深夜枠ながら最高視聴率は8%台。数々のドラマ賞も獲得

名古屋・メ~テレ(テレビ朝日系列)のドラマ『名古屋行き最終列車』の第10シーズンが2022年1月17日深夜にスタートします。

同作はメ~テレ開局50周年企画として2012年12月に4話が放映。以後、毎年4~10話の続編(スピンオフも合わせると合計64作)が制作・放映され、名古屋の冬の風物詩ともいえる名物シリーズとなっています。

ハートウォーミングなオムニバスドラマというスタイルで、タイトルの通り深夜の電車が毎回物語の舞台として登場します。鉄道職員役としてただ1人全シリーズに出演するのは名バイプレイヤーの六角精児。他、寺島進、松下由樹、吹越満ら名優がズラリ名を連ね、ヒロインは第1~7シリーズまで名古屋を拠点とするアイドルグループ・SKE48出身の松井玲奈が、2019年からSKE48の現役メンバーが務めています。

深夜枠ながら最高視聴率は8%台を記録し、占拠率は30%超。放送業界のタイトルも獲得(第1シリーズ「東京ドラマアウォード2013ローカル・ドラマ賞」、第2・3シリーズ「平成26・27年日本民間放送連盟賞テレビドラマ番組優秀賞」)し、一般からも玄人からも高い支持と評価を受けています。

“赤い電車”として親しまれる名鉄電車が地元愛や郷愁を喚起するアイコンに。「名古屋行き最終列車」は、名古屋から周辺都市へ帰る多くの人の流れとは逆方向への移動を意味し、登場人物の心境や立場を暗示している
“赤い電車”として親しまれる名鉄電車が地元愛や郷愁を喚起するアイコンに。「名古屋行き最終列車」は、名古屋から周辺都市へ帰る多くの人の流れとは逆方向への移動を意味し、登場人物の心境や立場を暗示している

地方局制作ドラマのシリーズ化は異例中の異例

長く続き、人気も評価も得ている同作ですが、実は存在そのものが異例。地方局によるドラマ制作は予算の壁もあって非常にハードルが高く、ましてや何年にもわたってシリーズ化している作品は全国を見渡してもほぼないのです。昨年末にNHKが名古屋での連続ドラマ制作から撤退するとの報道があったことからも、取り巻く環境の厳しさがうかがい知れます。

そんな中で『名古屋行き最終列車』が10年にもわたって支持を得続けているのはなぜなのか? 人気の秘密、長続きの理由などを監督(プロデューサー)の神道俊浩さんにお聞きしました。

スタッフ・俳優らメンバー全員のチームワークが長寿の秘けつ

――『名古屋行き最終列車』10周年の率直な感想から聞かせてください。

神道 「本当にうれしいです。会社が我慢に我慢を重ねてくれたおかげです(笑)。ドラマは時間もお金もかかるので地方局ではなかなかつくれないのですが、おかげ様で地域の皆さんに愛され、賞もいただいていることもあり、何とか続けさせてもらっています」

企画・演出を担当する監督(プロデューサー)の神道俊浩さん。「単に仲良くつくっているだけでなく、作品の完成度に出演者の方々が納得してくれているからこそ、皆さん出てくれているのだと思います」
企画・演出を担当する監督(プロデューサー)の神道俊浩さん。「単に仲良くつくっているだけでなく、作品の完成度に出演者の方々が納得してくれているからこそ、皆さん出てくれているのだと思います」

――長寿シリーズとなっている秘けつは?

神道 「外部の制作会社に頼らず、自前の最小限のスタッフでつくっていること。キー局のドラマは複数のカメラで撮影することもあってスタッフは総勢50人以上にもなるんですが、うちはカメラは1台だけで、技術・演出・制作・メイク・衣装合わせて20人くらいで回している。他の地方局の人が時々現場の見学に来るんですが、“こんな少人数でできるんですか?”と皆さん驚かれます(笑)。メンバーも第1シリーズからほとんどずっと一緒で、お互いに補い合いながらワイワイ楽しんでつくっている。いい意味で大学の映研サークルみたいな雰囲気があって、俳優さんたちもそれが気に入って応援する気持ちで参加してくれているんです」

――第1シリーズからずっと出続けているのが六角精児さん。

神道 「“10年続くなんて奇跡だよね”とおっしゃっています(笑)。番組に愛着を抱いて、チームの一員という感じで接してくれています。『カメラさん』とかではなくスタッフ全員を名前で呼んでくれ、誰かの姿が見えないと“〇〇がいないじゃないか”と気にかけてくれることも。経験豊富な方なので“他の現場だとこんな風にやっていたよ”とか、我々の技術面で不足しているところなどをさりげなく指摘してくれたり、教えられることも多いですね」

ローカル鉄道にも登場路線を拡大。地域密着の魅力もアップ

――今シリーズの見どころは?

