「声優が豪華すぎる!」と話題沸騰!なぜ、名古屋の味噌カツ店がアニメ製作に乗り出したのか?

矢場とんオリジナルアニメ「大須のぶーちゃん」は本店横の特設モニターで公開中

「声優陣が豪華すぎる!」とSNSで話題沸騰

矢場とんの名物・わらじとんかつ。甘辛い味噌ダレがたっぷりかかりご飯が進む
矢場とんの名物・わらじとんかつ。甘辛い味噌ダレがたっぷりかかりご飯が進む

名古屋名物・みそかつの大人気店「矢場とん」。1947年創業の老舗にして、全国25店舗を展開する名古屋めしを代表する存在です。

その矢場とんが何とオリジナルアニメを製作。しかも、アニメ界の一流スタッフがズラリ名を連ねるという本気っぷり。10月初旬に情報が発表されるや、SNSで「声優陣が豪華すぎる!」などと注目を集め、「矢場とん アニメ」がTwitterのトレンドワード2位になるほど話題沸騰しました。

豪華スタッフが結集して製作された「大須のぶーちゃん」
豪華スタッフが結集して製作された「大須のぶーちゃん」

声優陣は、ぶーちゃん役の落合福嗣(『グラゼニ』凡田夏之介、元中日ドラゴンズ監督・落合博満氏の長男!)を筆頭に、戸松遥(『妖怪ウォッチ』ケータ)、諏訪彩花(『あっくんとカノジョ』片桐のん)、櫻井孝宏(『おそ松さん』おそまつ)、小山茉美(『Dr.スランプ あられちゃん』則巻アラレ)、岸尾だいすけ(『弱虫ペダル』手嶋純太)、水田わさび(『ドラえもん』ドラえもん)、沢城みゆき(『ルパン三世』峰不二子)、コスプレイヤーのえなこといった豪華な面々が参加。スタッフも監督の加藤道哉(Eテレ『おでんくん』)、キャラクターデザイン・浅野直也(『おそ松さん』)と実力派がそろい踏みとなっています。

作品の内容は、矢場とん矢場町本店のおひざ元である大須の町を舞台にくり広げられるコミカルな人情話。1話7分半で現在3話まで製作されていて、本店横に設置された特設モニターで10月6日に発表され、以後毎日公開されています(営業時間帯の1時間1サイクル)

■「大須のぶーちゃん」PV(YouTube)

矢場とん・社長からのリクエストはひとつだけ。知られざる製作の舞台裏

矢場とんはなぜアニメを手がけることになったのか? そしてなぜこんな豪華なメンバーが結集したのか? 同社の鈴木拓将社長にお聞きしました。

3代目の鈴木拓将社長。野球チーム設立やカンボジアでの学校建設など文化的な活動にも力を入れている。アニメの製作費については非公開だが「業界の相場は知らないが、加藤監督がかなり無理してくれていて破格の安値のはず」とのこと
3代目の鈴木拓将社長。野球チーム設立やカンボジアでの学校建設など文化的な活動にも力を入れている。アニメの製作費については非公開だが「業界の相場は知らないが、加藤監督がかなり無理してくれていて破格の安値のはず」とのこと

「監督の加藤道哉は私の中学時代の同級生なんです。一緒に飲んでいる時に“最近のアニメは規制が多くて思い通りにつくるのが難しい。純粋に、昔みたいな人情アニメをつくりたいんだよね”という話になった。彼は学生の頃からよくうちの店にも来ていたので、“大須が舞台に描けるといいよね”“大須に来たら観られる作品にしたら面白いんじゃないか”“じゃあ、うちのキャラクターのぶーちゃんを使ってつくろう!”と話が膨らんでいったんです」と鈴木社長。

これが一昨年の暮れのこと。そこから1年がかりでプロットを練り上げ、監督のコネクションにより声優陣をはじめ一流のスタッフが結集。今回の完成披露にいたりました。この間、鈴木社長からのリクエストはひとつだけだったといいます。

『みそかつ』はうちのメニュー名の表記にならって平仮名にしてほしい。私からの注文はそれだけでした(笑)」

また、作中では登場人物らによるこてこての名古屋弁が飛び交いますが、脚本は標準語で書かれていたそう。

「声優陣はほとんどが愛知県出身か愛知県育ちで、自然と名古屋弁になったようです。皆さん、“すごくおもしろかった!”と楽しんでくださったようです」

「大須に行かないと観られない」で付加価値を高める

連日行列ができる矢場とん矢場町本店。モニターはこのすぐ横にあり、足を止める人も多い
連日行列ができる矢場とん矢場町本店。モニターはこのすぐ横にあり、足を止める人も多い

アニメが観られる広場には高さ3mのぶーちゃん人形もあるので、これだけでちょっとした名所になりそう。さらに作中では、大須に実在する名所や店なども登場するので、聖地巡礼を促し、大須の観光推進にもつながりそうです(個人的には激渋焼き鳥店「初鳥」のオヤジさんが登場しているのにグッときました)。

現在、12話までプロットが出来上がっていて、順次製作に取りかかっていく計画とのこと。公開は現在は矢場とん矢場町本店横の特設モニターおよび店内のモニターだけですが、今後は大須招き猫のあるふれあい広場など、大須商店街の中でも公開していきたいといいます。ただし、テレビやWebなどでの公開の予定はなく、大須に行かなければ観られない作品であることは今後も変わりはないようです。

一飲食店のオリジナル作品としては破格のクオリティの高さ、商店街でのご当地限定公開というドメスティックな公開方法と、異例づくしのアニメ「大須のぶーちゃん」。この先、話題になるほどDVD化や配信を望む声が高まることは必至ですが、“大須へ行かないと観られない”という方針を守ることで、ブランディングや地域貢献の新しい形としての価値が高まるという気がします。

「大須のぶーちゃん」が今後どんな活躍を見せてくれるのか、大いに注目です。

(写真撮影/筆者、アニメ画像は矢場とん提供)