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名古屋めしがガチャガチャに! リアルすぎるご当地ガチャの可能性とは?

大竹敏之名古屋ネタライター
「名古屋の名店ミニチュアコレクション」は1個400円

思わず食べたくなる(!?)完成度の高さ

名古屋めしのガチャガチャが発売されて、各地で売り切れ続出と人気を博しています。正式な商品名は「名古屋の名店ミニチュアコレクション」。カプセルトイと呼ばれる自動販売機専用のミニチュア模型で、2022年2月末に売り出されました。

商品は5種類。「スパゲッティハウス・ヨコイ」のあんかけスパゲッティ、「あつた蓬莱軒」のひつまぶし、「喫茶マウンテン」の小倉トースト、「山本屋総本家」の味噌煮込みうどん、「味仙矢場店」の台湾ラーメンと、名古屋の有名店、人気店の名物メニューがズラリとラインナップされています。

驚くのはその完成度。色合いといい質感といい非常にリアルで、シズル感すら感じる出来栄えなのです。

「喫茶マウンテン」の小倉トースト(左)と小倉トーストガチャ(右)。パンのこんがり具合やあんこの粒感などを忠実に再現している。ちなみに店で注文するとこの分厚い小倉トーストが4ピースで600円
「喫茶マウンテン」の小倉トースト(左)と小倉トーストガチャ(右)。パンのこんがり具合やあんこの粒感などを忠実に再現している。ちなみに店で注文するとこの分厚い小倉トーストが4ピースで600円

ひとつひとつ手づくり! 器はプラスチックではなく陶製

「一点一点手づくりなんです!」 精巧さの最大の決め手を明かしてくれるのは企画したドリームカプセル・都築祐介さん。昨年末に売り出したういろうのガチャガチャで話題をふりまいた名古屋のカプセルトイベンダー(供給元)の代表者です。

(関連記事:「名古屋銘菓・ういろうのガチャガチャが異例のヒット! 鍵は驚きの完成度と地元愛」2022年1月18日)

「ほとんどのカプセルトイは型を使って量産するのですが、このシリーズはすべて手づくりで、パーツをひとつひとつ盛り付けているんです。また器は焼物を取り入れました。型で成形すると立体感が出ないし、器がプラスチックだと安っぽく見えてしまう。せっかく名だたるお店が協力してくれたのですから、お店の人にも納得してもらえるものをつくらないと申し訳ない、そう思ってクオリティにこだわりました」(都築さん)

その甲斐もあって売れ行きは好調。現在、全国約50カ所のドリームカプセル直営店で販売していて、週末には1日で自販機1台分(約30個)が完売することもあるそう。前作のういろうガチャは名古屋以外で先に人気に火がついたそうですが、今回の名古屋めしシリーズは地元でよく売れているといいます。

【どっちがどっち? 本物&ガチャを比較!】

上から「スパゲッティハウス・ヨコイ」のあんかけスパゲティ、「あつた蓬莱軒」のひつまぶし、「山本屋総本家」の味噌煮込みうどん、「味仙矢場店」の台湾ラーメン。ガチャガチャは立体感やツヤ、色調が見事
上から「スパゲッティハウス・ヨコイ」のあんかけスパゲティ、「あつた蓬莱軒」のひつまぶし、「山本屋総本家」の味噌煮込みうどん、「味仙矢場店」の台湾ラーメン。ガチャガチャは立体感やツヤ、色調が見事

既存客以外の層にもアピールできるプロモーションツールに

「話には聞いているけど実際に食べたことがない、というメニューもあるでしょうから、是非お店に足を運ぶきっかけにしてほしい」と都築さん。単なる料理の模型ではなく、実在するお店のメニューを再現しているため、ミニチュアをゲットしたら本物を食べに行きたくなることは必至。そんな「食べに行こう!」というアクションにつなげてもらうことが何よりの狙いだといいます。

