパッケージはギフトにぴったり。おかもち入りは2160円
「岐阜タンメンあられ」。愛知・岐阜で展開する人気ラーメン店と、名古屋の老舗あられ店のコラボ商品。おかもちがモチーフのパッケージはギフトにぴったり。おかもち入りは2160円

Z世代がSNSで発信したくなるパッケージやストーリー

従来のお土産店には必須のポップを排しているのにも狙いが。「商品をつくってくれた事業者様にも、今回の商品づくりにもそれぞれストーリーがある。接客するスタッフがそれを伝えていくために、あえてポップなどによる情報は控えめにしているんです」(棚橋さん)

従来の百貨店のお客様だけでなく、Z世代の若者もつかんでいきたい」と棚橋さん。1000~2000円台の商品が多く、若い世代にはやや高めの価格設定ですが、「写真を自由に撮ってもらって、商品の面白さ、楽しさをSNSで発信してもらえたら。“ちょっと高いな”と思った場合は、親御さんと一緒にまた来ていただければと思っています」(棚橋さん)とのこと。遊び心あふれるパッケージやショウルームのような陳列はSNSを意識したもの。少量生産という付加価値が反映された価格は、親子で百貨店で買い物をするという名古屋ならではの消費動向をふまえたもの、というわけです。

店内中央の柱はあえてコンクリートむき出しでしめ縄が。古い柱を名鉄グループを支えてきた「ご神柱」と位置付け、歴史への敬意と未来へ挑戦する姿勢を表している。このように店づくりにもストーリーが秘められている
店内中央の柱はあえてコンクリートむき出しでしめ縄が。古い柱を名鉄グループを支えてきた「ご神柱」と位置付け、歴史への敬意と未来へ挑戦する姿勢を表している。このように店づくりにもストーリーが秘められている

今後はモノづくりの地域性活かしたグッズにも期待

オープン時に店頭を飾る商品はすべて食品。これについては「まずは広く訴求できる“食”からラインナップしました。愛知、岐阜は焼き物をはじめモノづくりも盛んな地域ですから、今後はそれらの事業者さんともコラボしてオリジナル商品をつくっていきたい」と棚橋さん。この先、自分のために買いたくなるグッズ、身につけたくなるアイテムなども登場すると、ここで買い物をする楽しさもいっそうアップするのでは、と感じます。

今ドキのお土産は“こんなモノを買ったよ”とSNSで発信したくなることが重要な価値のひとつになっています。見た目の面白さや美しさ、そしてストーリーのある「名鉄商店」の商品は、まさにそんなニーズにマッチしたもの。名古屋の弱点と言われ続けてきた“発信力”を武器に、名古屋のお土産市場に新風を吹き込んでくれることを期待しましょう。

場所は名鉄百貨店本館メンズ館の正面。待ち合わせスポットで有名なナナちゃん人形のすぐ横
場所は名鉄百貨店本館メンズ館の正面。待ち合わせスポットで有名なナナちゃん人形のすぐ横

(写真撮影/すべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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