神道 「ドラマは毎回、複数のエピソードによる1話完結なのですが、今回はそれぞれのエピソードの登場人物同士が実は知り合いだったりと、隠されていた相関関係が明らかになっていく。ずっと見てくれているファンにとってはより楽しめる仕掛けになっています。10周年記念として路線拡大しているのも見どころ。これまで舞台は名古屋鉄道沿線に限られていたのですが、今回は長良川鉄道、リニモ、樽見鉄道、あおなみ線が新規参加鉄道として加わります。自然豊かな風景などこれまでとは違った景色を楽しめます」

――作品の地域密着の魅力も広がりそうです。

神道 「ローカル線になるほど、その鉄道がないと地域の人たちの生活が成り立ちません。ロケ弁当を地元のお店に配達してもらったら、駅員さんとも知り合いでひとしきり話が盛り上がったり、運転士さんは乗客1人1人のことを把握していて、いつも寝坊している高校生が自転車で急いで走って来るのが見えたからちょっと待っててあげようとか、鉄道と地元の人が本当に密接な関係にある。ドラマのタネがいくらでもあって、今後の作品づくりにも活かしていきたいですね」

東海地方のローカル線にも登場路線を拡大。写真の車両は岐阜県を走る長良川鉄道。出演は六角精児と末永桜花(SKE48)
東海地方のローカル線にも登場路線を拡大。写真の車両は岐阜県を走る長良川鉄道。出演は六角精児と末永桜花(SKE48)

ファンとの密な関係性もローカルならでは

――鉄道、ローカル、アイドルとファンが熱くなる要素も多く盛り込まれています。

神道 「ファンミーティングも何度か開催していて、ファンの皆さんと1対1で意見交換ができている。特に鉄道ファンの人は熱くて、自分で撮(録)った音声や動画を参考のために持ってきてくれたり、いろんな情報を提供してくれるので助かっています。エキストラとして遠方から駆けつけてくれたり、ロケ場所としてご自宅を提供してくれたりと、視聴者の方たちも一緒になって作品をつくってくれている。そんな関係性を築けているのはローカルならではだと思います」

――視聴者とスタッフの距離が近いと様々なエピソードもありそうです。

神道 「当初からファンミーティングに参加して『将来は名鉄に入りたい!』と言っていた中学生が社会人になって『名鉄じゃないけど関連会社に就職しました』と報告してくれたりして、時の流れを感じます(笑)。あるロケではエキストラで参加してくれた母娘が、抱き合って喜ぶという演技がなぜかできなくて、聞くと娘さんが反抗期だという。私が説得して演出通りに抱き合ってもらったら、お母さんが涙を流して喜んでくれたこともありました。ひとつのきっかけで人生が前へ進む。そんなこのドラマのテーマと同じことが、現場で実際に起こった場面でした」

2022年4月にSKE48を卒業する大場美奈が第3話の主演。ボートレースとこなめ(愛知県常滑市)の広報部員となった彼女に、SKEメンバーの須田亜香里、末永桜花、坂本真凛、林美澪が目まぐるしくからむ
2022年4月にSKE48を卒業する大場美奈が第3話の主演。ボートレースとこなめ(愛知県常滑市)の広報部員となった彼女に、SKEメンバーの須田亜香里、末永桜花、坂本真凛、林美澪が目まぐるしくからむ

ネット配信で全国で視聴可能に。名古屋出身者の地元愛を喚起

――2018年の第6シリーズからはネット配信によって全国で視聴できるようになりました。

神道 「これはスタート当初には考えられなかった大きな変化です。やはりよく見てくれているのは、転勤や進学で名古屋から他の地方へ転居した人。『“名鉄の赤い電車”を見て自分の中の名古屋魂がよみがえりました』『久しぶりに地元へ帰ってみようと思いました』という声もあり、うれしく感じています。今はひかりTV、Amazonプライム、U-NEXT、Huluで過去のシリーズのほとんどを視聴できる。1話23分で気軽に見られるので最新シリーズを見る前に過去作を予習しておくのもおすすめです。また、今回は地上波放映の4話の他、人気声優・花澤香菜さん主演回をひかりTVで独占配信します。これが歴代屈指の出来栄えなんですよ! 脚本もいいし、何より花澤さんが『やり切った!』と本人も納得する素晴らしい演技をしてくれた。全国の皆さん、是非見てください!」

人気声優・花澤香菜の主演回はひかりTV独占配信。「1人2役を完璧に演じ切った本人も会心の演技。シリーズベスト3に入るくらい面白い!」と神道監督(プロデューサー)も太鼓判を押す“神回”は必見
人気声優・花澤香菜の主演回はひかりTV独占配信。「1人2役を完璧に演じ切った本人も会心の演技。シリーズベスト3に入るくらい面白い!」と神道監督(プロデューサー)も太鼓判を押す“神回”は必見

全国の地方局の希望の星。ドラマづくりが局のブランディングにも奏功

――『名古屋行き最終列車』はメ~テレ、そしてテレビ業界にとってどんな存在でしょうか?

神道 「他の地方局の人にとって励みや刺激になっているとお聞きすることもあり、それが自分たちにとっても励みになっています。実際、名古屋では他局でもここ数年ドラマ制作が活発になっていて、いい流れができてきていると感じます。ドラマにはいろんな人を巻き込める力があって、今ではどこへ行っても『名古屋行き最終列車』のファンが必ずいて、様々な面で助けてもらったり応援してもらえる。これは作品だけにとどまらず、メ~テレという局に対する親しみや信頼にもつながっていると感じています」

――10周年はひとつの節目ですが11年、12年…と続けていきたいという意欲も?

神道 「もちろんです。系列のテレビ朝日の『相棒』は20周年ですから、『名古屋行き最終列車』も目指せ20年!でがんばります!!

(ドラマの写真はすべてメ~テレ提供。神道監督(プロデューサー)の写真は筆者撮影)

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