モデルになった飲食店にとっても、プロモーション効果を期待できるといいます。

「うちのあんかけスパゲッティは40~60代の男性のお客様が中心。若い世代にも刺さるPR策を考えていたところだったので、お話をいただきふたつ返事でOKしました」とはスパゲッティハウス・ヨコイの横井慎也副社長。「ミニチュアメーカーの社長さんが食べに来てくれて、ソースのかけ方や具の盛り付け方に特徴があることを理解してつくってくれた。とてもかわいい出来栄えで満足しています」といい、近く市内3軒の直営店でも販売するといいます。

「あんこの粒々感とかちゃんと再現できている。うちは見た目のインパクトがあるメニューがたくさんあるので、喫茶マウンテンだけのコレクションをつくるとお客さんにも喜んでもらえそう」とは喫茶マウンテンの3代目・加納真史さん。

コロナ禍で急成長。ご当地ガチャで差別化を図る

ドリームカプセルマーケットスクエアささしま店は昨年10月オープン。カプセルトイ専門店はコロナ禍で急速に全国に拡大した。「常に新商品が投入され毎日行っても新しいモノに出会える店づくりが重要」と都築さん
ドリームカプセルマーケットスクエアささしま店は昨年10月オープン。カプセルトイ専門店はコロナ禍で急速に全国に拡大した。「常に新商品が投入され毎日行っても新しいモノに出会える店づくりが重要」と都築さん

名古屋めしシリーズのような“ご当地ガチャ”は全国各地で増えているそう。それにはカプセルトイ業界の事情と世相、さらには日本ならではの文化が反映されているといいます。

「カプセルトイはコロナ禍において急成長した産業です。人気アニメとのコラボ商品の魅力や対面接客のない安心感で需要が拡大。かつては主にゲームセンターや商業施設の通路に販売機を置いていたのですが、200台以上の販売機を集めた専門店型店舗が急増したのはここ数年のことです。国内メーカーは約40社あり、多い時は1カ月に400種ものシリーズが発売される。出店ラッシュがひと段落し、各社が生き残りを賭けて、ローカル色のある商品でオリジナリティを競うようになっているんです」と都築さん。

名古屋に本社を置くドリームカプセル代表の都築祐介さん。同社は全国に約50店舗を展開し、坪売上は業界トップ。本部が売れ筋をデータ管理することでより効率的かつニーズに合った販売ができるという
名古屋に本社を置くドリームカプセル代表の都築祐介さん。同社は全国に約50店舗を展開し、坪売上は業界トップ。本部が売れ筋をデータ管理することでより効率的かつニーズに合った販売ができるという

またカプセルトイは日本独自に進化した玩具、ビジネスだとも。

「ガチャガチャは1960年代にアメリカから輸入され、中身はガムボールでした。それが日本でミニチュアのおもちゃに進化した。小さく精巧な玩具を好む文化は昔からあって、全国各地の民芸品がルーツだと考えられます。日本独特の感性に訴えるものといえるし、デジタルコンテンツが主流になってもモノを所有したいという欲求がすたれることはない。今メインターゲットになっている30~40代に限らず、様々な層の心に響く商品を提案していけば、まだまだニーズをつかむ余地は十分あるはずです」(都築さん)

競争の激化でメーカーが個性と完成度を競い合う中で、より多くのユーザーを掘り起こすためにニッチでも深く刺さる商品が求められる。そんな市場動向の中で、ご当地ガチャは個性を打ち出し、ターゲットを広げるのにうってつけというわけです。

グルメに限らず名古屋、愛知のモノづくりをテーマにした商品もつくっていきたい」という都築さん。その言葉の通り、グルメ、キャラクター、伝統産業、建築などなど…今後も多様な名古屋愛に響くご当地ガチャがどんどん誕生することが期待されます。

既存のファンとは異なる層にもアピールでき、高い完成度でモデルの価値も高まる。ガチャガチャは今後、企業のプロモーションや地域活性化にとっても、有効なツールになっていくかもしれません。

(写真撮影/すべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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